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2023論文紹介⑤ 核医学治療(甲状腺癌)

高田紀子 先生
愛媛大学医学部附属病院 助教

 

Effect of preparation method for radioactive iodine therapy on serum electrolytes

Noriko Takata, Masao Miyagawa, Tomohisa Okada, Naoto Kawaguchi, Yutaka Fujimoto, Yoshihiro Kouchi, Shintaro Tsuruoka, Kotaro Uwatsu, Teruhito Kido

Jpn J Radiol. 2023 May 15. doi: 10.1007/s11604-023-01444-9. Online ahead of print.

 

 

 

 

【論文の紹介】
甲状腺癌に対するヨード内用療法の前処置の方法の違いが血清電解質濃度に影響を与えるかどうか、また電解質濃度に影響を与える因子としてどのようなものがあるかについて検討した論文です。前処置としては、以前から甲状腺ホルモン休薬による方法が使用されてきましたが、この甲状腺ホルモン休薬法は近年登場したホルモン休薬不要のタイロゲン注射による方法と比較して、ナトリウム低下およびカリウム上昇が生じる傾向があることがわかりました。また、ヨード内用療法において年齢は低ナトリウム血症の、腎機能低下は高カリウム血症のリスクファクターとなる可能性が示唆されました。

【ポイント】
分化型甲状腺癌の患者さんのうち、術後再発リスクが高いと考えられる場合や遠隔転移がある場合ではヨード内用療法が行われています。ヨード内用療法は比較的副作用の少ない治療ではありますが、前処置として甲状腺ホルモン休薬をする場合には甲状腺機能低下症状が生じうることが問題点の1つです。甲状腺機能低下により電解質異常が生じる可能性があることは以前から知られていましたが、ヨード内用療法における一時的な甲状腺機能低下でも電解質に影響を及ぼす可能性があることが、休薬を必要としないタイロゲンによる前処置法との比較を行うことにより明らかになったというのが今回の研究において意義深いことであるものと考えています。
低ナトリウム血症も高カリウム血症もときに致命的な状態となる可能性があります。副作用の少ないとされるヨード内用療法でもこのような電解質異常の発生が生じる可能性があることが分かったのは私自身非常に学びとなった経験であり、今後の病棟管理にも生かせるものと思います。引き続き核医学内用療法の研究を通してよりよい医療を行うことにつなげていきたいと考えています。