胆・膵疾患

胆・膵疾患イメージ1

消化器疾患と言えば胃腸疾患・肝疾患を、消化液と言えば胃液を思い浮かべるのではないでしょうか?しかし、食べ物を「消化」する上で胃液以外の重要な消化液として胆汁および膵液が挙げられます。これらの消化液の通り道にできる疾患が胆膵疾患です。胆道(図1の緑色)の疾患には胆嚢癌・胆管癌・胆嚢ポリープ・胆嚢結石など、膵臓(図1の水色)の疾患には膵癌・膵管内乳頭状粘液腺腫・急性膵炎・慢性膵炎・自己免疫性膵炎などがあります。 胆・膵疾患イメージ2 胆膵疾患と言っても、まだまだお馴染でない方も少なくないと思いますので……。さて、ここで瀬戸内海を中心とした地図を思い浮かべて下さい(図2)。食道→胃→十二指腸(図2のピンク色)→空腸へと続く消化管を東海道・山陽新幹線に例えると、肝臓(図2の黄土色)が四国、胆管(図2の緑色)が瀬戸大橋および四国内の交通網、胆嚢(図2の緑色)が与島、十二指腸乳頭(図2の緑色と青色の管が合流してピンク色に出るところ)が中国・四国地方の交通の要所であります岡山駅、そしてお腹の中でも奥の方に潜り込んでいる膵臓(図2の水色)が岡山駅の地下街に例えることができます。そうすると、我々は瀬戸大橋、与島、岡山駅地下街を担当していることになります。上空から四国、新幹線、瀬戸大橋は認識できても岡山駅地下街は認識できません。膵疾患が見つかりにくいと言われる所以に似ております。症状がなくても定期的な診察を指示された場合には、年に1~4回行われる地下街の定期点検だと思ってご面倒でも通院して下さい。

グループ長 熊木 天児
 

沿革

1. 胆膵グループの黎明期(2004〜2006年)

第3内科開講以来30年間、胆膵疾患診療は消化管グループが担当しておりましたが、胆膵疾患患者は増加の一途を辿り、2004年からは胆膵グループとして独立し、横田智行先生(H7卒)が初代チーフに就任しました。とは言え、メンバーは1人であり、消化管グループのサポートを受けておりました。しかし、胆膵疾患による年間入院患者数は徐々に増加し、2009年までの5年間で2倍(47例から93例へ)に、ERCPの件数も1.5倍(140件から205件へ)に伸び、学内外でも独立したグループとしても認識され始めました。

2. 胆膵グループの充実期(2006〜2013年)

胆・膵疾患イメージ3 診療実績の飛躍に伴いマンパワー不足は否めず、2006年4月より山西浩文先生が、2007年8月より畔元信明先生(ともににH15卒)が順次メンバーに加わりました。2009年6月に横田先生が松山赤十字病院肝胆膵センターへ赴任となり、同年11月より熊木天児(H7卒)が2代目チーフを担当しております。最近では腹部手術歴のある症例に対する胆管ドレナージ術、超音波内視鏡下穿刺吸引法による膵生検など、難易度の高い技術を要求される様になりました。特に、前者の占める件数の割合が増え、さらに当グループのニーズも一層高まりました。2010年4月からは小泉光仁先生(H19卒)、2011年10月からは黒田太良先生(H19卒)が大学院生として加わり、メンバー数ではピークを迎えました。2013年4月には畔元先生、山西先生が転勤となり、6月からは大野芳敬先生(H12卒)が大学院生として加わりました。

3. 胆膵グループの発展期(2014年〜)

胆・膵疾患イメージ4 診療・研究・教育が安定して来た頃、さらにレベルアップを図るべく、小泉先生がJA尾道総合病院(花田敬士先生)へ超音波内視鏡検研修(2014年2月から1ヶ月間)、黒田先生が近畿大学消化器内科(北野雅之先生、現和歌山県立医科大学消化器内科教授)へ超音波内視鏡下胆道ドレナージ研修(2015年8月から2ヶ月間)を受けに国内留学をしております。2016年4月からは今村良樹先生(H22卒)が大学院生として加わり、現在に至っており、2016年の診療実績は入院患者数135名(2004年のおよそ3倍)、ERCP件数196件、EUS件数317件まで伸びております。

研究内容

診療グループとしての歴史が浅く、これまでの研究は膵癌に対する白血球粘着阻止試験に関する研究(恩地ら:Gastroenterol Jpn 1984)および膵癌の発癌機構に関する研究(沖田ら:Mol Carcinog 1995)までに留まっておりました。しかし、現在では診療実績の向上およびメンバー増員に伴い、研究成果を残せる様になりました。また、愛媛県内主要関連病院と連携し、2010年にEhime Pancreato-cholangiology (EPOCH) Study Groupを立ち上げ、多施設共同研究を遂行しております。

自己免疫性膵炎(AIP)

・AIPの診断・治療効果判定におけるBAFFの有用性を提唱し(山西ら:Pancreas 2011)、熊木が2011年に国際膵臓研究フォーラム最優秀演題賞を受賞しました。
・ステロイドは炎症を抑制するもののAIPの根本的な治療にはならず、lymphotoxin-βがkey playerであることをドイツ・スイスとの共同研究で示しました(熊木ら:Gastroenterology 2012)。
・AIPに対するステロイド治療開始後、膵容積変化が再燃を予測することを明らかにしました(大野ら:OJRD 2016)。

膵癌

・AIPとBAFFに関する研究の中で、膵癌遠隔転移症例でBAFFが高値になることを見出し、膵癌の転移・浸潤におけるBAFFの役割を検討し(小泉ら:PLoS One 2013)、小泉が2015年に第19回日本がん分子標的治療学会学術集会ポスター賞を受賞しました。
・EPOCH Study Groupでは、膵癌診療の向上ならびに診療モデル地区を目指して実態調査・啓蒙活動を行っております(黒田ら:BMC Gastroenterology 2013)。その中でも、高齢者ならではの問題点を明らかにしました(黒田ら:BMC Gastroenterology 2017)。また、化学療法による予後規定因子を明らかにし(畔元ら:愛媛医学2013)、さらに大規模で解析しております(寺尾ら)。 その間、EPOCH Study Groupを代表して熊木が2012年に日本膵臓病研究財団膵臓病研究奨励賞受賞を受賞しました。最大の課題となっている早期診断に関しても、偶然発見された膵臓の異常所見を徹底的に精査することの重要性についても論文化しており、メディアでも取り上げられました(熊木ら:Mayo Clinic Proceedings 2019)。松山市民病院消化器内科部長の田中良憲先生が社会人大学院生として膵癌と血液型に関する研究を行い、学位を取得しました(田中ら:Internal Medicine 2020)。

膵管内乳頭粘液性腺腫(IPMN)

・分枝膵管型IPMNの発癌危険因子および至適経過観察方法を明らかにするために行われている多施設共同研究に参加しております(熊木ら)。
・IPMNが胆管へ穿破した際の内視鏡所見”pig nose appearance”が消化器ではトップ英文誌に掲載され(小泉ら:Gastroenterology 2015)、小泉が2016年に日本消化器内視鏡学会学術奨励賞を受賞しました。さらに、IPMN胆管穿破症例のマネージメントの難しさについても報告しました(小泉ら:Endosc Int Open 2016)。

造影超音波検査

・膵線維化の程度を造影超音波検査で評価する方法を示しました(畔元ら:BioMed Res Int 2015)。
・造影超音波検査を用い、門脈圧亢進症による膵うっ血が糖代謝に影響を及ぼすことを明らかにし(黒田ら:J Gastroenterol 2015)、黒田が2015年に日本消化器病学会奨励賞を受賞しました。

その他

・高齢者総胆管結石症:内視鏡治療(小泉ら:Hepatogastroenterology)。
・肝移植後胆管胆管吻合部狭窄:内視鏡治療(小泉ら:BMC Gastroenterology 2020)。
・胆道閉鎖症:術後肝移植を受けることなく自己肝で生存する症例の特徴をToronto大学、Cambridge大学、Radboud大学との共同研究で明らかにしております(熊木ら:Liver International 2012)。
・Diffuse glucagonoma:症例報告しました(畔元ら:Clin Res Gastroenterol Hepatol 2012)。
・膵サルコイドーシス :症例報告しました(畔元ら:Internal Medicine 2018)。
・IgG4関連硬化性胆管炎:症例報告しました(大野ら:Clin J Gastroenterol 2018)。

 
今後もグループ一同でさらに飛躍できる様、走攻守バランスを取りながらこれらの胆道疾患および膵臓疾患の診療(攻)、研究(走)、教育(守)にあたりたいと思います。

 
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愛媛大学大学院
消化器・内分泌・代謝内科学
(第三内科)
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