先進消化器内視鏡開発学講座 森宏仁教授が開発された**「チャンネルスムーサーM:CSM」**が、ORTメディカル株式会社より発売されることとなりました。
森教授より、製品の特徴および開発に込められた想いについてコメントをいただきましたので、ご紹介いたします。
【森宏仁教授よりコメント】
軟性内視鏡を用いた検査や治療では、鉗子チャンネルを通じて様々なデバイスを出し入れします。
しかし、デバイス径と内視鏡ワーキング鉗子チャネル径との間隙は非常に狭く、デバイス挿入時に強い抵抗が生じます。ワーキングチャネルと鉗子の強い摩擦力は、以下の点で、内視鏡医のパフォーマンスの低下や内視鏡の鉗子チャネルの損傷などを引き起こします。
①ワーキングチャネルと鉗子の強い摩擦力は、デバイスを挿入する内視鏡医にストレスを感じさせる。特に、内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)等の高度な技術と長時間を要する内視鏡治療では、デバイス鉗子のチャネルを通した出し入れは多数回におよび、内視鏡医のパフォーマンスの低下にも影響する可能性がある。
②ESDでは、微細な電気メスの操作が必要とされ、ワーキングチャネルと鉗子の強い摩擦によりデバイスのスムーズな操作に制限が生じ、穿孔などのリスクを高めてしまう可能性がある。
このような課題を解決するため、私たちは内視鏡鉗子チャネルとデバイスの間に持続的かつ自動的に潤滑剤を塗布できる装置を発案し、開発を進めてまいりました。
その結果誕生したのが、潤滑剤持続塗布デバイス「Channel Smoother M(CSM)」(ORT Medical Co., Tokyo, Japan)です。
本デバイスは特許を取得し、製品化に至りました。
本製品が内視鏡医の皆様の操作性向上と、より安全で効率的な内視鏡診療の一助となれば幸甚です。
「Channel Smoother M(CSM)」は、JDDW 2025を機に発売予定です。

先進消化器内視鏡開発学講座、森宏仁教授の2つの研究成果が消化器内視鏡、Endoscopyにアクセプトされました!
森先生より論文のコメントをいただきましたのでHPで紹介させていただきます。
①「内視鏡用・全層縫合器ゼオスーチャーM®による消化管縫合法及び臨床導入の実際」
消化器内視鏡 特集号 「動画で魅せる内視鏡的創閉鎖法のすべて」 2025,37巻8号 東京医学社
(論文の要旨)
軟性内視鏡を用いたNatural Orifice Translumenal Endoscopic Surgery(NOTES)は,体表面に術創のない低侵襲手術として注目されたが、軟性内視鏡用の縫合機器の開発は進まず、次第に実現の難しい治療法と思われた。しかしNOTESの中でもESDの延長線上に位置し消化管壁の腫瘍を全層切除するEndoscopic Full- Thickness Resection(EFTR)は、軟性内視鏡用全層縫合器や既存クリップと外科縫合糸との組み合わせなどで切除面を縫合することで縫合の問題を解決し、現在本邦では、消化器内視鏡医がこの手術を施行している。本稿では、これまでにゼオンメディカル社と開発してきた消化管用・全層縫合器ゼオスーチャーM®の基本縫合動作とコツにつき分かりやすく解説し、ゼオスーチャーM®が適する臨床応用の実際につき述べた。
② Hirohito Mori, et al.
Endoscopic closure after endoscopic submucosal dissection using novel hooking attachment with knotting chain shaped thread system. Endoscopy, accept in press
(論文の要旨)
胃癌に対するendoscopic submucosal dissection (ESD) 後の出血などの予防に、人工潰瘍底の閉鎖の報告は多い。内視鏡専用の縫合器を用いた報告もある。しかしながら、昨今の経済状況からは、大型の縫合器の開発や改善には多額のコストがかかるため、既存の糸やクリップを用いた汎用性の高い方法でありながら、なおかつ斬新な人工潰瘍底の閉鎖方法である第2世代の縫合器開発がいぞがれている。我々は、HAWKS: hooking attachment with knotting chain shaped thread system縫合を発案・特許化・プロトタイプ作成し、臨床導入で確実な縫合を評価し報告した。
森先生おめでとうございました!
愛媛県立中央病院の消化管グループが、Gastroenterology (IF: 2.6)へ投稿した、「潰瘍性大腸炎患者における非貧血性鉄欠乏症の関連因子」に関する論文がアクセプトされました。
「rising star」のS氏より、これからも頑張ります!とのコメント付きで論文の要旨をいただきましたので掲載させていただきます。
下記要旨です。
Factors associated with ulcerative colitis with non-anemic iron deficiency
非貧血性鉄欠乏症(Non-anemic iron deficiency: non-anemic ID)はQOLに悪影響を及ぼすことが報告されていますが,過小評価され見落とされている可能性があると考えました.そこでUC患者におけるNon-anemic IDの有病率に関連する因子を検討しました.2021年から2023年の間に愛媛県立中央病院で大腸内視鏡検査と同時にフェリチンを測定した貧血のないUC患者112人を対象とし,Non-anemic ID群(n=38)とNormal iron states群(n=74)に分けて患者背景や疾患活動性について比較検討しました.多変量解析を行ったところ,非粘膜治癒(OR 24.40、95%CI 4.16-143.00、p<0.001)および女性(OR 20.60、95%CI 3.71-115.00、p<0.001)がNon-anemic IDと独立して関連していました.非粘膜治癒,女性であることはUC患者におけるNon-anemic IDの有病率と独立して関連する因子でした.内視鏡的粘膜治癒が得られていない症例では有意にNon-anemic IDの有病率が高かったことから,Treat to Targetとして内視鏡的粘膜治癒が達成していない場合,鉄動態のモニタリングがNon-anemic IDの早期発見につながる可能性があると考えています.


おめでとうございました!
肝臓グループの廣岡昌史先生が第32回日本門脈圧亢進症学会総会において、第2回國分賞を受賞されました!
以下の通り、廣岡先生よりコメントをいただきました。
第32回日本門脈圧亢進症学会総会において、第2回國分賞を受賞し、受賞講演を行いました。
國分賞は、第六代國分茂博理事長のご寄付を原資に設けられた賞であり、総会における若手発表者への優れた直接指導や、学術集会での顕著な活躍を通じて本学会の学術研究を推進し、将来的に本領域のリーダーとして社会への啓蒙と貢献が期待される学会員(55歳未満、海外研究者はこの限りではありません)に授与されます。
このたび、このような栄えある賞を賜り、誠に光栄に存じます。
今後も本学会を通じて門脈圧亢進症の診断・治療の進歩に微力ながら貢献するとともに、本賞の趣旨に沿って後進の指導にも力を尽くしてまいります。
この度は誠にありがとうございました。

廣岡先生、栄誉ある賞の受賞、誠におめでとうございます。
愛媛県立中央病院 IBDセンターの論文が Inflammatory Bowel Diseases (IF:4.3)にアクセプトされました.
以下,first author Sからのコメントです.
愛媛県立中央病院 IBDセンターが投稿しておりました,Geboes scoreでミリキズマブの治療効果を予測する論文” Mirikizumab Efficacy in Ulcerative Colitis: Association With Pretreatment Geboes Score Features in a Case Series”が
Inflammatory Bowel Diseases (IF:4.3)にアクセプトされました.
潰瘍性大腸炎の新規治療薬であるミリキズマブ(オンボー)はTh17細胞の分化に不可欠なサイトカインを標的とするIL-23阻害薬です.潰瘍性大腸炎の病理スコアであるGeboes scoreのGrade 3(上皮への好中球浸潤)はTh17細胞が産生するIL-17によって誘導されます.そのためミリキズマブなどの生物学的製剤の有効性は組織学的所見と密接に関連している可能性があります.今回,活動期の潰瘍性大腸炎患者における治療前のGeboes scoreとミリキズマブの有効性との関連性を調査しました.2023年7月から2024年12月の間に,愛媛県立中央病院で臨床症状がある潰瘍性大腸炎患者に対してミリキズマブを投与した10例を対象とし,導入前のCSで得られたGeboes scoreとミリキズマブ導入24週での治療効果を評価しております.
ミリキズマブ治療開始24週後,6例が完全奏効(臨床的寛解かつ粘膜治癒)を達成しました. 2例の患者は部分奏効を示し,2名は無反応のため治療を中止しました.完全奏効6例のうち5例は上皮への著明な好中球浸潤を示しておりGrade 3.3でした.一方,部分奏効2例はいずれもGrade 3.2以下でした.特筆すべきは,粘膜固有層への好酸球浸潤がほとんどなくGrade 2A.0であった患者は全員が効果不応でした.上皮への顕著な好中球浸潤は、Th17優位のサイトカインプロファイルを示唆している可能性があり,逆に,大腸炎におけるIL-23-顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子軸の重要な因子である好酸球が認められないことは,Th17の関与が限定的である可能性があります.
以上の結果から,治療導入前の組織学的所見によりMIRIの治療効果を予測できる可能性があると考えました.
本研究は愛媛県立中央病院の消化器内科診療に携わる先生方や医療スタッフのご協力によって行うことができました.深い感謝を申し上げます.

S先生面白い論文をありがとうございました。採択おめでとうございます!
肝臓グループの島本豊伎先生が、第62回日本消化器免疫学会総会にて奨励賞を受賞されました。
以下、島本先生より受賞にあたってのコメントをいただきましたの紹介させていただきます。
先日鹿児島にて行われた第62回日本消化器免疫学会総会にて奨励賞を受賞いたしました。
演題は「免疫抑制マウスへのHBs/HBc抗原の経鼻投与によるHBVに対する免疫応答の誘導」で、学位取得のため現在取り組んでいる実験データをまとめたものです。
我々が研究しているCVP-NASVACはB型肝炎の治療ワクチンであり、強い免疫誘導作用があることから、肝移植後の免疫抑制患者におけるHBV再活性化予防にも応用できる可能性があります。今回我々は免疫抑制マウスを用いた検討を行い、CVP-NASVACが免疫抑制下においても各種抗体を誘導し、HBVの増殖抑制に関わるHBc抗原特異的CTLが誘導されることを確認しました。また実際にCVP-NASVACによって得られた血清でのHBV中和活性も示されており、CVP-NASVACは免疫抑制中のHBV陽性患者に対しても有効である可能性があります。
今回発表にあたりご指導を賜りました日浅先生、吉田先生、肝臓グループの先生方、ならびに実験について様々なご助言・ご指導をいただいた白石先生、技官の皆様にこの場を借りて厚く御礼申し上げます。論文化や学位取得にはまだまだこれからですが、引き続きのご指導ご鞭撻のほどよろしくお願いいたします。

追伸:鹿児島は良い街でした。焼酎は絶品で(1杯250円で飲めます)、人生で一番おいしいロースカツを食べられました。1日1便ですが松山-鹿児島直通便もありますので、ぜひ一度お立ち寄りを。

愛媛大学大学院医学系研究科 先進消化器内視鏡開発学講座の森宏仁先生の論文が欧文論文(Endoscopy誌)にアクセプトされました。
森先生より論文の要旨を下記の通りいただきましたので、紹介させていただきます。
論文名
「Endoscopic resection of gastric cancer involving pylorus and duodenum using novel anchor ring-shaped thread counter traction」
ジャーナル:Endoscopy
論文要旨:胃癌に対するendoscopic submucosal dissection (ESD)は確立した治療法であるが、病変の位置によって難易度は異なる。特に幽門輪から十二指腸に拡がった病変は難易度が高く、十二指腸穿孔や幽門輪狭窄のリスクも高い。ESDでのトラクションの報告は多数あるが、簡便で内視鏡に干渉しない確実な新たなトラクション法としてアンカーリング糸カウンター法について論じた。
論文のPDFが完成いたしましたので、ご紹介申し上げます。

なお、今後オープンアクセスとして公開されました際には、ぜひご一読いただければ幸いです。
森先生、このたびは誠におめでとうございます。
6月21-22日に開催された日本消化器内視鏡学会四国支部例会において学生の寺町君が堂々と学会発表をおこなってくれました。寺町先生、お疲れ様でした。
指導にあたってくださった、石川将先生より以下のコメントをいただきましたので報告させていただきます。
6月21-22日に開催された日本消化器内視鏡学会四国支部例会に参加してきました。今回私は専攻医の森田先生、ポリクリ生の寺町君と一般演題で発表させて頂きました。
寺町君は5年生とは思えない堂々とした発表であり、質疑応答も素晴らしかったです。私は見守るだけでした。

森田先生の発表も素晴らしく、質問が次々に飛んでいましたが的確に返答されていて頼もしさを感じました。

当日はハンズオンセミナーも開催されており大腸内視鏡やERCPで使用する処置用スコープも体験することが出来、会場も盛況でした。

今後も実習で回ってきた学生さんや研修医の先生と継続的に発表出来ればと思います。発表や参加された先生方お疲れ様でした。
当科石川将先生の論文が、Nature and Science of Sleepに採択されました。
以下、石川先生よりいただいたコメントです。
この度、昨年末に初回投稿を行いました愛媛大学の学生健診データを基に作成した「痩せと睡眠時間に関する論文」がアクセプトされ、オンラインで掲載されましたので、御報告申し上げます。
以下、論文の要旨をご紹介させて頂きます。
本研究は、愛媛大学の学生12,496名を対象に睡眠時間とBMI(低体重および肥満)の関連を調査した横断研究です。解析の結果、睡眠時間は肥満の有病率とは有意に逆相関し、低体重の有病率とは有意に正相関することが明らかになりました。本研究は若年層において睡眠時間と低体重の関連を示した初の報告となります。これらの結果は、睡眠時間が若年者の体重管理および健康状態に深く関わっている可能性を示唆しており、今後の健康支援や予防医学において、適切な睡眠の確保が重要な要素であることを示しています。
こちらが、リンクです。
今後も引き続き、論文作成および研究活動を継続していきます。
何卒、今後ともご指導ご鞭撻のほど、よろしくお願い申し上げます。
盛田真先生の学位論文「Endoplasmic reticulum stress sensor protein PERK in hepatic stellate cells promotes the progression of hepatocellular carcinoma via p38δ MAPK/IL-1β axis」がScientific Reportsにアクセプトされました!おめでとうございます。
以下、盛田先生よりいただきましたコメントです。
本研究では、MASH肝細胞癌の腫瘍微小環境における肝星細胞の小胞体ストレスセンサーPERKの役割について検討いたしました。MASHにおいて腸管からの吸収が亢進しているパルミチン酸 (PA)を肝星細胞に添加し、小胞体ストレスを誘導したところ、PERKシグナルが活性化し、細胞増殖作用を有する炎症性サイトカインIL-1βの発現が増加しました。また、PERKの発現をPERK siRNA/plasmidで調節したところ、IL-1βの発現が減少/増加したことから、PERKはIL-1βの発現を制御していることが明らかになりました。さらに、PAで刺激した肝星細胞の培養上清で肝癌細胞を培養すると、増殖能・遊走能・浸潤能が促進しましたが、肝星細胞のPERKノックダウンにより、これらの悪性形質は抑制されました。この結果から、肝星細胞におけるPERKはIL-1β分泌を介して肝細胞癌の進展を促進することが示されました。また、肝星細胞におけるPERKを介したIL-1β産生機構を明らかにするために、RNA-seq解析を行った結果、PERKとIL-1βの中間分子として、p38δ MAPKを同定いたしました。以上より、肝星細胞におけるPERKはp38δ MAPK/IL-1β軸を介してMASH肝細胞癌の進展を促進することが示されました。
最後に、本研究の遂行にあたり、多大なるご支援・ご指導を賜りました日浅教授、徳本先生、共著者の先生方、技官の皆様に心より御礼申し上げます。
今後も学位研究を通じて培った知見を活かし、より一層研究に励んでまいりますので、引き続きご指導ご鞭撻のほど、よろしくお願い申し上げます。
本研究成果の詳細につきましては、以下のリンクよりご覧いただけます。
https://rdcu.be/epLHD