第10回 医科学研究発表会

平成24年9月20日(木曜日)に行われました第10回 医科学研究発表会にて

地域医療学講座配属の上本明日香さんが優秀賞を獲得しました。

発表抄録

医学科5年生を対象とした学生の進路選択と地域医療の崩壊に対する意識調査

上本明日香1、川本龍一2、阿部雅則2、楠木 智2

1) 愛媛大学医学部医学科3年生

2) 愛媛大学医学部地域医療学講座

【目的】学生がどのような因子に基づいて進路を決定するか、また地域医療の崩壊、医師不足に対しどのような認識を持っているかを探る事で、地域医療に従事する医師数の増加を阻む要因を探る。

【対象と方法】対象は地方大学医学部の5年生74名、男性48名、女性26名、23.5±2.6(平均年齢±標準偏差、範囲22-36)歳であり、無記名アンケート方式で生涯勤務地の決定因子となりうる項目を19項目、医師不足問題の原因因子として考えられる項目を13項目提示し、各項目がどの程度重要視されるか4段階で評価してもらい、その結果を集約した。

【結果】学生の進路選択においては、主に自身の出身地や生活に関わる項目、続いて配偶者の意向が重要視される傾向にあり、出身大学、研修医療機関の所在地、医局の意向はあまり重要視されない傾向がみられた。地域医療の崩壊に関しては、その主な要因は知識として持ち合わせているものの、現実的な身近な問題として捉えていない傾向がみられた。しかし一定期間であれば、僻地、離島などで地域医療に従事してもよいと回答する学生も一定の割合で存在することが示された。地域医療の崩壊の予防対策として提示した項目、地域医療機関の実績の発信、医療の現状の提示、地域医療に関わる医師の講演の実施、現場での実習はいずれも予防対策として有効であるという認識を持っている事が示された。

【結論】学生の進路決定は、自身あるいは家族の意向といった、自身が認識しうる項目に基づいてなされており、学生にとって身近な問題となりにくい地域医療の崩壊に対し、積極的に取り組むという選択肢を学生は持ち合わせていないことが今回の調査で明らかとなった。従って、学生に対する地域の医療機関の積極的な情報発信や実習の斡旋により、学生の興味を持たせる事が、地域医療崩壊を防ぐ対策として必要であると考えられる。