教授のごあいさつ
Message from Professor
2026年4月1日付で、愛媛大学大学院医学系研究科 脳神経内科・老年医学講座の教授を拝命いたしました山﨑亮です。私は大分県出身で、九州大学医学部を卒業後、同大学神経内科を中心に、脳神経内科診療、教育、研究に携わってまいりました。このたびご縁をいただき、愛媛大学で新たな責務を担うこととなりました。
わが国では高齢化が急速に進み、認知症、パーキンソン病、脳卒中をはじめとする神経疾患に加え、フレイルやサルコペニアなど、加齢に伴うさまざまな問題への対応がますます重要になっています。一方、これまで治療が困難であった神経疾患に対しても、新たな診断法や治療法が次々と導入されるようになり、早期診断と適切な治療介入の重要性はこれまで以上に高まっています。こうした時代において、脳神経内科と老年医学は、専門性を保ちながら患者さんを全身的・長期的に診ることのできる、きわめて重要な領域であると考えています。
脳神経内科は、脳だけではなく、脊髄、末梢神経、神経筋接合部、筋肉まで、神経系全体を対象とする内科です。認知症、パーキンソン病などの神経変性疾患、脳卒中、てんかん、頭痛、脳炎・髄膜炎、多発性硬化症や視神経脊髄炎をはじめとする神経免疫疾患、末梢神経障害、筋疾患、筋萎縮性側索硬化症などの神経難病まで、非常に幅広い疾患を診療しています。その診療の基本となるのが、患者さんから症状や経過を詳しく伺い、運動、感覚、反射などを評価する神経診察です。画像検査や血液検査が大きく進歩した現在においても、患者さんを直接診察し、得られた所見を一つひとつ積み重ねながら病変部位と病態を考えることは、脳神経内科診療の根幹です。
また、老年医学では、認知症のみならず、フレイル、サルコペニア、多疾患併存、ポリファーマシー、栄養障害など、高齢者に特有のさまざまな問題を総合的に捉えます。神経疾患の多くは加齢と密接に関連しており、脳神経内科と老年医学は非常に親和性の高い分野です。臓器別の診療だけでは十分に対応できない高齢患者さんを、神経学的な視点と全身的な視点の双方から診療できることは、本講座の大きな役割の一つです。
愛媛大学脳神経内科・老年医学講座の特色は、この二つの専門領域を一つの講座の中で実践できることにあります。専門性の高い脳神経内科診療と、高齢者を全人的に捉える老年医学を組み合わせることで、日々の臨床から生じる課題を研究へとつなげ、さらにその成果を診療へ還元することを目指しています。また、愛媛大学出身者に限らず、さまざまな大学や経歴を持つ医師が集まり、それぞれの関心や将来像に応じて、診療、研究、教育に取り組める環境づくりを進めています。
脳神経内科は「難しい診療科」と思われることも少なくありません。しかし、その出発点は、患者さんの話をよく聞き、丁寧に診察し、「どこに、どのような異常があるのか」を考えることです。神経診察を学び、実際の患者さんを診ながら考える経験を重ねることで、この分野ならではの奥深さと面白さを実感できると思います。学生、研修医、若手医師の皆さんには、ぜひ一度、当科の診療、教育、研究の現場を見ていただきたいと思います。脳神経内科・老年医学に関心を持つ皆さんと、ともに学び、診療し、新しい医療をつくっていけることを願っています。
山﨑 亮
愛媛大学 脳神経内科・老年医学講座