肝細胞に脂肪(中性脂肪)が沈着して肝障害を引き起こす病態を脂肪性肝疾患と言います。肝臓の組織で、脂肪滴を伴う肝細胞が30%以上認められる場合を脂肪肝といいます。現在、検診受診者の20-30%は脂肪肝であり、頻度は年々増加しています。脂肪肝は、以前はアルコールによるものが多かったのですが、糖尿病や肥満など生活習慣病の表現形として発症することが多くなり、飲酒歴はないがアルコール性肝障害に類似した脂肪性肝障害がみられる病態をまとめて非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)と呼ぶようになりました。成人の8%程度はNAFLDであると言われています。NAFLDは肝細胞に脂肪が沈着するのみの単純性脂肪肝と、脂肪沈着とともに炎症や線維化がおこる脂肪性肝炎に大別されます。この肝臓の脂肪化に伴い炎症を起こし線維化が進行する病態は非アルコール性脂肪肝炎(NASH)と呼ばれ、肝硬変に至り、肝細胞癌を引き起こす可能性があります。成人の約1%程度がNASHであると考えられています。NASHは、決して侮れない病気です。
大切なことは、現在の肝臓の状態を把握すること(脂肪肝がないか、肝機能異常がないか)。脂肪肝を侮らず、NASHの可能性があれば、肝生検などの精密検査を受けること。そしてしっかりとした病識を持って運動療法・食事療法を行い、脂肪肝およびその背景の肥満改善に努めることです。また、発癌を考慮した、採血・腹部画像検査による定期的な経過観察が必要です。
肥満、糖尿病、高脂血症などメタボリック症候群をお持ちの方は、肝機能検査、腹部エコー検査などの画像検査をお勧めします。今後、最新の情報や治療法などについて、ホームページや講演会などの場を利用して情報を提供していきたいと思います。