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田中良憲先生の膵臓がんとABO血液型の長期予後に関する学位論文がInternal Medicineに掲載されました
 

お知らせ

この度、社会人大学院生田中良憲先生(松山市民病院消化器科部長)の膵臓がんとABO血液型の長期予後に関する学位論文が、日本内科学会の英文誌Internal Medicineに掲載されました。

 

論文名:ABO blood type and long-term outcomes of pancreatic cancer

著者:Tanaka Y, Kumagi T, Terao T, Kuroda T, Yokota T, Azemoto N, Imamura Y, Uesugi K, Kisaka Y, Shibata N, Koizumi M, Ohno Y, Kanemitsu K, Yukimoto A, Tange K, Nishiyama M, Miyake T, Miyata H, Ishii H, Abe M, Hiasa Y; on behalf of the Ehime Pancreato-Cholangiology (EPOCH) Study Group.

掲載誌:Internal Medicine 2020: 59; 761-768.

リンク:https://www.jstage.jst.go.jp/article/internalmedicine/59/6/59_3748-19/_article/-char/en

 

 

【要旨】

膵癌は最も予後不良な癌種の一つであり、本邦での5年生存率は男女ともに7-8%程度である。また、本邦における膵癌の罹患率と死亡率は増加しており、それぞれ7位と4位である。リスク因子として遺伝性膵癌や家族性膵癌が明らかとなっているが、その患者数は少ない。一方、大半を占める孤立性膵癌は、遺伝的要因に関する報告があるものの、糖尿病や肥満、喫煙、飲酒などの他のリスク因子含めた危険群の囲い込みによる早期診断ができていないのが現状である。

これまでに膵癌や胃癌などの癌種では、遺伝的要因に関与しているABO血液型と発症リスク因子に関する研究が行われ、ABO血液型の長期的な臨床経過に対する影響も膵癌、腎細胞癌、非小細胞肺癌などで報告されている。西欧諸国からの膵癌に関する研究では、O型が非O型と比較して膵癌切除後の生存率が有意に良好であるという報告がある。一方、中国からの研究ではO型に比べてA型で膵癌の発症リスクが高いとの報告があるが、長期予後に関してO型が非O型と比較した検討では差はなかった。ABO血液型と膵癌の長期予後に関してはまだ一定の見解が得られておらず、特に日本人における膵癌患者の臨床経過、長期予後にABO血液型が及ぼす影響については不明である。

愛媛大学医学部附属病院第三内科と関連病院では、Ehime Pancreato-Cholangiology(EPOCH)Study Groupを組織し、愛媛県内多施設において膵癌と診断された患者を対象として後ろ向きに集計を行って来た。そして、これまでにゲムシタビン時代における膵癌の長期予後の改善(BMC Gastroenterology 2013;13:134.)および非切除膵癌高齢症例への化学療法の効果(BMC Gastroenterol 2017;17:66)、慢性肝疾患患者が受ける肝細胞癌サーベイランスが膵癌早期診断に及ぼす影響(Mayo Clin Proc 2019;94:2004-10)に関して報告してきた。本研究では、ABO血液型が日本人膵癌患者の臨床経過、特にこれまで本邦での報告のない長期予後に及ぼす影響について明らかにすることを目的に検討および解析を行った。

EPOCH Study Groupで診断された膵癌患者406名の年齢、性別、ABO血液型、UICCステージ、転帰などを収集して検討を行った。その結果、年齢、性別、BMIを調整した多変量解析においてA allelesを有することが予後不良因子であることが明らかになった。A alleles およびnon A alleles を比較したKaplan-Meier生存曲線では、やはりA allelesが予後不良であった。しかしながら、興味深いことに治療法別の解析では、その特徴は手術症例のみで確認され、非切除症例(化学療法や緩和ケア)では差はなかった。

膵癌術後に肝転移の多いことを鑑みると、本研究によりA allelesが腫瘍浸潤や遠隔転移に関与している可能性が示唆され、基礎的検討を含めたさらなる検討が必要である。

 

【田中先生からのコメント】

平成27年度から日浅教授、熊木先生からの勧めもあり社会人大学院生として臨床研究にさせて頂いておりました。この度、学位論文がacceptされ、卒業のめどが立ちましたので報告させて頂きます。

私自身は研修医時代に研究をされている先生方が苦労されているところをみて、自分には無理だろうと考え大学院進学は全く考えておりませんでした。ずっと臨床をしていた40歳半ばに、熊木先生より社会人大学院のお話を頂き、いろいろ考えた末に入学させて頂きました。

入学後まず驚いたことは、学位審査が英語で行われ、30分間の英語プレゼンテーション、30分間の質疑応答に堪えなければならないもということでした。英語など全く自信がなく、来ては行けないところに来てしまったと後悔したことを覚えております。ただ、大学卒業以来20年ぶりの講義や実験は有意義でした。また、臨床研究では統計ソフトには悪戦苦闘させられましたが、何とか最低限ではありますが使えるようになりました。ウィーンで行われたUEG(United European Gastroenterology)Week 2018への参加も良い思い出です。

学位論文を仕上げる最終段階では大学に頻回に通う必要があり・・・勤務している松山市民病院の先生方にいろいろ助けて頂きました。自信がなかった学位審査の英語プレゼンテーションも熊木先生に助けて頂き・・・クリアできました。

大学院での研究は、臨床だけではできない多くことを経験させて頂きました。今から考えると若いうちに研究を一度しておくべきだったと思います。若い先生方には早めに・・・大学院での研究をお勧めします。

最後に私が研究するにあたり御指導いただいた日浅先生、熊木先生、第三内科の技官さん方、研究室でいろいろ教えていただいた大学の先生方、手続きなどで大変お世話になりました医局の秘書さん、皆様ありがとうございました。また、勤務していた松山市民病院の水上先生をはじめとする先生方には度々病院を不在にして申し訳ありませんでした。

今回の経験を今後の診療、後進の育成に一層役立てられる様、精進したいと思います。

 

【熊木先生からのコメント】

市中病院勤務でお忙しい大ベテランの田中先生には、これまでもEPOCH Study Groupの一員として臨床研究に協力して頂いておりました。そして、若手大学院生が次々とプロジェクトを進めていく中、やはり医師人生で一度は研究、本格的な学会発表や論文作成に関わりたいと仰られ、私が指導医として一緒にタグを組むことになりました。

 

エクセルシートとの闘い。

日本語で書き始めた原稿。

スタバで終日2人で議論。

ウィーンでの3人相部屋。

 

どれもこれも懐かしく思い出されます。

私にとっても非常に貴重な経験でした。

なぜならば田中先生は先輩だからです。

 

田中先生が仰られていた事が印象的です。

研修医や若手医師に言うようにしてるよ。

 

やっぱり研究は頭の回転が速く、元気な若いうちから始めるべきだね。

大変だけど楽しいし、何と言っても、物事の考え方、見方が変わるよ。

 

まさか自分がこんな発言するなんて思ってもなかったな。

でも……視力低下は応えたなぁ。

 

何はともあれ、田中先生おめでとうございます。

そして、引き続きどうぞよろしくお願いします。

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