教授挨拶

 2025年4月1日より愛媛大学大学院医学系研究科地域医療・総合診療学講座を担当させて頂くことになりました阿部雅則です。よろしくお願い申し上げます。

 地域医療学講座は、2009年1月に愛媛県の寄附講座として設置され、初代教授として川本龍一先生(現・愛媛大学医学部附属病院地域医療支援センター特命教授)が就任されました。講座設立の理念は「地域で医師を育てる」です。地域における保健・医療・福祉との連携を図りながら、1)将来の地域医療を担う医師を養成するための地域での学生や研修医の教育、2)地域医療機関における診療支援、3)地域に根付いた研究活動を行ってきました。とくに、愛媛大学での教育のみならず地域サテライトセンター(西予市地域サテライトセンター、久万高原町地域サテライトセンター、愛南町地域サテライトセンター)での実習などを通じて地域医療マインドの滋養に努めてきました。また、 2016年には愛媛大学医学部附属病院に総合診療科が創設され、地域医療学講座を中心に他の講座・診療科の先生方の協力のもと運営を行ってきました。

 2025年から地域医療学講座は「地域医療・総合診療学講座」と再編し、機能強化することになりました。愛媛県は、中山間地域や離島などのへき地も多く、少子高齢化が急速に進行しています。これに伴い、世帯構造の変化、疾病の複雑化、要介護者や生活習慣病の増加といった課題が顕在化し、県民の保健・医療・福祉に関するニーズは、ますます多様かつ複雑な様相を呈してきました。こうした地域における医療を担う医師には、単に疾病の診療にとどまらず、家族・職場・地域社会を包括的に捉えた広範な医療活動が求められており、育成すべき医師像として全人的に診療にあたり、多様な問題・ニーズに対し、幅広く柔軟に対応する医療を提供できる「総合診療能力」を持った医師が求められています。「地域枠」(奨学金貸与)入学者など将来の愛媛県の地域医療の担い手に対し、愛媛大学および愛媛県内の医療機関と協力・連携しながら総合診療医を継続的に養成することで、医師の地域偏在や診療科偏在といった社会的問題の解消にも貢献し、超高齢化社会において中・長期的に持続可能な医療を提供していくシステムを確立することを目指しています。また、大学は研究の拠点でもあり、これまで行ってきた地域住民のコホート研究や学生の地域志向性尺度開発の研究を発展させ、リサーチ・マインドの涵養にも努めていきます。

 今後とも「地域で働く地域医療・総合診療医」を育成することで、微力ではありますが愛媛県の地域医療に貢献できればと思っています。引き続き御支援のほどよろしくお願い申し上げます。

愛媛大学大学院医学系研究科 地域医療・総合診療学講座
愛媛大学医学部附属病院 総合診療科
阿部雅則