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心不全チーム

 

心不全チームの取り組みについて

我々、心不全チームは心不全患者を対象に集学的な診療を提供すべく、日々努力しております。

特に他の医療機関から紹介していただいた薬剤治療抵抗性の難治性心不全患者に対しては、まず非侵襲的に心エコーチームによるハイエンド・エコーを駆使した左室同期不全を含めた心機能の詳細な評価を行い、心臓造影MRIによる心筋ダメージの評価、NT-proBNPなどのマルチバイオマーカー・アセスメントにより重症度評価およびリスクの層別化を行っております。

侵襲的にはスワンガンツ・カテーテルによる血行動態の評価に加え、ほぼ全例において左室心筋より心筋生検を施行し、組織学的な診断および心筋リモデリングの評価をしております。これらの多面的なデータをもとに、多種の循環作動薬を個々の患者に応じて微調整した上で、必要であれば非薬物治療(心臓再同期療法(CRT)・植え込み型除細動器(ICD)・在宅酸素療法・陽圧換気療法・僧帽弁形成術および左室形成術・持続型血液透析)をタイミングを逸することなく躊躇せず導入しております。

これらの集学的治療により心不全患者における1年死亡率5%未満、5年死亡率30%未満と良好な成果が得られております。臨床研究では愛媛県下16医療機関の参加のもとweb site レジストリーシステムを用いた慢性心不全患者の登録観察研究が現在進行中です。

この研究では愛媛県における心不全患者の臨床像や治療内容など実態を明確にすることで、実際の患者像に即した予後予測のための臨床マーカーや薬物および非薬物治療を含む心不全に対する治療法の有効性判定、治療効果の規定因子を明らかにすることを目的としており、この研究の成果が必ず愛媛県の心不全患者にフィードバックできるものと確信しております。

また心不全患者のマルチバイオマーカー・アセスメントとしてBNPなどの広く認知されたマーカーのみならず、IL-6やTNF-αなどの炎症性サイトカインやサイトカイン関連因子を組み合わせることにより、より詳細な治療効果判定およびリスク層別化が可能になることを報告しております(J Am Coll Cardiol 37:412-417, 2001)。特に不全心筋における線維化、もう少し詳細に言えば細胞外マトリックスリモデリングに深く関係しているマトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)は臨床上有用であり、血中MMP-3濃度が高い患者は将来的な心事故を発症する率が高いことも報告しております。(J Cardiac Fail 13:752-758, 2007)。

 

冠静脈洞内のMMP濃度これらの患者では冠静脈洞内のMMP濃度も上昇しており、生検心筋標本より電子顕微鏡を用いた細胞外マトリックスのコラーゲン・タイピングを行うとMMP低値患者に比して太く固いI型コラーゲンが増生しているのがよくわかります。

 

心不全はあらゆる心疾患の終末像であり、全身的な症候群です。

ですから1人1人の心不全患者が全く違う臨床像を呈しており、個々の臨床像に即した多面的アプローチをするとともに現在だけでなく5年先、10年先の予後をみこした集学的治療を行うことが我々、心不全チームのモットーです。