済生会松山病院の八木先生と総合健康センターの古川先生がまとめていました潰瘍性大腸炎におけるAGR(アルブミングロブリン比)と粘膜治癒との関連性に関する論文が韓国大腸肛門学会雑誌 Annals of coloproctology(IF 1.13)にアクセプトされました。
AGRは慢性炎症のマーカーとして、がん、サルコイドーシスなどの自己免疫性疾患、心不全、脳卒中の予後との関連が報告されています。しかし、炎症性腸疾患である潰瘍性大腸炎における意義は不明でした。
そこで、愛媛潰瘍性大腸炎研究のベースラインデータを用いて、潰瘍性大腸炎患者におけるAGRと臨床アウトカムとの関連性を横断的に解析しました。CRPは代表的な炎症マーカーですが、内視鏡所見や粘膜治癒と一致しないことが指摘されています。そこで加えて、CRPを層別化してAGRと臨床アウトカムとの関連性を解析しました。
AGRは臨床的寛解、粘膜治癒(MES0)との間に正の関連性があり交絡因子で補正後でも有意でした。とくにCRPが低い0.1mg/dl以下での症例群ではAGRは臨床的寛解とは関連性は消失しましたが粘膜治癒との正の関連性がありました。一方でCRPが高い症例群ではいずれのアウトカムとも関連性はありませんでした。
アルブミン、グロブリンともに簡便でかつ迅速測定が可能であり、その測定コストや利便性から日常臨床においても活用可能です。AGRは潰瘍性大腸炎において、臨床的寛解や粘膜治癒と正の関連性があり、CRPが低い症例群では粘膜治癒の補助的血清マーカーとなりえる可能性が示唆されました。