スタッフ紹介

教授 大澤 春彦

Haruhiko Osawa, M.D., Ph.D. Professor

所属学会

日本糖尿病学会 理事、糖尿病編集委員長、中国四国支部副支部長、愛媛県幹事、評議員
日本内科学会 評議員、四国支部評議員
日本臨床検査医学会 理事、中国四国支部長、評議員
日本臨床化学会 四国支部長、評議員
日本体質医学会 理事、評議員、編集委員
日本病態栄養学会 評議員
日本糖尿病療養指導士認定機構 理事
American Diabetes Association

専門医

日本糖尿病学会専門医、研修指導医
日本内科学会認定医、研修指導医
日本臨床検査医学会臨床検査専門医

受賞

平成17年度 日本臨床検査医学会学術賞
平成17年度 愛媛医学会賞
平成18年度 千葉大学ゐのはな同窓会学術賞
平成19年度 愛媛大学大学院医学系研究科長最優秀論文賞

専門分野

糖尿病学、分子生物学、人類遺伝学、内科学、臨床検査医学

研究分野

糖尿病原因遺伝子の同定
ホルモン及び分化による遺伝子の転写調節機構
インスリン抵抗性の成因の解明

研究内容

現在、遺伝子発現調節機構については、ヒト単離単球、培養細胞、あるいはモデルマウスを用いて、主として分子生物学的手法による解析を進めています。SNPについては、次世代シークエンサーによる個人の全ゲノム配列決定が可能となるのを見据えて、最新の統計学と遺伝疫学、分子生物学の進歩を取り入れながら、SNPのin vitroでの機能、ヒトin vivoでの表現型への効果までを体系的に解析しています。
米国留学中は、骨格筋・脂肪細胞の糖代謝の第1段階を触媒するhexokinase II (HKII)遺伝子の転写調節機構を解析しました。その結果、HKII遺伝子発現が、転写レベルから、インスリン及びcAMPにより増強されることを証明しました。さらに、プロモーター領域を解析し、基礎及びcAMP応答エレメントとその結合転写因子を同定しました。また、インスリンによる転写活性化のシグナルが、phosphatidylinositol 3-kinase (PI 3-K)及びp70 S6 protein kinaseを介することを示しました。
帰国後は、脂肪細胞におけるインスリンの脂肪分解抑制作用の鍵分子であるphosphodiesterase 3B (PDE3B)遺伝子の転写調節機構を解析しました。その結果、肥満インスリン抵抗性モデルにおいて、PDE3B遺伝子発現は低下し、血中遊離脂肪酸 (FFA)上昇と共にインスリン抵抗性を呈すること、インスリン抵抗性改善薬のperoxisome proliferator-activated receptor γ (PPARγ)リガンドが、PDE3B遺伝子発現を回復させることを示しました。また、イーストツーハイブリッド法により、PDE3B結合蛋白として、14-3-3蛋白を同定しました。
SNPについては、主としてインスリン抵抗性と関連する有力な糖尿病候補遺伝子を体系的に解析してきました。特に、2004年には、レジスチンの転写調節領域に存在するSNP-420のG/G型が、2型糖尿病リスクを高めることを見出しました。In vitroでは、転写因子Sp1/3がSNP-420がGの場合にのみ特異的に結合し、レジスチンのプロモーター活性を増加させました。また、ヒトにおいて、レジスチンの単球mRNA、血中濃度が、G/G型で最も高いことがわかりました。さらに、一般住民において、血中レジスチンは、SNP-420のGアレル数と正に強く関連すると共に、インスリン抵抗性と正に関連しました。最近では、2型糖尿病において、血中レジスチンは、メタボリックシンドローム因子の数、及び動脈硬化と正に関連することを明らかにしました。すなわち、レジスチンは、インスリン抵抗性を介して、2型糖尿病のみならず、メタボリックシンドローム、動脈硬化を統合的に予防・治療する上での鍵分子と考えられます。特に、SNP-420は、レジスチンの転写活性や血中濃度に影響することから、SNP特異的に作用する、新たな治療薬の標的になると期待しております。
このようにインスリン抵抗性関連遺伝子、特に、レジスチンの遺伝子発現調節機構と病態生理的意義の分子機構を解析することにより、インスリン抵抗性、及び糖尿病の成因を解明したいと思っています。そして、これらの成果が、遺伝子診断や液性因子を用いた、糖尿病、メタボリックシンドローム、及び動脈硬化の統合的な予防法やオーダーメイド医療の確立に繋がることを願っております。

Key words:

インスリン抵抗性、糖尿病、メタボリックシンドローム、動脈硬化、オーダーメイド医療、炎症、単球、脂肪細胞、サイトカイン、転写、プロモーター、分化、遺伝子発現、感受性遺伝子、SNP、レジスチン、PDE3B、HKII.

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