遺伝子チーム
概要
肥大型心筋症(HCM)・拡張型心筋症(DCM)・不整脈原性右室心筋症(ARVC)・QT延長症候群・Brugada症候群などの遺伝性循環器疾患の原因遺伝子解析、病態修飾遺伝子多型解析(SNP)を行っている。
さらに、MacRae Lab(Harvad Medical School、 Brigham and Women’s Hospital)との共同研究として、四国地方に多いサルコメア遺伝子変異をもつzebrafishを作成し、その発症機序の解明を目指している。2015年6月からは独自に次世代シーケンサーMiSeqを使用し、遺伝性循環器疾患17疾患に対する174遺伝子(0。572 Mb)のスクリーニング解析を開始した。
このスクリーニングで原因遺伝子変異が同定できなかった症例については全エクソーム解析を施行する予定である。新規遺伝子変異の情報をもとに、先制医療にむけた新たな治療標的を探究している。遺伝子解析装置(illumina MiSeq、 ABI PRISM 7900HT Sequence Detection System、 Affymetrix GeneChip Systemなど)も充実している。
業績
遺伝性循環器疾患の原因遺伝子解析・病態修飾遺伝子多型の多数の報告をしてきた。オリジナリティーの高い研究として、HCMでは循環器疾患に保護的とされてきたレニン・アンジオテンシン系抑制また血管拡張性遺伝子多型がむしろ心房細動、心血管事故の危険因子として働いていることやHCMに対する薬物反応性など”personalized medicine”に応用できる成果を多数報告している。
臨床遺伝医療
遺伝子解析における倫理面には最大限に配慮している。当チームには臨床遺伝専門医も在籍しており、当院の臨床遺伝医療部とも連携し、日本循環器学会遺伝学的検査と遺伝カウンセリングに関するガイドライン・日本人類遺伝学会ガイドラインに則った質の高い遺伝カウンセリングを提供している。
競争的資金獲得・受賞
競争的資金・研究助成も多数獲得している。
展望
“Personalized Medicine”から“Precision Medicine”へ
“Personalized Medicine”は、各種遺伝子多型と疾患・薬物感受性などの相関情報をもとに個々人に適した治療法を提供することを目指してきた。
“Precision Medicine”では、次世代シーケンサーによる膨大な遺伝子情報をもとに精密で正確な診断、それに適合した医療、さらには疾病の発症予防などが期待されている。私たちも遺伝性循環器疾患に対して、このようなアプローチが可能となるような研究を進めていく予定である。
また、循環器領域では比較的研究が遅れているepigenetics(DNA塩基のメチル化による遺伝子発現の変化)領域の研究も計画している。心筋症における心血管イベントと各種原因遺伝子、病態修飾遺伝子多型、遺伝子プロモーター領域におけるDNAメチル化の有無との組み合わせにより、リスクの層別化を探っていく方針である。
最後に
東に石鎚山、西に瀬戸内海を望む良好な研究環境のもと、世界へむけての情報発信の準備を整えている。私たちと一緒にDNA大陸に夢(宝)の探索にでかけませんか?