愛媛大学大学院医学系研究科 整形外科学

研修内容

愛媛大学整形外科専門研修プログラムの特徴

十分な症例数、豊富な指導医(指導体制)、各地域・病院での特徴のある研修・・・そんなことは、おそらく日本中の全ての研修プログラムで同じことを言っています。この状態が整っていなければプログラムは専門医認定機構に認められません。当然我々のプログラムでもそれは十分に整っています。
ここであえて「特徴」として掲げるのは、他のプログラムにはない当プログラム独自の機能の紹介です。

1)教育施設としての特徴

愛媛大学手術手技センターでのCadaverトレーニングシステム

愛媛大学では医師の手術手技向上のためにご遺体を用いた手術手技のトレーニングセミナーを開催しています。脊椎、膝関節、股関節、外傷などのトレーニングセミナーを大学内のみならず、連携病院の医師も参加して愛媛大学内で行っています。セミナー開催時に他の病院(例えば県立中央病院など)で研修中であっても、このトレーニングセミナーには参加できます。
実際の手術では、かなり難易度の高い手技は、見てもらうことしかできませんが、Cadaverセミナーではそのような高難易度の手技も若手の先生に体験してもらうことができ、愛媛大学は外科医を目指す若手医師にとっては、非常に有利な研修施設であるといえます。

四国の脊椎外科医が毎年愛媛大学に集まりCadaverを用いた手術手技セミナーを行っています。
四国の脊椎外科医が毎年愛媛大学に集まりCadaverを用いた手術手技セミナーを行っています。
関節鏡シミュレーターを用いた関節鏡手技トレーニング

膝関節鏡手術は整形外科診療の必須の領域であると考えており、愛媛大学整形外科では全国に先駆けて、欧米を中心に導入が進められている膝関節鏡シミュレーターを使用した関節鏡手術手技トレーニングを行っています。シミュレーターの利点として、いつでも、何度でも手術に近い環境でのトレーニングが可能で、我々は医学生の教育、臨床研修医の手術トレーニングに既に導入しており、実際の手術を経験する前でもトレーニング効果を認め、特に関節鏡手術初心者の手術技術向上に対する有効性を報告してきました。

当院で使用可能なシミュレーターは2種類あり、実際の手術に近い環境でトレーニングが可能なバーチャルリアリティー型膝関節鏡シミュレーター(図1)と、taskに応じた個別の手術スキルトレーニングが可能なBox型膝関節鏡トレーニングシミュレーター(図2)があります。これらのシミュレーターを組み合わせることで安全で、効率よく膝関節鏡手術の基本手技を習得することがでると考えています。

  • (図1)Arthrosim2 virtual reality simulator
    (図1)Arthrosim2 virtual reality simulator
  • (図2)ABOTS box training simulator
    (図2)ABOTS box training simulator
  • (図1-1)実際のモニター画面
    (図1-1)実際のモニター画面
愛媛大学医学部附属病院における人工関節センターでの研修

愛媛大学医学部附属病院人工関節センターは、臨床部門、研究開発部門、手術教育部門、オステオサイエンス部門の4部門から構成されています。 高精度の人工関節手術を患者さんに提供し、高齢者の長期にわたるQOL(Quality of life)維持と健康寿命の延伸、医工連携研究を通じた高次元の機能と長期耐用性を有する次世代人工関節の研究開発、手術手技技研修センターとの連携のもとに未来の人工関節医療を担う医師や看護師の手術教育・手術トレーニングの拠点を形成し、さらに変形性関節症の病態解明や早期診断、合併症予防のための骨・軟骨関連基礎研究を目的としたわが国初の統合型人工関節センターです。

<設立の背景>

超高齢化社会を迎えつつある日本において健康寿命の維持は重要な命題です。しかし、重力下で二足歩行を獲得した我々人間は変形性関節症の発症を余儀なくされ、健康寿命が大きく損なわれています。変形性関節症は要支援、要介護の原因疾患として最上位を占め、近年の報告では生命予後にも影響していることが指摘されています。国民生活の質を左右する重大な疾患であり、進行症例の治療方法として人工関節置換術が有効です。人工関節の開発は整形外科の歴史のなかで最も輝かしい業績の1つと言われています。国内での年間手術件数は人工膝関節置換術:約8万7千件、人工股関節置換術:約5万7千件であり、年々増加の一途をたどっています。

人工関節手術は高度にトレーニングされた医療技術が伴って初めて高い患者満足度が得られます。当センターの手術教育部門では愛媛大学手術手技研修センターと連携し、全国的にも稀なcadaverトレーニングが可能であり、在籍するエキスパートドクターがマンツーマンの手術指導を行い、今後を担う若手医師の手術手技教育を実施しております。人工関節は有効な治療方法ですが、人工関節開発は欧米主導で行われ、日本人の生活様式、日本人の解剖学的形態を考慮した新たな人工関節の開発が求められています。研究開発部門では医工連携、産学連携により日本の物づくりの技術を結集させた開発を行っています。また基礎研究者の高度な研究が患者様に届けられてこそ基礎研究も目的を達せられます。オステオサイエンス部門では基礎研究と臨床研究の間の垣根を越えた研究を実践し相乗効果を生み出しています。4つの部門が常に課題意識を共有する事により、人工関節医療レベルの向上と患者様への還元を目指しています。

人工関節センターホームページはこちら
愛媛大学医学部附属病院における脊椎センターでの研修

愛媛大学医学部附属病院では整形外科・脳神経外科それぞれの脊椎班が協力して診療に当たる組織として「脊椎センター」を作っています。このような複数科合同の診療への取り組みは全国でも珍しく、脊椎脊髄病の研修はこの脊椎センターで行われます。整形外科は脊椎の骨折や変形矯正を得意とし、脳神経外科は顕微鏡手術や脊髄腫瘍の手術を得意とします。そのため当プログラムでは研修期間中にかなり脊椎・脊髄病診療についての幅広い知識と経験が手に入ります。さらに整形外科専門医を取得した後にサブスペシャリティーとして脊椎脊髄病を選択する場合にも、愛媛県内での研修は「脊椎センター」が起点になるグループを形成していますので、スムーズにサブスペシャリティープログラムへの移行が可能です。整形外科でも特に脊椎に興味があり。将来脊椎外科医を希望の一つにしている人には、非常に良い教育環境を提供できると考えています。

  • 愛媛大学脊椎センターのメンバー
    愛媛大学脊椎センターのメンバー
  • 脊椎内視鏡
    脊椎内視鏡
  • O-armナビゲーション
    O-armナビゲーション

2)専攻医の待遇に関する特徴

a)研修期間における身分と生活の保障について
愛媛大学専門研修プログラムに参加する連携病院全てで、(たとえ1ヶ月のような短期間になった場合でも)その間の給料と健康保険は保証することとなっています。宿舎についてはそれぞれの病院の規定がありますのでここでは割愛させていただきます。
b)大学院進学希望者に関して
大学院(学位取得)を希望する人に対しても当プログラムはある程度対応できます。たとえ大学院在籍中であっても、臨床系の大学院生で専門医認定機構が指定する症例数を経験できれば、大学院の在籍期間と専門医プログラムの期間が重複することは可能です。ただし、それぞれの4年間が完全に重なり、4年で学位と専門医両方を取得するには、実際に普通の医師として仕事をする上に学位に値する研究を行うということになり、かなりの努力が必要になります。

3)将来愛媛県内の医療機関で働きたい人への便宜

愛媛県は四国で最大の人口があり、それに伴い病院などの医療施設も数多くあります。当プログラムで研修を行った人の中には、将来愛媛県内で勤務したい、また将来県内で開業したいと考えている人もいると思います。愛媛大学では「同門会」というグループを形成し、関連病院での就職斡旋や、各種勉強会の開催、開業した場合には病気などの場合の代診の支援などを行っています。医師は診療の場では常にチームリーダーであり、若いときはまだいいですが、えらくなればなるほど孤独になっていきます。あるエリア医師をずっと続けていくならば「同門会」のような相互扶助のグループに所属することは大きなメリットがあります。まず専門医になることはとても大事ですが、自分の一生のライフスタイルのなかで、どこで、どのような人たちと仕事をしていくのかということも考えてみてください。愛媛大学にはそのような要望に答えることのできる「同門会」があります。

愛媛大学整形外科専門研修プログラムと関連病院