野元先生雑感

2016年10月26日

霜降(そうこう)産官学民 10月23日

10月23日 霜降  産官学民
秋らしくなったが、再び、気温が上がり汗ばむようになった。次は、一気に冬を感じることになろうか。学内の「哲学の道」も少し、紅葉してきた。

 

産官学民

皆さんは、産官学民という言葉を聞いたことがあるだろう。特に産学共同研究は耳にすることがあると思う。大学は独立行政法人となってはいるが、文部科学省の管轄であり、かなりの経費は税金で賄われている。しかし、新しい治療を生み出す研究では会社と協力して進めることが必須である。現在国策となっているiPS細胞を用いた再生医療でも実用化を目指す研究であり、会社による企業治験として進められている。

皆さんが卒業して研修を始めると、製薬会社のMR(Medical Representative)氏と出会うと思う。どこの医療機関でも担当者が配置されている。薬や医療機器の情報を伝えるためであるが、同時に自社の製品のPRも担当している。MR氏は皆さんには丁寧に対応してくれると思う。しかし、皆さんが尊敬されているとは限らない。薬や医療機器のend userは患者さんであるが、処方や機器の採用は医師に任されているので、医師がuserとなるためである。なお、PRや情報の提供の仕方は製薬協を中心に細かく決められており、MR氏が勝手に対応しているわけではない。

皆さんが産学共同研究に参加すると会社の開発担当者と打ち合わせる機会があるだろう。その時にはMR氏の対応とは全く異なることに気づくと思う。製薬会社や医療機器会社では新しい製品の開発は必須であり、よりよい優れた新製品を開発できないと会社は継続できない仕組みとなっている。世界中で同様のシステムとなっており、競争原理を採用している。国で開発できないかとも考えると思うが、社会主義国の50年間では、ロケットの開発はできたが、治療薬の開発では全く成果は上げられなかったことを見ると、競争原理は医学の進歩には必須と考えられる。このため、どこの会社でも開発には精鋭のスタッフを配置している。研究所のスタッフが開発に移ることも少なくない。一生開発に関わっても成功する薬は、一つ二つであり、皆、それぞれの人生をかけて取り組んでおり、必死の迫力を感じる。開発は私たちとの共同作業であり、MR氏のように対応することはない。私たちは動物実験などの前臨床試験における情報を確認し、どのような症状に、あるいはどのstageで効果が期待できるかを提案して研究計画(プロトコール)を作成する。

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