写真:石鎚山山頂

専門研修について
About Specialized Training

脳神経内科とは?

脳神経内科は、脳、脊髄、末梢神経、筋肉などの疾患を内科的に診る診療科です。記憶・判断力や言語などの大脳機能の障害から、運動・感覚・自律神経や筋肉などの障害による脱力、歩行障害、不随意運動、痺れ、痛み、立ちくらみ、排尿障害など、その多彩な症状の原因となる病気を診断し、最適な治療を施すことを第一の目標としています。治療内容に応じて、脳神経外科・整形外科・精神科・耳鼻科・眼科など他診療科とも日常的に連携して診療にあたります。従来の診療科名の「神経内科」は50年以上の歴史がありますが、現在でも名称の認知度不足から専門診療機会を逸するケースが少なくないため、日本神経学会は2018年1月より名称を「脳神経内科」に変更するに至りました。一般の認知度が高い脳神経外科とは異なる対象疾患も多数ありますが、基本的に器質的疾患を対象とする意味で脳神経内科の方が正しくイメージしやすいという理由です。日本神経学会の方針があったこと、また当講座より寄付講座として抗加齢医学講座が設立されたことから、2019年10月に当講座および診療科の名称変更に至りました。

写真:大八木教授が指と指を合わせる診療している様子

脳神経内科医のキャリアパス

現在の医療制度における医師の一般的なキャリアパスは、① 専門医取得、② 学位取得、③ 病院勤務医、④ 大学病院教員・研究員、⑤ 開業などの段階があり、少し例外的なキャリアとして、行政や企業に就職などの道もあります。まず、将来自分がどういう医師像を目指すべきかと自問自答しながら進路を考えることが重要です。そして、どの診療科でも同じですが、脳神経内科医を目指す第一の理由は、脳・神経・筋肉の機能やその病気について興味を持つということに尽きます。加えて、他の内科サブスペシャルティと比較して脳神経内科領域の特色を挙げるとすれば、疾患の種類の多さと治療の多様性があります。欧米ではNeurologyは一般内科とは独立した基本領域であり、内科サブスペシャルティとしては疾患が多種類・多様であるがゆえに医学生・研修医にはやや敬遠されがちな面もあります。しかし、逆に言えば、生涯にわたり勉強することが多く、新規知見や治療技術の進歩から全く飽きない領域と言えます。さらに、医師の働き方の変化にも対応しやすい診療科と考えます。その具体的なメリットを以下に説明します。

脳神経内科の臨床

大学病院および連携病院で幅広い臨床修練を

愛媛大学病院は愛媛県唯一の大学病院であり、県下全域から患者の紹介を受けるとともに、実績が厚い免疫性神経疾患については他県からも紹介受診が来ます。一方、固有の病床数が少ないこともあり、大学は難病の特殊検査・治療が中心になります。そのため、学生実習では「難病診療科」のイメージが強いわけです。しかし、脳神経内科の実臨床では、脳卒中、認知症、てんかん、頭痛などのコモンな疾患が主要対象となります。したがって、脳神経内科専門医を取得するためには、大学病院と市中病院の両方に勤務して、多様な症例を経験する必要があります。当講座は多数の医局OBや関係が深い神経内科専門医が市中病院で活躍しており、連携した指導体制ができています。専門医や学位取得後はそれぞれの希望に応じて勤務先を調整していきます。愛媛県はほぼ全域が脳神経内科医の空白もしくは少数地域なので勤務先は概ね希望通りに調整可能ですし、無茶な医局人事は行っていません。また、脳神経内科の開業医も少しずつ増える傾向はあります。

写真:機会をあてる診療の様子

脳神経内科の研究

基礎研究および臨床研究

当講座の研究内容については別項を参照してください。愛媛大学では、臨床系大学院に進学すると有給の院生医員(週3日勤務で医療保険あり)となり、少なくとも診療業務も担当する大学院生の無給医はいません。当講座は少人数のため、助教兼任の大学院生というケースもしばしばあります。診療兼務の場合、大学院生としての研究に時間的制約も生じますが、教授を始めとして指導医も自ら実験やデータ収集・解析に加わっているので、研究自体は進行していきます。また、学位を有する特任講師以上はそれぞれ科研費を獲得しており、研究遂行に必要な研究費も確保しています。さらに希望や必要性に応じて、学内の基礎系講座への出向や他大学・研究機関に国内留学することも考慮します。近年、当講座関係では海外留学希望者は少ないようですが、学位取得後、希望であれば積極的に留学も支援します。

写真:研究の様子

ライフイベントとキャリア

女性医師が増加傾向

近年の日本神経学会の新規入会者の男女比は2:1で、女性医師の増加が顕著です。それに伴い、出産・育児をしながらの専門研修や大学院研究への配慮が必要になっています。原則として休学・休職は臨機応変に対応しており、休職期間中は他のスタッフでカバーしています。脳神経内科医のメリットの一つは、大学病院、救急総合病院、回復期リハビリ病院、難病療養病院や往診医療など、さまざまな性質の医療機関で役割を必要とされているため、医師個人のライフイベントに合わせた職場を探すことが可能ということにあります。また、一度身につけた脳神経内科医としてのスキルはずっと残るので、休職後の復帰も困難ではないこともメリットと言えます。

写真:赤ちゃんを抱いた女性

多様な専門医への道

さらなるサブスペシャルティへ

脳神経内科は内科のサブスペシャルティという位置付けですが、前述のようにNeurologyそのものが広範囲の領域であるので、さらに脳卒中、認知症、てんかん、神経病理、神経生理などという医療分野・学問分野の専門性を高めることが可能です。まずは脳神経内科専門医として総合的な能力を身につけた上で、それぞれの興味や目指す医師像に向かって、さらに専門的な診療や研究能力を磨くことができます。

写真:カンファレンスの様子

研修について

2018年度から始まった専門医制度に則って、愛媛大学では内科専攻医を募集しています。そのプログラムについては、下記を参照してください。

内科専門研修とサブスペ専門研修の連動研修(平行研修)の概念図

図:内科標準タイプ、サブスペシャルティ重点タイプの期間を説明する図

愛媛大学内科専門医プログラムより改変

愛媛大学の内科専門研修の特色の一つは、内科全体で毎年の専攻医が10数名と小規模なので、内科各領域のローテ研修や症例レポートの丁寧な指導が可能ということです。脳神経内科を目指す場合も、まずは内科専門医取得が必要なので、そのための研修先調整を適宜行っています。外部連携施設での内科研修でも、脳神経内科専門医受験も考慮しながら、出向先を決めています。原則として、入局後2年間は大学病院病棟で入院患者担当を、その後1年間は連携病院勤務という流れになっています。そして現在は、最短であれば、卒後6年目に内科専門医、7年目に脳神経内科専門医を取得する見込みとなっています。

講座の様子

愛媛県ってこんなところ

愛媛県は、四国の北西に位置し、面積5700平方キロメートル弱と小さいながらも、北は瀬戸内海、西は宇和海、南側は石鎚山(標高1982m)を含む四国山地に囲まれ、豊かな自然と穏やかな気候をもつ、住みやすい地域です。愛媛県の特徴として次のようなものが上げられます。

  • 通勤通学時間が短い
  • 家賃が安い
  • ストレスオフ県ランキング上位(2017年、2018年第1位)
  • 手軽に行ける温泉がたくさんある
  • サイクリストの聖地(しまなみ海道など)
  • みかん、瀬戸内の魚介類などおいしい食べ物が豊富 など

また、真面目で温厚な県民性は、県の公式HPで「まじめ県」と称されるほどです。愛媛での生活に興味をお持ちの方は、次のリンクもご覧ください。

写真と図:道後温泉と愛媛の地図