小児医療を通じて未来を守る
愛媛大学小児科 ~小児医療を通じて未来を守る~

今年度も多くの学位取得者がでました!

毎年年度末になると学位審査ラッシュになります。今年度も課程博士4名、論文博士2名(太田先生は年末に審査済)の学位審査がありました。全ての論文が英文誌へ投稿されています。学取得者より研究概要を頂きましたので列挙させて頂きます。

現在も多くの大学院生が研究と臨床に頑張っています。日常の仕事に満足した時点で成長は終わり衰退へと向かいます。日々前進あるのみで頑張りましょう!

(課程博士)

濱田先生:THP-1ヒト単核球細胞においてツニカマイシン誘発小胞体ストレスはPERK-ATF4-CHOP径路を介してレジスチンmRNAを増加させる。

レジスチンは、インスリン抵抗性を惹起するアディポサイトカインとして知られている。今回我々は、ヒト単球細胞を用いて、小胞体ストレスのレジスチン遺伝子発現に対する影響を解析した。その結果、ツニカマイシンによる小胞体ストレス誘導はレジスチンmRNAを増加させた。一方、ケミカルシャペロンを用いて小胞体ストレスを軽減するとレジスチンmRNAが抑制された。また、siRNAを用いたノックダウンやプラスミドを用いた過剰発現による解析から、小胞体ストレスによるレジスチンmRNA増加の主要経路は、PERK-ATF4-CHOP経路であることを初めて明らかにした。

 

越智先生:細胞免疫療法を目的とした抗体依存性細胞傷害活性を発揮するCD16-CD3ζキメラレセプター遺伝子改変T細胞の開発

がんに対する抗体療法における問題点を解決するため,高親和性CD16遺伝子とCD3ζ遺伝子を結合させたキメラ受容体遺伝子(cCD16ζ)を開発した。このcCD16ζを遺伝子導入し作成したcCD16ζ-T細胞はin vitro, in vivoで抗体依存性細胞傷害活性を介した腫瘍抑制効果を示した。この研究結果から,cCD16ζ-T細胞を用いた細胞免疫療法が新たながん治療戦略となり得ることが示された。

 

文先生:円錐動脈幹部心奇形発生におけるDiGeorge責任領域近位端に位置するDGCR6の関与

DiGeorge症候群の約8割には心奇形、特に心臓の流出路の先天異常を伴い、その責任遺伝子の一つはTBX1。10%くらいの円錐動脈幹部心奇形のみの患者さんにはDiGeorge責任領域の欠失が検出できる。本研究では、円錐動脈幹部心奇形のみを示す6例を解析した。その結果、TBX1などの責任遺伝子の異常は検出されなかった。しかしながらArray CGH解析によって、6例のうちの2例において DiGeorge責任領域近位端に、短い欠失(deletion)ないし重複(duplication)が認められた。この領域のDGCR6TBX1の発現レベルを変化することにより、同様なphenotypeが生じたと考えられる。

 

武先生:HMGA2はMLL-AF4 融合遺伝子を有する乳児急性リンパ性白血病での分子標的になりうる

乳児急性リンパ性白血病(ALL)は小児期の難治癌の一つであり、効率的かつ低毒性の分子標的療法の開発が望まれている。本研究ではlet-7b-HMGA2p16INK4A経路がMLL融合遺伝子陽性乳児ALLの治療標的なりうるかどうか検討することを目的とした。MLL融合遺伝子を有するALLにおける白血病の発症のメカニズムはまだ完全に解明されていないがMLL-AF4融合遺伝子によるmiRNA let-7bの発現抑制とHMGA2蛋白の高発現が白血病化に重要な役割を果たしていると考えられる。HMGA2阻害剤netropsinは、特に脱メチル化剤5-azacytidineと組み合わせることによって、MLL-AF4陽性ALLの新たな分子標的療法として用いることができると考えられる。

 

(論文博士)

竹本先生:Adiponectin/resistin levels and insulin resistance in children: a four country comparison study

小児における、インスリン抵抗性に関わるアディポサイトカインの役割についての人種差の検討を報告しました。善玉アディポサイトカインのアディポネクチンは、インスリン抵抗性の高い欧米の小児の方が低値と予想していましたが、予想に反して日本小児の方が低い結果でした。インスリン抵抗性に対して悪玉アディポサイトカインとされるレジスチンについては小児においては相関を認めませんでした。今後さらなる詳細な検討を進める予定です。

 

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2015年3月27日