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2025論文紹介⑤ 乳房画像診断(MRI、AI)
松田 卓也 先生
愛媛大学 大学院医学系研究科 医療情報学 助教
Matsuda T, Matsuda M, Haque H, Fuchibe S, Matsumoto M, Shiraishi Y, Nobe Y, Kuwabara K, Toshimori W, Okada K, Kawaguchi N, Kurata M, Kamei Y, Kitazawa R, Kido T. Diagnostic accuracy of a machine learning model using radiomics features from breast synthetic MRI. BMC Med Imaging 2025, 25(1):399.

【論文紹介】
乳腺疾患のMRI検査ではBI-RADS-MRIという画像診断のフレームワークを用いてカテゴリー分けを行い、癌などの悪性病変の可能性を評価します。一般にカテゴリー4・5は悪性の可能性があるとして生検などの精密検査が行われます。BI-RADS-MRIによる評価は感度が高い(悪性病変を見逃しにくい)という特徴がありますが、カテゴリー4病変が悪性である確率は報告によって大きく幅があります(2%〜95%)。
本論文では、年齢・閉経の有無などの臨床的特徴とSynthetic MRIで取得した造影前後の定量値画像から得たRadiomics特徴量を用いて、複数の種類の機械学習モデルを学習させ、学習後モデルの性能を評価しました。BI-RADS-MRIカテゴリー4の病変を機械学習モデルによって再判定するアンサンブル手法が、BI-RADS-MRI単独・機械学習モデル単独よりも高いROC-AUC(診断制度の指標)であることが示されました。
【ひとこと】
愛媛大学とGEヘルスケアジャパンの産学協働講座である先端画像解析開発講座を中心として行った研究です。
一般のMRI画像は相対的な信号値ですが、特定の撮像法を用いることでT1値・T2値・PDなどの定量値画像を得ることも可能です。しかし、定量値の種類ごとに別々の撮像シーケンスが必要で、トータルの検査時間が長くなってしまいます。Synthetic MRIは1つのシーケンスで複数の定量値画像が得られる技術で、検査時間の延長を抑制しながら多くの情報を得ることができます。本研究は乳腺MRIで造影前後にSynthetic MRIを撮像して得たT1値・T2値の定量値画像から、Radiomicsという技術で病変の画像特徴量を抽出して機械学習モデルを学習させています。
患者さんへ針を刺す必要がある生検等よりも前に画像検査によって正確な診断が可能となれば、患者さんにとっての負担が減ることが期待されます。今後も先端画像解析開発講座と協働し、人工知能などの新しい技術も駆使して、より正確な診断を目指す研究を行っていければと考えています。