愛媛大学大学院医学系研究科 器官・形態領域 泌尿器科学 愛媛大学大学院医学系研究科
器官・形態領域 泌尿器科学 Department of Urology Ehime University Graduate School of Medicine.

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泌尿器の病気MEDICAL INFORMATION

副腎腫瘍

副腎腫瘍とは

副腎は左右の腎の上方に位置する3-4cm程度の臓器で、後腹膜腔という場所にあります。小さな臓器ですが、生命維持に欠かせないホルモンであるコルチゾールをはじめ、血圧等を維持するホルモンを分泌するとても重要な臓器です。
副腎皮質からは主にアルドステロン、コルチゾールが、副腎髄質からはカテコラミン(アドレナリン、ノルアドレナリンなど)が分泌されており、これらのホルモン濃度は通常一定に保たれています。
副腎にできる腫瘍は良性腫瘍のことが多いですが、まれに悪性腫瘍(がん)が発生する場合があります。良性腫瘍でも、ホルモンを過剰産生する場合には手術が必要になります。

副腎腫瘍の種類

原発性アルドステロン症(良性腫瘍)

アルドステロンの分泌過剰による高血圧と低K血症で見つかることが多いです。高血圧患者の約5-10%に発見されるといわれ、術後は高血圧の改善、降圧薬の減量・中止が可能となることが多いです。

クッシング症候群(良性腫瘍)

コルチゾールの慢性的分泌過剰により高血圧、糖尿病、免疫力低下、多毛、中心性肥満、骨粗鬆症などの多彩な臨床症状が見られます。術後のホルモン補充が必要です。

褐色細胞腫(良性腫瘍)

カテコールアミン(アドレナリン、ノルアドレナリンなど)の慢性的分泌過剰により高血圧、頻脈、頭痛、高血糖などの多彩な臨床症状が見られます。家族性、両側性、副腎外性、悪性がそれぞれ約10%存在します。

副腎癌(悪性腫瘍)

特徴的な症状はありませんが、進行にともない腫瘤触知、発熱、食欲不振、体重減少などの多彩な全身症状を伴うことがあります。がんからホルモンが分泌されている場合は、そのホルモンに応じた症状が出現します。

副腎腫瘍の検査

血液検査

血中ホルモン濃度が異常高値を示すことがあり、血液検査でアルドステロン、コルチゾール、DHEA-S(デヒドロエピアンドロステロン硫酸塩)、テストステロン、アドレナリン、ノルアドレナリンなどを調べます。原発性アルドステロン症では血清カリウムが低値となります。DHEA-Sは副腎がんの腫瘍マーカーとして有効なことがあります。
原発性アルドステロン症が疑われる場合、副腎静脈サンプリングというカテーテル検査をおこなうことがあります。左右副腎から直接血液を採取し、どちらの副腎からアルドステロンが過剰分泌されているかを調べます。

尿検査

代謝されたホルモンが尿に異常に高値となることがあります。

CT検査

内部が不均一に造影されたり、石灰化を伴う腫瘍を認めた場合、副腎腫瘍を疑います。大きさが4㎝以上の場合は副腎がんの可能性が高くなります。

MRI検査

副腎がんとの鑑別などに有効なことがあります。

核医学検査

副腎がんが異常に多くホルモンを造っている場合、各種シンチグラフィーが診断の助けとなることがあります。123I-MIBGシンチグラフィーはカテコラミン産生能を確認することができます。

副腎腫瘍の治療

手術療法

良性の副腎腫瘍は手術が行われます。愛媛大学泌尿器科では低侵襲な腹腔鏡手術を第一選択として行いますが、大きい腫瘍は開腹手術で摘出することもあります。褐色細胞腫は術中の血圧管理が難しいことがあります。
副腎がんも小さなものであれば腹腔鏡で摘出します。大きな腫瘍は開腹手術で摘出します。

化学療法

副腎がんで手術が不可能と判断された場合、化学療法を行います。標準的な化学療法は未だ確立されていませんが、有効性が認められている治療として、ミトタンによる薬物療法や、EDP(エトポシド+ドキソルビシン+シスプラチン)療法を行います。