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抄読会要約まとめのご報告(第三回目)
 

お知らせ

第三内科で行われた抄読会の内容要約を週1回、同門メールにて現在までお知らせしてまいりました。第三内科ホームページ上でも抄読会内容を確認したいという希望がありましたので、定期的に今後更新してまいります。

第三回目報告をさせていただきます。

[過去抄読会要約のURLリンク]

平成23年 5月

       6月

抄読者 山本安則
論文名 Proton pump inhibitors and histamine-2 receptor antagonists are associated with hip fractures among at-risk patients
著者 CORLEY DA,et al.
reference Gastroenterology.2010;139:93-101
サマリー
【背景と目的】 胃酸分泌を抑制すると食物中のカルシウムの吸収が低下することが考えられ、その結果、大腿骨頚部骨折が増加する可能性が指摘されている。 従来からこの問題についてはいくつかの研究が行われていたが、その結果は一致していない。そのため、より長期間にわたる、より大規模な研究が必要と考えられ、本研究が行われた。

【方法】

 研究対象としては、330万人の会員を有するカリフォルニアの保険組合のデータベースを使用。このデータベースの中から33,752人の大腿骨頚部骨折例と、性別、年齢、組合員歴、組合員となった年、人種を一致させた130,471人の非骨折のコントロール例を選択し、これらの対象例の最長10年間のプロトンポンプ阻害薬(PPI)やH2ブロッカー(H2RA)の使用歴、そして骨折に関与しうる他因子について比較をするcase-control studyを行った。

【結果】

[患者背景]

 大腿骨頚部骨折を有する例は、女性(65.7%)、高齢(70歳以上69.4%)で多かった。2年間以上のPPI内服が4.6%、H2RA内服が2.6%であり、PPIを一度も内服なしが60.7%であった。一方、コントロール群は2年間以上のPPI内服が3.7%、H2RA内服が2.4%, PPIを一度も内服なしが65.1%と有意差はなかった。

[分析]

・2年間以上PPIを内服している例では、非内服例に比較して骨折を有するリスクが30%、

2年間以上H2RAを内服している例では18%高くなることが示された。

・PPIの内服を中止すると骨折発症リスクがOR1.30から使用中止2~3年後には1.09

まで低下した。

・PPIの投与量が大きいほど骨折の発症リスクは高かった

・ただし、以上のPPI使用に伴う骨折発症リスクの増加は、少なくとも1つ以上の骨折発症リスク(関節炎、糖尿病、腎疾患、ステロイド内服etc)を有する例にのみ観察された。

【結論】

 このような結果から本論文の著者らは、 研究方法がcase-control studyで、多くのバイアスを含みうる問題が残っているが、すでに大腿骨頚部骨折の発症リスクを有する例に胃酸分泌抑制を行うと骨折リスクが増加するかもしれないと結論付けている。

抄読者 小泉洋平
論文名 Percutaneous Image-guided Biopsy of the Spleen: Systematic Review and Meta-Analysis of the Complication Rate and Diagnostic Accuracy.
著者
reference Radiology 2011 Jun 21.
サマリー
【背景】 経皮的脾臓生検については、1980年台から報告がみられ始めているが、当初の報告では、14G前後の生検針を用いていたこともあり、出血などの合併症率が4~5割と高率であるという報告が多かった。近年、18G前後の生検針を用いて経皮的脾生検を行った場合には、安全に施行可能であったという報告が多くみられており、脾臓の経皮的針生検の合併症率と診断精度を検討するためのメタアナリシス。

【方法】

 2010年7月までに報告があった、18G以下の生検針を用いて脾臓生検を行った311編の報告から、研究の診断精度・合併症の評価方法が適切であるかどうかを2人のreviewerが評価し、基準をを満たす13編の報告を用いて検討を行った。その内4つの論文を用いて診断精度(639例の患者)について検討を行った。残り9つは合併症率(741例の患者)の検討を行った。

【結果】

 脾生検の感度は87.0%(95%信頼区間[CI]:80.7%(91.4%))、特異度96.4%(95%CI:81.4%(99.4%))であった。主要な合併症率は、2.2%(95%CI:0.8%(5.6%))であった。合併症は、痛みと出血が最も多くみられた。

【結論】

 エコーガイド下の経皮的脾生検は高い診断精度を示し、18G以下の生検針で施行した場合の合併症率は、経皮的肝生検や経皮的腎生検の合併症率とほぼ同等であった。経皮的脾生検は、脾臓摘出術と比較して低侵襲であり、有用な方法である。

抄読者 渡辺崇夫
論文名 Coffee Consumption is Associated With Response to Peginterferon and Ribavirin Therapy in Patients With Chronic Hepatitis C
著者 Neal D. Freedman; Teresa M. Curto; Karen L. Lindsay; Elizabeth C. Wright,; Rashmi Sinha; James E. Everhart
reference Gastroenterology 2011; 140: 1961-1969
サマリー
 コーヒーの摂取がAST、ALTの低下、γ-GTPの低下やC型慢性肝炎の進展を遅らせたり、発癌を抑制する効果があるという報告が散見される。 そこで筆者らはHALT-C studyに参加した再治療としてPegIFN+RBV併用療法を施行された885例において治療前、治療中におけるコーヒーの1日摂取量を調査し、それと治療によるHCVの減少、治療効果との関係を検討した。

 結果として、1日3杯以上のコーヒーを摂取している人は、まったく摂取していない例に比べてEVR、治療開始20Wのウイルス低下、end of treatment response、SVRともに優位に良い結果であった。

抄読者 畔元信明
論文名 A step-up approach or open necrosectomy for necrotizing pancreatitis.
著者 Hjalmar C ら
reference N ENGL J MED 2010; 362: 1491-502
サマリー
【背景】 感染性膵壊死は重篤な合併症の率や死亡率が高い。一般的な治療としては外科的なopen necrosectomyが行われているが、最近ではstep-up approachと呼ばれる最初に経皮的もしくは経胃的にドレナージを行い、ルートを作った後、改善がないようなら同部位を拡張し、内視鏡を用いて直接necrosectomyを行う方法が報告されている。しかしながら、どれも少数での報告で、まとまった報告はない。この論文は外科的なopen necrosectomyとstep-up approachを比較検討した初めての論文である。

【方法】

 この研究はmulticenter studyで、prospectiveな検討である。88名の感染性膵壊死の患者をrandomに45名のopen necrosectomy群と43名のstep-up approach群の2群に分類した。

【結果】

 Step-up approach群において、有意に重篤な合併症または死亡が少なかった。また、処置後の多臓器不全、ヘルニア、糖尿病の新規出現についてもstep-up approach群において有意に少なく、1人の患者につき、約12%のコスト削減につながったとしている。

【考察、結論】

 今回の検討では様々な点で、step-up approach法が外科的なopen necrosectomyに勝っており、治療法の選択肢として有用であることが示された。

抄読者 上杉 和寛
論文名 Block of proliferation 1 (BOP1) plays an oncogenic role in hepatocellular carcinoma by promoting epithelial-to-mesenchymal transition.
著者 Chung KY(Department of Anatomical and Cellular Pathology, Li Ka-Shing Institute of Health Sciences, Hong Kong, China)
reference 2011.7 Hepatology
サマリー
【要約】 大腸癌の腫瘍形成に関わる遺伝子としても報告されているBlock of proliferation 1遺伝子について著者らは、HCCで解析を行った。HCC症例68例中84.6%で非癌部と比較して癌部でBOP1が高発現しており、HCC staging、血管浸潤、無再発生存率と関連があった。In vitroの検討ではinvasion、migrationと関連があり、EMT(上皮間葉移行)の誘導を確認した。

【結論】

 BOP1は肝細胞癌でEMTを誘導し癌の浸潤、転移に関与する。

抄読者 小泉光仁
論文名 Cyst Fluid Interleukin-1b (IL1b) Levels Predict the Risk of Carcinoma in Intraductal Papillary Mucinous Neoplasms of the Pancreas
著者 Ajay V. Maker, et al.
reference Clin Cancer Res 2011;17:1502-1508. Published OnlineFirst January 25, 2011.
サマリー
【背景】

 IPMN (intraductal papillary mucinaous neoplasm)は近年画像検査の進歩によりと発見される症例が増えており、low grade dysplasiaから浸潤癌まで悪性度はさまざまである。そのため術前の悪性度の予測が手術適応の判断に重要であるが、画像検査のみで悪性度の評価は困難な状況にある。本研究ではのう胞液のサイトカインが、腫瘍の悪性度の指標となり得るかを検討した。

【方法】

 IPMN40症例、low-risk群(low-grade and moderate dysplasia)21症例、high-risk群(high-grade dysplasia and invasive carcinoma)19症例で検討をおこなった。のう胞液はのう胞切除後に穿刺、吸引しELISA法にてサイトカインを測定した。

【結果】

 のう胞液中のIL-1β濃度がhigh-risk群でlow-risk群と比較し有意に上昇していた(539±255 pg/mL vs. 0.2±0.1 pg/mL; P < 0.0001)。EUS-FNAによって得られたのう胞液(24症例)を検討したところ同様の結果が得られた。

【結論】

 のう胞液中のIL-1β濃度を計測することで術前にIPMNの悪性度を予測することができ、手術適応を決める際に有用となるだろう。

抄読者 森健一郎
論文名 Bleeding after percutaneous endoscopic gastrostomy is linked to serotonin reuptake inhibitors,not aspirin or clopidogrel
著者 Richter JA, Patrie JT, Richter RP, Henry ZH, Pop GH, Regan KA, Peura DA, Sawyer RG, Northup PG, Wang AY.
reference Gastrointestinal endoscopy Volume74,No.1:2011
サマリー
【背景及び目的】 内視鏡的胃瘻造設術(PEG)は浸襲的な処置であり、PEG後の出血は一般的に2.5%と言われている。SRI(パキシルなど、SSRI+SNRI)は副作用が少ない点などから頻用されているが、以前から SRIは消化管出血のリスクと関係があることはいくつかの論文で言われていた。今回の論文ではPEG前後のアスピリン、プラビックス、SRI内服とその後の出血との関係を明らかにすることを目的とした。

【方法】

 バージニア大学病院で1999年~2009年までの10年間でPEGが施行された、平均年齢69.8歳の990人を対象とし、後ろ向きコホート研究を行った。PEGの方法としてはpush法、pull法が用いられた。

【結果】

 合計990人中、28人、2.8%で処置後2週間までに出血(吐下血、ヘモグロビンが2以上低下、輸血が必要だったもの、原因としては胃潰瘍、増設部からの出血など)があり、多変量解析の結果、処置前後のアスピリン(容量も含めて)やプラビックス内服と出血との関係はなかったが、SRIの処置前24時間までの内服は(それより以前では有意差なし)処置後の出血の相対危険度が4.07倍(特に塩酸セルトラリン、商品名はゾロフトでは8.35倍)と明らかに高かった。併用については、アスピリンとの併用では7.11倍とリスクはさらに上昇したが、NSAISsやプラビックスとの併用では差はなかった。また、処置前後のPPIやH2ブロッカーの内服の有無では差はなかったとしている。

【結論】

 PEG前24時間以内のSRIの内服は出血のリスクと関係していており休薬により処置後出血のリスクが軽減される可能性がある。

抄読者 上田 晃久
論文名 Serum Selenoprotein P Levels in Patients with Type 2 Diabetes and Prediabetes: Implications for Insulin Resistance, Inflammation, and Atherosclerosis.
著者 Yang SJ, Hwang SY, Choi HY, Yoo HJ, Seo JA, Kim SG, Kim NH, Baik SH, Choi DS, Choi KM.
reference J Clin Endocrinol Metab. 2011 Jun 15. [Epub ahead of print]
サマリー
ヘパトカインの異常は、インスリン抵抗性や2型糖尿病に関連する可能性がある。最近の研究では、ヘパトカインの一つであるセレノプロテインPが糖代謝・インスリン感受性の抑制に重要な役割をもつことが示唆されている。この論文ではセレノプロテインPとインスリン抵抗性マーカーの関連性について検討している。

【方法】

糖代謝異常をもつ100人(NGT20人、境界型40人、2型糖尿病40人)を対象にセレノプロテインPを比較した。さらにセレノプロテインPと心血管イベント要因(インスリン抵抗性、高感度CRP、IMT)の関連性も評価した。

【結果】

セレノプロテインPは有意に2型糖尿病症例において他に比べ高かった(DM:preDM:NGT 1032:867:362)。また肥満症例での比較では、BMI23以上と未満で比較すると肥満症例のほうがセレノプロテインPは高かった。また性別・年齢調整した解析では、心血管代謝因子であるBMI・腹囲・収縮期血圧・TG・血糖・HbA1c・ALT・インスリン抵抗性とセレノプロテインPとの関連性が見られた。またセレノプロテインPは高感度CRPと同様にIMTとの独立した関連性が見られた。

【結論】

セレノプロテインPは、糖代謝異常者で上昇し、インスリン抵抗性・炎症・動脈硬化に関連性がみられた。

抄読者 布井 弘明
論文名 Abdominal visceral adipose tissue volume is associated with increased risk of erosive esophagitis in men and women
著者 Su Youn Nam,Il Ju Chi,Kum Hei Ryu,Bum Joon Park,Hyun Bum Kim,andByung-Ho Nam
reference Gastroenterology 2010;139:1902-1911
サマリー
【背景】

これまで逆流性食道炎と肥満の関係をみたデータは、その手法や肥満の各種指標が様々であり、その見解が一致しない。

【方法】

2008年2月~11月の期間に登録された5329人のうち微小変化型GERD(LA gradeM)1055人を除いた4274人を対象に、内臓脂肪量と肥満の指標として使用される各身体計測項目と逆流性食道炎の関連を検討した前向きコホート研究である。(逆流性食道炎はLA gradeAが75.4%,Bが23.2%,Cが1.4%と軽症が殆どであった。)

【結果】

単変量解析では、BMI、内臓脂肪量、WHR、腹囲と逆流性食道炎の相関がみられたが、皮下脂肪量との相関はみられなかった。多変量解析では、BMI、腹囲、WHRとの相関はみられなくなったが、内臓脂肪量との相関がみられた。多変量解析では他に喫煙、男性、食道裂孔ヘルニアが逆流性食道炎の独立したリスク因子で、逆にHP感染、委縮性胃炎の存在は逆相関していた。性別を分けて検討すると、男性ではBMI、WHR、腹囲、皮下脂肪の増加に伴って逆流性食道炎が増加していたが、女性ではその傾向はみられず、内臓脂肪量の増加のみが、男女とも逆流性食道炎の増加と相関がみられた。また、内臓脂肪量が逆流性食道炎の重症度とも相関していた。

【結論】

男女とも内臓脂肪量は逆流性食道炎リスクの増加と関連していた。

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消化器・内分泌・代謝内科学
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