各大学の学部での研究指導のシステム紹介

大阪大学

三重大学

愛媛大学

徳島大学

熊本大学(柴三郎プログラム)

大阪大学

大阪大学医学部医学科では、世界をリードする研究能力と国際的視野を兼ね備えた医学研究者を養成することを目指し、早期から基礎医学研究に参加する6年一貫の特別教育プログラムである「MD研究者育成プログラム」を2011年より設置している。本プログラムでは、まず1年次前期に全学生が参加する「基礎医学体験実習」を行い、入学直後の学生に対して最先端の医学研究内容を紹介し、6週間の研究室配属を行うことで、医学研究に対する関心と創造性を養うカリキュラムを策定している。「基礎医学体験実習」後、希望者はまず「学生研究員コース」に参加し、興味ある医学系講座・附置研究機関において実際の基礎医学研究を体験する。3年次から「MD研究者育成プログラム」が正式に開始され、研究意欲のある学生は正式に研究室配属となり本格的な研究教育が開始となる。同プログラムでは基礎医学研究を通じ、研究手法・論理的思考能力・情報収集能力・プレゼンテーションやディスカッション能力など研究者としての基本的な能力を養う。医学英語教育を重視し、学会発表や海外留学も積極的に奨励している。また、3年次に3ヶ月間の「基礎医学講座配属」、5年次に2ヶ月の「研究室配属」をそれぞれ設け、この間を医学研究に専念し、学生が能動的に自らのリサーチマインドを涵養かつ学識の充実を図る期間としている。6年次の「選択実習」期間(3ヶ月間)においては、臨床実習以外にも国内外での基礎医学・臨床医学的研究を行うことを許可し、一層の研究力養成を図っている。定期的な研究発表会の実施に加え、6年次には修了発表を行い、本プログラム修了者には選択単位(15単位)を付与している。またプログラム修了者には、医学科卒業後の、大阪大学大学院における多彩な研究医養成キャリアパスを用意している。詳しくはHPを参照頂きたい。

“http://www.edu.med.osaka-u.ac.jp/curriculum/curriculum2.html”

 

 

三重大学

三重大学医学部では学生の研究力涵養を念頭においた、研究室研修(必修)と新医学専攻(選択)という2種類のプログラムを実施している。

研究室研修では3年生の10月から4年生の8月まで全員が基礎、社会、臨床医学のいずれかの研究室に配属される。配属後にプロポーザルを作成し、指導教官以外の教員によるピアレビューを受ける。4年生の7月にプログレス発表会を実施し、全員が研究成果を口頭発表し、学生と教員による優秀発表者の選考が行われる。プロポーザル、プログレス発表は原則英語で実施するため、外国人教員による教育が毎週1回継続的に行われ、学生がこれらの資料の英語での作成を段階的に実施できる環境を整えている。また、各研究室での研究活動に加えて、医学論文の輪読会を毎週1回、学年全体で実施している。グループ毎に論文の内容を英語で発表し、他のグループから英語で質問を受ける。また、海外で活躍する研究者による遠隔講義も年3回前後実施している。これらの活動を通して科学的思考力の涵養に努めている。

新医学専攻では、1年生から6年生まで最大6年間、自分の希望する研究室で、必修カリキュラムの合間に自由に研究できる。入学時に新医学専攻プログラムに所属する学生や指導教員による新入生の勧誘が行われる。このプログラムに所属する学生は全体で100名前後である。学会発表、論文発表を積極的に行う学生が後輩を指導するという屋根瓦式教育と、教員による指導の併用により、研究に対する学生の主体性涵養に努めている。新医学専攻プログラムを選択する学生の中から、研究医を目指す学生が少しずつ増えている傾向にある。今後、大学院との連携など、より多くの研究医を養成できる環境の醸成に努めていきたい。

 

愛媛大学

愛媛大学は研究者育成教育に非常に力を入れており、科目名「医科学研究I」として1年次4月の研究室見学期間に引き続き5月より研究室配属が始まる。医科学研究Iは通年の必修科目であり、年度末にレポートとして論文を提出する、レポートは、所属講座以外の2講座の教員によって評価され、コメントとともにフィードバックされる。医科学研究は、2、3、4年次の選択科目の医科学研究II、III、IVに継続する。研究志向の学生は、3年次から大学院講義科目の単位を、科目等履修生として正式に取得することができる。医科学研究発表会という、学内の研究発表会が毎年9月に開催される。自由参加型であるが、1〜6年次学生による概ね50演題前後の発表がある。論文発表、学会発表を推奨しており、学生が筆頭の原著論文も継続的に公表されている。これらの研究者育成教育は、独自予算をもつ研究者育成委員会によって運営されている。

 

徳島大学

徳島大学医学部医学科では、1年次から、学生個々の興味やモチベーションに応じて様々な研究者養成のためのプログラムを選択することができる。

1)  Student Lab:入学直後、希望者に対し各研究室で行われている最先端の研究内容を集中的に紹介する。興味を持った分野に所属し、カリキュラムの合間を利用して実験・研究に携わることができる。

2)  医学研究実習(研究室配属):2年次から3年次にかけてすべての学生が8か月にわたる本格的な研究室配属を経験する。配属に先立ち、プレ実習では研究倫理や論文の読み方など、研究を実施する上で必須の共通事項を習得する。配属期間中はWebシステム上でWeekly Reflectionとして簡単な週報を書くことで、学生自身の振り返りを促し、教員によるフォローアップに役立てている。また、定期的に中間ヒアリング(個別面談)を行い、進捗状況や研究テーマへの理解度を配属分野以外の教員がフィードバックすることで、配属先別による学生の習熟度の差を最小化するよう図っている。最後にポスター形式の発表会を開催し、優秀発表者に選ばれた学生は口頭発表も行う。多くの学生がその成果を学外の学会や論文等で発表するに至っている。

3)  海外交流プログラム:3年次または4年次に希望する学生を選抜し、学術交流協定校(テキサス大学、ハノーバー医科大学、ソウル国立大学など)への公式短期留学を支援している。

4)  MD-PhDコース: 4年次修了後に休学して大学院博士課程に進学し、学位を取得した後に5年次へ復学するコースである。早い段階で医学研究に専念することができるため、重点的に科学的思考力など研究力が養成される。本コースでは9年間で医学博士と医師免許の両方を取得することが可能となる。2003年の開始以降継続的に、17名が本コースに進学している。

5)  English Plus+:英会話をより身近に学ぶことができる環境を提供することを目標として、学生スタッフが中心となって運営している。参加者同士また外国人教員・留学生と英語でコミュニケーションをとることで、英会話の自然な上達を目指す。

以上のプログラムにより多角的かつ継続的に学生の研究力向上を支援している。2019年度より開始された「四国定着研究医型」AO入試枠の学生には上記プログラムの積極的な利用を促し、早期のリサーチマインド涵養を図っている。