愛媛大学医学部附属病院 人工関節センター

人工関節について

人工関節とは

人工膝関節置換術の流れ人工関節は、高度に障害された関節表面を金属などで出来た人工の関節で置換し、関節機能を回復させる手術です。関節の痛みの原因となっている部分を取り除くため、「痛みを取る」効果が大きいのが特徴で、術後早期よりリハビリを開始することが出来ます。

72歳 女性 高度変形膝に対する人工膝関節全置換術

人工関節置換術では術後早期より疼痛が消失し、歩行がスムーズになります。
術後早期より筋力の改善、動作スピードの改善(平均約40%)を認め、生活の質が飛躍的に向上します。

手術内容

人工膝関節置換術 Total Knee Arthroplasty (TKA)

膝関節内の痛んだ部分を取り除き、内外側とも金属やポリエチレンに置き換える手術です。除痛効果と関節機能の改善に優れ、術後のリハビリテーションが短期間ですむ利点があり、術後10年以上の長期成績でも90%を超える安定した成功率が報告されています。

使用する人工関節の機種には、関節内に存在する後十字靱帯を温存する型であるCR (cruciate retension) 型と後十字靱帯を切除しその機能を人工関節のデザインで代用するPS (posterior stabilizer) 型があります。当センターでは機種選択において温存可能なものは極力温存することを基本的スタンスとしており、可能なかぎりCR型を選択しています。当センターでは我々のグループが研究開発した次世代人工膝関節 (Mera Quest Knee System、CR型) も使用しています。この人工膝関節は日本人の膝関節の解剖学的形状に適合しながら、日本人の生活習慣の特徴である正座、横座りなどの深屈曲に対応するという2つの条件を考慮した人工膝関節です。2009年10月より臨床応用を開始しており、500例を超える臨床実績を持ち、これまでのCR型の術後可動域の報告と比較しても良好な可動域が得られています。

人工膝関節置換術の適応となるのは、高度の関節症で、関節破壊や不安定性、拘縮を伴う症例です。また術後の緩みや摩耗による耐用年数の問題があり、年齢的には60歳あるいは65歳以上が適応となります。術後の合併症としては、感染症、深部静脈血栓症、肺血栓塞栓症、骨折などがあります。

人工膝単顆関節置換術 Unicompartmental Knee Arthroplasty (UKA)

内側、あるいは外側の関節面に限局した関節症に対し、前・後十字靱帯を残し、障害された部分のみを人工関節で置換するもので、人工膝関節置換術に比べ侵襲が少なく、可動域が比較的保たれるという利点があります。また小さな皮膚切開で手術を行うため、術後の回復が早い術式です。長期成績は人工膝関節置換術に比較するとやや劣りますが、10年で85%程度の成功率です。

人工膝単顆関節置換術は痛んだ部分のみを置換する術式であるためその適応は人工膝関節置換術よりも限定され、肥満がなく、活動性が比較的低い人であり(75歳以上)、また前十字靱帯の変性が軽度で、かつ膝蓋大腿関節に著明な関節症変化がないことが重要です。一方、90°以下の膝屈曲制限、著明な屈曲拘縮を伴うものは適応外で、炎症性疾患である関節リウマチには施行されません。

人工股関節置換術 Total Hip Arthroplasty (THA)

人工股関節置換術とは、変形性股関節症や大腿骨頭壊死症、関節リウマチ、外傷などで、傷ついた股関節を、関節の代替として働くインプラントと呼ばれる人工股関節部品に置き換える手術です。

患者さんが人工股関節置換術を受けることによって享受できる事項として、
1. 股関節痛のない生活がおくれる 
2. 正常な歩容、歩行能力が獲得できる
3. 左右の脚長差がなくなる
4. 生活に必要十分な関節可動域が得られる
5. 早期に社会復帰できる 
6. 不安のない術後生活がおくれること、などがあげられます。

当関節センターでは、人工股関節置換術における確実な治療と早期の社会復帰、不安のない術後生活を目指して以下のことを行っています。

1. 術前の二次元設計図作成
2. 術前の三次元設計図作成(術前シュミレーション)
3. 変形の程度や骨の強さに合わせた個人に最適なインプラント機種の選択
4. 術中ナビゲーション装置の使用(正確なインプラント設置、術後脱臼の予防、長期成績の達成)
5. 最小侵襲手術(MIS)
6. 可能な限り自己血輸血

人工股関節の術後は、翌日にはベットから離床して、立位と車いす移動を行います。2-3日後から歩行訓練が始まり、二週間で一本T字杖と階段昇降が可能となります。

人工肩関節置換術 Total Shoulder Arthroplasty (TSA)

 変形性肩関節症の原因として、外傷、加齢に伴う骨や軟骨の老化、肩を動かす筋の束である腱板の破綻などに加え日常的な物理的ストレスなどが挙げられます。この他にも、関節リウマチや、何らかの原因で上腕骨の骨頭という部分が壊死(上腕骨頭壊死)し、変形を来すことがあります。変形し摩耗した関節軟骨は再生しません。これらの病態に対して人工関節置換術が行われます。

 近年、人工肩関節全置換術で注目を集めているのが、リバース型人工肩関節といわれる新しい人工肩関節です。腱板断裂を起こして治療されずに経過すると筋が短縮してしまい、元の位置に縫合し治すことができなくなります。さらに経過すると変形性関節症を発症しますが、これまでこうした病態に対しても通常型の人工肩関節置換術が行われてきました。通常型の人工肩関節置換術では疼痛は改善しますが、肩関節の動きは改善しません。そこで開発されたのが、リバース型人工肩関節です。日本でも平成26年春に認可を受け、使用できるようになりました。このリバース型人工肩関節を使用した手術を行うには、病院施設だけでなく、「肩関節手術100 件以上の経験を有するもの。腱板断裂手術を 50 件以上および人工肩関節全置換術もしくは人工骨頭置換術を併せて 10 件以上」、「日本整形外科学会の定める講習会を受講している」など、実施する医師にも基準が設けられております。限られた施設でしか行われていませんが、当人工関節センターでもこの手術を行っており、これまで十分に治療できなかった病態でも、除痛と肩関節の機能両方を改善することができます。

リバース型人工肩関節

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