消化管グループ 山本安則先生の論文が Endoscopy (E-Videos section) にアクセプトされました。
2025年4月22日 8:37 PM
消化管グループ 山本安則先生が、先進消化器内視鏡開発学講座 森宏仁先生の指導の下でまとめられた、胃ESD(内視鏡的粘膜下層剥離術)後の人工潰瘍に対する新しい縫合閉鎖法に関する論文が、Endoscopy E-Videosにアクセプトされました。
論文名: Novel combination closure of an artificial ulcer after gastric endoscopic submucosal dissection using double-arm-bar suturing system and anchor prong clip
以下、山本安則先生からのコメントです。
本論文では、早期胃癌などに対する内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)の後に生じる粘膜欠損(人工潰瘍)を閉鎖するための、新しい縫縮法について報告いたしました。
ESDは低侵襲な治療法ですが、術後の出血、特に抗血栓療法を行っている患者さんにおける遅発性出血が課題の一つです。術後の潰瘍を縫合閉鎖することで出血リスクの低減が期待できますが、胃壁は厚いため、内視鏡を用いた縫合は容易ではありませんでした。
そこで私たちは、既存の縫合デバイスである「ダブルアームバー縫合システム(Zeosuture M, Zeon Medical Co., Tokyo, Japan)」と、強力な把持力を持つ新しいクリップである「アンカープロングクリップ(MANTIS Clip; Boston Scientific, Marlborough, Massachusetts, USA)」を組み合わせる方法を考案しました。この併用により、精密な縫合と粘膜下の死腔を最小限に抑えた縫合閉鎖ができるのではないかと考え、その有効性を報告しました。
実際に、抗血小板薬を2剤服用中の患者さんにご協力いただき本手技を行った結果、良好な潰瘍閉鎖が得られ、術後の出血といった合併症も認められませんでした。この結果から、本併用閉鎖法は、胃ESD後の偶発症を予防し、特に高リスク患者さんの入院期間の短縮や後出血の抑制に有用である可能性が示唆されました。
現在、本手技の有効性と安全性をさらに検証するため、多施設共同での臨床試験(RCT)も開始しており症例を集積中です。より多くのデータに基づき、本法の確立を目指して参ります。
本研究の遂行にあたり、愛媛労災病院勤務中にご尽力いただきました岡田正也先生、神田 正敏先生、ご指導を賜りました森宏仁先生、日浅陽一教授に心より深謝申し上げます。また、日頃よりサポートいただいている消化管グループの先生方に厚く御礼申し上げます。
今後ともご指導のほど何卒よろしくお願い申し上げます。