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木下将城先生の論文がアクセプトされました

2020年08月10日
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木下将城先生の論文(学位論文)がEuropean Society of Cardiology (ESC) Heart Failureにアクセプトされました。

Impact of right ventricular contractile reserve during low-load exercise on exercise capacity in heart failure

Masaki Kinoshita, Katsuji Inoue, Haruhiko Higashi, Yusuke Akazawa, Yasuhiro Sasaki, Akira Fujii, Teruyoshi Uetani, Shinji Inaba, Jun Aono, Takayuki Nagai, Kazuhisa Nishimura, Shuntaro Ikeda, Osamu Yamaguchi

心肺運動負荷試験(CPX: cardiopulmonary exercise test)は心不全症例の運動耐容能評価に有用であり、最大酸素摂取量(VO2)が14 ml/kg/minを下回る症例では予後不良であることが報告されています。本論文は運動耐容能が低下した症例でも施行可能な低強度運動負荷心エコー法(Low-load exercise stress echocardiography)を提案し、運動耐容能不良例(VO2<14 ml/kg/min)の予測に右心機能が重要であることを示しております。

心不全例では運動時に左心系機能低下により左房圧→肺動脈圧が上昇し、右室にとっては後負荷が増加することになります。後負荷増加に対して右室収縮能が対応できない症例では、心拍出量の低下→運動耐容能低下に繋がると考えられました。このような後負荷不整合の状態は右室-肺動脈アンカップリング現象と報告されています(Guazzi M, Borlaug BA. Circulation 2012)。

心エコー検査による右室機能評価指標として三尖弁輪収縮移動距離(TAPSE: tricuspid annular plane systolic excursion)、右室収縮期ピーク速度(RV s’ velocity)、右室ストレイン(RV strain)があります。右室は主に長軸方向の心筋ファイバーで構築されているため、これらの長軸方向のエコー指標が有用です。本論文ではその中でRV s’ velocityが簡便で再現性の良い右室機能指標で、低強度運動負荷心エコーの臨床応用が期待されると述べております。

本論文は大学院生である木下先生が実際にCPX、運動負荷心エコーを行い、データ解析し、論文作成を行いました。多くの苦労を乗り越えて論文のアクセプトに至った経験は今後の大きな糧になることと思います。今後の活躍を期待しております。

文責 井上勝次