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成人先天性心疾患

◎成人先天性心疾患

先天性心疾患とは?

生まれつき心臓や血管の構造の一部が、正常とは違う病気のことを指します。お母さんのおなかの中にいる間に心臓や血管の形成に異常が生じたもので、その頻度は、およそ100人に1人(約1%)、年間1万人の赤ちゃんが先天性心疾患をもって生まれてくると言われています。

 

成人先天性心疾患とは?

心臓外科手術治療・内科治療の飛躍的な進歩によって先天性心疾患の子供の9割は思春期、成人期まで到達する事が可能になりました。複雑な先天性心疾患の子供も学校に通い社会に出ていくようになり、初期に手術をした術後の患者さんはすでに多くが40歳台に突入し、先天性心疾患の患者の半数以上は大人であるという時代になりました。

 

成人先天性心疾患の問題点

大部分の先天性心疾患の手術はいわゆる根治手術ではなく、成人となっても子供の時とは異なる多くの解決すべき問題がおこり、経過観察を続けなければならないことがわかってきました。我が国では、成人に達した先天性心疾患の患者さんは約45万人と推定され、今後も4-5%の割合で増加するとされています。

これまでは、小児循環器科医が成人になっても先天性心疾患の患者さん診療を続けてきました。しかし、小児科医が成人患者さんの診療を続けることは様々な問題が生じるようになりました。

※根治手術=手術をしてしまえばその後は何も問題はなく、先天性心疾患を持たない人と全く同様の生活を送れて寿命も同じ。

そのため、先天性心疾患患者さんが小児科から循環器内科へ診療体制を移す「移行期医療」が行われるようになりました。

 

移行期・成人先天性心疾患外来

当院でも、これまでは小児循環器科医が成人になった先天性心疾患の患者さんの診療を継続して行なってきましたが、前述のような様々な問題に直面するようになってきたことも事実です。そのため、当院では2018年11月より「移行期・成人先天性心疾患外来」を開設し、本格的な移行期医療・成人先天性心疾患診療を開始しました。当科・小児循環器科・心臓血管外科が互いに連携し、成人患者さんのみならず、これから成人を迎える先天性心疾患の患者さんにもシームレスな最善の医療を提供することを目的としています。

 

移行期・成人先天性心疾患外来では心房中隔欠損症などの単純先天性心疾患(Simple CHD)からファロー四徴症などの中等度先天性心疾患(Moderate CHD)、単心室・Fontan手術後のような複雑先天性心疾患(Complex CHD)に至るまで、全ての成人先天性心疾患の診療を行なっています。

小児期に手術を受けた先天性心疾患患者さんは、術後数十年が経過した成人期に不整脈や弁膜症、心不全などの遠隔期合併症が出現し治療が必要なことがあります。ホルター心電図、心エコー検査、心臓CT検査、心臓MRIなどの外来検査による評価を行い、必要に応じて小児循環器科と共同で心臓カテーテルによる入院検査も行なっています。

 

また、心房中隔欠損症(ASD)や動脈管開存症(PDA)などの先天性心疾患に対するカテーテル治療(構造的心疾患インターベンション)も小児循環器科と協力し積極的に行なっています。特にASDに関しては、成人先天性心疾患の中で最も頻度が高いとされており、愛媛大学病院では2010年4月よりASDに対するカテーテル閉鎖術を開始し、2019年3月までに16歳以上の症例では約80例に施行しています。

ASDやPDAに対するカテーテル閉鎖術は愛媛県内では愛媛大学病院のみが実施可能施設となっています。

(写真) 経食道心臓超音波検査で左房と右房間に心房中隔欠損とそこを通過する血流(シャント)を確認

 

 

 

 

 

 

 

(写真)ASD閉鎖デバイスを用いたカテーテル治療

 

 

 

 

 

 

 

(写真)欠損孔の閉鎖を確認

 

 

 

 

 

 

 

頻脈性不整脈や徐脈性不整脈などの不整脈に対しては不整脈チームと連携し、カテーテルアブレーション治療やペースメーカー植え込み術、植え込み型除細動器植え込み術などを行なっています。

また、成人先天性心疾患の患者さんの中でも、心臓のポンプ機能が低下し心不全の状態となってしまった患者さんに対する心臓再同期療法(CRT)も行なっています。

 

成人先天性心疾患の患者さんは、妊娠・出産、生活習慣病、就職・社会生活病など、心疾患のみならす成人期特有の問題点にも遭遇します。成人先天性心疾患の患者さんが適切な医療を受けることができるように、必要に応じて他科(内科、産婦人科、麻酔科、精神科など)との診療連携を行なっています。

将来的には、循環器内科医が中心となり、小児循環器科・心臓血管外科とチームを形成し、他科との診療体制を構築することで「成人先天性心疾患センター」の開設に向けて取り組んでいきたいと考えています。

また、今後各都道府県に設置される予定である「移行期医療支援センター」と連携し、成人先天性心疾患患者の患者さんが円滑な社会生活を送ることができるように社会面からのサポートできればと考えています。

日本成人先天性心疾患学会専門医制度

当院は2019年度4月より開始される、日本成人先天性心疾患学会専門医制度の認定専門医修練施設に認定されました。これにより、成人先天性心疾患専門医(現在は暫定専門医、2021年に試験実施予定)となるための研修が可能となりました。また、専門医研修だけでなく地域の成人先天性心疾患診療の基幹病院としての役割を果たし、地域の病院・開業医の先生方と連携することで、より多くの成人先天性心疾患の患者さんの診療を行うことが可能となります。      

(文責  赤澤 祐介)

 

  • 受診のご案内

移行期・成人先天性心疾患外来

赤澤祐介(循環器内科)/檜垣高史(小児科)
毎週月曜・木曜午前

TEL:089-960-5322(総合診療サポートセンター)
上記の総合診療サポートセンターに電話し予約をお願いします。

完全予約制となります。原則、紹介状が必要です。

 

(写真)小児循環器科・心臓血管外科との合同カンファレンス

 

 

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