対象疾患について

消化管・腫瘍外科

大腸領域

●当科診療について

下部消化管グループ

 対象疾患として虫垂炎、憩室炎、腸閉塞、良性腫瘍、消化管穿孔、肛門疾患(痔核・痔瘻・直腸脱)といった良性疾患、大腸癌、小腸癌、GIST、悪性リンパ腫に対する生検といった悪性疾患を診療しています。
 また、予定手術だけではなく、消化管穿孔などによる腹膜炎に対する緊急手術や切除不能で消化管を閉塞させるような疾患に対しての準緊急での人工肛門造設なども行っています。
 年間の手術件数は約150~200件とコロナ禍で一時は減少傾向でしたが回復し、その半分以上が悪性疾患です。

 大腸癌の手術件数は年間約100例で、そのうち8~9割が低侵襲な腹腔鏡手術となっています。また2018年からロボット支援下手術が保険適応となり2019年より導入し、2023年は低侵襲手術の約半分がロボット支援下手術と増加傾向にあります。

●大腸癌手術について

大腸がんの治療は切除が可能な場合には、外科治療が行われます。標準的な手術はお腹の皮膚を大きく切る開腹手術です。開腹手術は大きな傷が残るため体への負担は大きくなります。当院では新しい手術術式として腹腔鏡手術やロボット支援下手術を導入し、がんを確実に切除するとともに体への負担をできるだけ小さくするように心がけています。

【開腹手術と腹腔鏡手術の手術創比較】

縫合不全に対する取り組み

●術後の縫合不全予防対策として、indocyanine green (ICG)を用いて、吻合する腸管の定量的血流評価を行っています。

●ICGによる血流確認
 ICGを静脈内注射し、近赤外線を照射することにより血流の有無を可視化して評価

大腸癌に対する抗癌剤治療

 年間40~50人の患者様にのべ400~500回の抗癌剤治療を行っております。術後補助化学療法(再発を予防する抗癌剤投与)に関しては術後3~6カ月間行います。再発転移に対する抗癌剤投与に関しては薬剤師や皮膚科の先生とも連携して副作用対策を行いながら行っています。遺伝子パネル検査も組み合わせることにより、既存の抗癌剤を使い切った後の治療の検索も行っています。いずれの抗癌剤投与に関しても初回は入院して重大なアレルギー反応や副反応が出ないかを確認し、2回目投与からは外来化学療法室で行います。

直腸癌に対するCRT・TNTの導入

 局所進行直腸癌に関して本邦では手術が中心でしたが、欧米では以前より術前化学放射線療法(CRT)が行われておりました。当科においても、2020年から本格的に導入しています。また、CRTと併せて補助化学療法も手術前に行うtotal neoadjuvant therapy (TNT)療法も下記臨床試験*に参加して導入しています。

*局所進行直腸癌に対する術前短期放射線療法および化学療法の安全性と有効性について検討する第Ⅱ相臨床試験

●遺伝性大腸がん診療について

 大腸がんの約5%は遺伝性のがんであると言われており、代表的なものに、家族性大腸腺腫症とリンチ症候群という病気があります。これらの遺伝性大腸がんの患者さんでは、異常がある遺伝子を親から受け継ぐことによって大腸がんのみならずさまざまな臓器のがんが発生しやすくなっています。一方で遺伝性の大腸がん患者さんでは適切な診断、定期的な検査を若い頃から行うことによって大腸がんはもちろんのこと、さまざまの臓器のがんの早期発見の可能性を高めることができると考えられます。また遺伝性の大腸がんと判明した場合、血縁者の方も同じ遺伝子の異常を持っていないかを検査し、同じ異常を受け継いでいた場合には、早期から必要な検査を受けていただくことが可能となります。
 愛媛大学附属病院消化管腫瘍外科では、同じ附属病院内にある遺伝カウンセラーが所属している臨床遺伝診療部と協力して遺伝性大腸がん患者さんの診療をさせていただいております。また2023年10月より、京都大学を中心とした「遺伝性消化管腫瘍に関する診療連携」のコア施設として定期的に症例検討会を行ない、得られた知見を患者さんの診療に還元するように取り組んでおります。遺伝性の大腸がんについて何かご不明な点がございましたらご遠慮なくお問い合わせいただければと思います。