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2025論文紹介③ 核医学治療(甲状腺癌)

高田紀子 先生
愛媛大学医学部附属病院 助教

 

Clinical factors affecting colonic iodine-131 distribution after radioactive iodine therapy for thyroid cancer.

Takata N, Kawaguchi N, Miyagawa M, Itou A, Yamada R, Takimoto A, Kido T.

Jpn J Radiol. 2025 Sep 30. doi: 10.1007/s11604-025-01882-7. Online ahead of print.

 

 

【論文紹介】

甲状腺癌に対する治療の1つである放射性ヨード内用療法では、治療で使用されるI-131の殆どが尿中に排泄されますが、一部は便中に排泄されます。したがって治療時に便秘がある場合は大腸の被ばくが増加する可能性があります。放射性ヨード内用療法を効果的に行う前処置として甲状腺ホルモン休薬を行った場合は甲状腺機能低下により便秘が生じやすくなるため、大腸の被ばくが増加する可能性が懸念されますが、腸管の蠕動運動により時間経過で移動するI-131や腸管の複雑な形状等様々な問題から、大腸の吸収線量を正確に評価することは困難でした。そこで本研究では大腸の線量を簡便に評価するため、放射性ヨード内用療法後に撮影するI-131シンチグラフィ像における大腸のI-131分布の「あり・なし」に着目し、放射性ヨード内用療法後の大腸I-131分布に影響を与える因子について評価を行いました。その結果、前処置の種類(甲状腺ホルモン休薬を行ったかどうか)の他、放射性ヨード内服後の排便回数、内服線量の多寡といった因子がI-131シンチグラフィ上(治療から3日後撮影)の大腸I-131分布の有無と有意に関連していました。また、大腸の被ばく線量を減少させるためには刺激性下剤を治療前の段階から使用するなどの戦略が有効である可能性が示唆されました。

 

【ひとこと】

放射性ヨード内用療法を行った際の大腸被ばくについてはあまり注目されていませんでしたが、これまで病棟管理を経験してきた中で本治療期間中に便秘が見られる頻度は少なくなく、便秘の適切な管理・対策を考えていく必要性があることは以前から感じていました。今回、治療後I-131シンチグラフィ上の大腸I-131分布の有無を見るというシンプルな方法で大腸の被ばくが多いか少ないかを大まかに評価できるのではないかとなんとなく思いついたため、本研究の着想にいたりました。予想していた通り特に甲状腺ホルモン休薬を行った患者様で大腸の被ばくが多い可能性が視覚的に評価できただけでなく、本研究を通してヨード内用療法時の効果的な便秘薬使用方法についても考えていくきっかけになりました。今後もこのような研究を通して、患者様により安心して核医学治療を受けていただけるような病棟管理を目指していきたいと考えています。

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