
研究紹介
小児がんの最適な治療を目指して:体への負担が少ない新しい検査法
小児がんは種類が非常に多く、患者さん一人ひとりに合わせた最適な治療を選ぶためには、それぞれのがん細胞が持つ特有の「目印(分子マーカー)」を見つけ出すことがとても重要です。
「がんの目印」と、治療効果を測る「MRD」
大人のガンと子どものガンでは、発生のメカニズムが少し異なります。小児がんの場合、小さな遺伝子の変化よりも、遺伝子同士が誤ってくっついてしまう「融合遺伝子」という現象が原因となることが多く見られます。
この特有の「融合遺伝子」は、病気を正確に診断するための目印になるだけでなく、治療後に体内にごくわずかに隠れて残っているがん細胞(微小残存病変:MRD)を見つけ出すためにも役立ちます。このMRDを調べることで、「今の治療がどれくらい効いているか」を正確に評価し、今後の治療方針を決めることができます。
採血だけでわかる「ctDNA検査」のメリット
私たちは、この仕組みを応用し、血液を使った新しい検査法の有効性を研究しています。実際に、特定の小児がん(白血病や横紋筋肉腫など)の患者さんにおいて、血液中にわずかに流れ出たがんのDNA(ctDNA)を調べることで、がんの再発をいち早く発見できることを確認しました。
この血液を使った検査には、子どもたちにとって非常に大きなメリットがあります。
- 体への負担が少ない(低侵襲): 通常の採血のみで検査が可能です。
- 麻酔や鎮静薬が不要: 骨髄検査や組織を採る検査と違い、子どもを眠らせる処置をせずに安全に実施できます。
これからの小児がん治療
血液検査でがんの遺伝子を詳しく調べることで、正確な診断ができるだけでなく、「お薬がしっかり効いているか」の確認や、「次にどの治療法を選ぶべきか」という重要な判断のサポートになります。
私たちは、子どもたちの体への負担や検査の苦痛を最小限に抑えながら、より安全で効果的な「一人ひとりに合わせた小児がん治療」の実現を目指して研究を続けています。
参考文献
- 最先端医療の今 小児がんにおける腫瘍特異ctDNAによるモニタリング法の有用性.
加賀城真理, 石前峰斉, 江口真理子.
Medical Science Digest. 2025; 51: 785–786. - Early detection of the PAX3-FOXO1 fusion gene in circulating tumor-derived DNA in a case of alveolar rhabdomyosarcoma.
Eguchi-Ishimae M, Tezuka M, Kokeguchi T, et al.
Genes Chromosomes Cancer. 2019; 58: 521–529.
