野元先生雑感

2016年03月07日

啓蟄 (けいちつ)人生に無駄なことはない 3月5日

3月5日 啓蟄
2月29日の夕方はめずらしく重信は吹雪となった。翌朝の駐車場の車には雪が残っており、雪景色で迎える3月となった。地球温暖化が議論されるが、冷え込むと実感がわかなくなってしまう。

この時期は卒業試験、国家試験、入学試験が続いており、試験の時期である。いくつになっても試験がある。うまくいかないとがっかりするが、皆が1回で済ませても、自分は2回で進むことでも、それは個性と考えて、自分のペースで進んでよいと思う。

 

人生に無駄なことはない

医学部に入学する皆さんは、半分以上が浪人を経験している。入学してからも6年のうちには留年することは珍しいことではない。また、無事に卒業しても国家試験の平均合格率は90%程度なので、10%近くは国試浪人を経験することになる。みなさんは天賦の能力に恵まれ、身体と精神の健康に恵まれ、さらに医学部受験をさせてくれた両親の支援を得られた幸運な人たちである。もちろん、君たち自身も人一倍努力してきたからこそ、ここに立っている。それでも、長い人生ではうまくいかないことは少なくない。試験に失敗するとがっかりするだろう。しかし、浪人や留年は決して無駄ではない。浪人すれば、むろんがっかりするし、経費も掛かる。両親にも心配をかけてしまう。しかし、何事も人生に無駄なことはない。自分が失敗するとうまくいかない人の気持ちをわかるようになり、心に余裕が生まれる。留年すると同級生が上の学年になり、一緒に入学した仲間と違い、年齢差を感じてしまうだろう。しかし、同級生は2倍になる。私の学年には期末試験に失敗して、3年生から4年生間で留年してしまった同級生がいた。その後、彼は皮膚科の教授になったので、私たちは同級会に呼んでお祝いしたが、彼にとっては2回目のお祝いとなっていた。彼の同級生は2学年にわたっており、2倍の仲間を持っていたためである。

アップルを立ち上げ、さらにスマートフォンを発展させたスティーブ・ジョブSteve Job が、スタンフォード大学の卒業式で講演をしている。彼は「人生は点と点でつながっている connecting the dots」という。ジョブは大学に入学できたものの、学費の高さと両親の負担を考えて中退している。その後はアップルを立ち上げて成功したものの、自分の会社を退任させられている。波乱の人生であるが、挫折を経験したからこそ、その後の人生で大きく発展できたと述べている。

うまくいかない時には、次のステップのために自分にとって必要な時間と考えてよい。支えてくれる両親や家族には心配をかけると思うが、君にとって決して無駄ではない。