愛媛大学医学部 器官・形態領域  泌尿器科学 Department of Urology Ehime University Graduate School of Medicine.

慢性腎不全

慢性腎不全とは

慢性腎不全は、慢性的に腎機能の障害が進行していく病気です。腎臓の働きは、体内における老廃物や余剰な水分を尿として排出する役割や、体液(血液)の NaやKなどの電解質のバランスをとったり、エリスロポエチンという赤血球の産生を促すホルモンを産生したりします。したがって末期の慢性腎不全になると、体内に老廃物が蓄積して尿毒症になったり、余分な水分が体内にたまり身体がむくむ浮腫になったり、肺に水がたまって肺水腫になったりします。また、腎性貧血といわれる貧血にもなります。そのため、腎不全を未治療のまま放置すると生命維持が困難になります。

慢性腎不全の原因

慢性腎不全の原因は、糖尿病による糖尿病性腎症が最も多く、次いで慢性腎炎となります。また、高血圧を未治療のまま放置したり、治療困難な高血圧によっても腎不全となることもあります。その他にも遺伝的疾患や痛風などにより腎不全となることがあります。したがって、その基になる疾患の治療をしっかりと行い、慢性腎不全への進行を少しでも遅らせる必要があります。

慢性腎不全の治療

末期の慢性腎不全となり高度に腎機能が低下すると、体液のバランスをとることができなくなり、薬物療法だけでは対処できなくなります。そこで、その治療法として、(1)血液透析、(2)腹膜透析、(3)腎移植の3つの方法があります。

(1)血液透析
体内より血液を脱血し、血液透析装置を通して血液を浄化する方法で、一般的には週3回、1回4時間程度の治療が必要です。しかし、完全には尿毒症物質を除去できず治療間隔も開いているため、食事制限や水分摂取制限が必要です。また、長期透析により末梢神経障害や腎性骨異栄養症、透析アミロイドーシスなどの合併症が起こりQOLを低下させることがあります。
(2)腹膜透析
腹膜透析は、腹腔内に透析液の出し入れができるような細いチューブを留置して、1日に4~6回程度腹膜透析液の交換を行うことにより、体内より尿毒素を排出する治療法で、この時に余分な水分を排出することができます。毎日の治療であるため、食事制限や水分摂取制限は比較的ゆるくてすむことが利点です。また、月1回程度の病院受診での自宅療養が可能です。しかし、腹膜炎の合併や長期腹膜透析による腹膜機能低下により血液透析への変更が必要になることもあります。
(3)腎移植
腎移植は、生体腎移植と献腎移植の二つに分類されます。生体腎移植は、肉親や配偶者などの健康な方の一方の腎臓を摘出し移植する方法です。献腎移植は、亡くなった方より腎臓を摘出し移植する方法です。生体腎移植は、腎臓を摘出後直ちに移植を行うため、腎機能の低下が少なく成績も献腎移植に比較すると良好です。また、献腎移植は、脳死状態の方(脳死ドナー)より心臓が動いている状態で腎臓を摘出する方法と、脳死の診断ができない時などに心停止後(心臓死ドナー)に腎臓を摘出する方法の二つがあります。腎臓の状態がより良い状態で摘出する脳死ドナーからの移植の方が、成績が良いとされています。しかし、献腎移植では、腎摘出までの腎臓の状態や摘出から移植までの保存状態により腎機能が低下し、移植しても腎臓がすぐに働かないことや全く機能しないこともあります。
2015年の全国統計では、生体腎移植と献腎移植の生着率はそれぞれ1年で97.8%と93.9%、5年で92.8%と83.9%となっています。今は生体腎移植であれば10年の生着率が95%に達する見込みです。2001年の全国統計では、生体腎移植と献腎移植の生着率はそれぞれ1年で94%と83%、5年で78%と65%であり、移植成績の著名な改善を認めています。

chronic-renal-failure01

移植により他人の臓器が体内に入ってくるわけですが、体内ではこれを排除しようとする反応が起こります。これが拒絶反応です。この作用を抑えるために免疫抑制剤を内服する必要があります。しかし、免疫抑制剤にはさまざまな副作用があり、移植後の治療は急性拒絶反応の予防と治療、免疫抑制剤の副作用である感染症などの対策が治療の本質となってきます。免疫抑制剤の副作用としては、易感染性、糖尿病、高血圧、高脂血症、肝障害、眼合併症、悪性腫瘍などが挙げられますが、近年新たな免疫抑制剤が次々と開発され、その効果と副作用が改善され、移植成績も向上しつつあります。近年では生体腎移植における一年生着率はほぼ100%にまで向上し、旅行や出産も可能になりQOLの向上につながっており、社会復帰も容易になっています。

費用についてですが、移植費用は、移植手術後 1 年間の総医療費(手術、入院、退院後の投薬・検査など)で約 600 万円程度です。しかし、多くの場合、医療保険の他、自己負担分は特定疾病療養制度、自立支援医療(18 歳以上:更生医療・18 歳未満:育成医療)、その他の助成制度の対象となるため、医療費に関してはほとんど自己負担がありません。

生体腎移植の場合、血液型が一致しなくとも腎移植は可能です。移植を考えている方がいましたらお気軽に当科へ相談しに来てください。

愛媛大学泌尿器科における慢性腎不全への取り組み

保存期腎不全における慢性腎不全の診断と治療に関しては、当院腎臓内科にお願いしています。病状が進行し末期腎不全となった時には、血液浄化療法(血液透析、腹膜透析)への導入の準備として内シャントの作成や腹膜透析用カテーテルの留置を行い、透析の導入を行っています。透析導入後の維持透析においては、残念ながら当院においての透析ベッド数に限りがあり、他の透析施設に依頼しています。現有透析ベッド数は5床と少ないため、慢性腎不全により新規の血液透析導入が必要な方や、手術のためや大学病院における高度医療が必要であるために入院されている方の維持透析を中心に行っています。したがって、外来での血液透析は行っていません。腎移植は他の透析療法と比較しても、生存率の改善をみとめています。体力的に問題がない方で、ドナーとなる方がいらっしゃる場合には、まず第一に生体腎移植をお勧めします。 当院においては、生体腎移植は1982年より開始しています。近年の当院の統計では2006年から2016年(8月)までに生体腎移植 54例、献腎移植は4例施行しています。近年における生体腎移植の5年生着率は、95%程度にまで向上し、非常に良好な成績が得られています。また、免疫学的、あるいは解剖学的に困難な症例も積極的に移植できるように取り組んでいます。
また、先行的腎移植を積極的に取り組んでいます。先行的腎移植とは透析を始める前に行う腎移植をいいます。透析導入前に移植を行った場合の方が、治療成績が優れているとされています。移植時期、適応などは気軽に相談してください。

腎移植における入院期間は、急性拒絶反応やウィルス感染症を早期に発見治療するために、移植後約1ヶ月としています。ドナー(生体腎提供者)の方は、外来にて術前検査を行い、手術の1日前に入院し、術後1週間以内で退院となります。また、全例腹腔鏡手術で施行しており、手術による負担の軽減を図るようにしています。