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論文・学会・研究会の報告
 

論文・学会・研究会の報告

北畑先生からのコメントです.

レストレスレッグス症候群 (Restless legs syndrome; RLS) は安静時に出現する下肢を主とする感覚運動障害です.2次性RLSは炎症をきたす疾患により惹起されますが,過去の報告において潰瘍性大腸炎 (Ulcerative colitis; UC) におけるRLSの有病率の報告には一貫性がありませんでした。また難病に指定されている潰瘍性大腸炎は,近年,臨床症状の改善だけでなく,大腸粘膜の治癒が治療目標となっています.そのためUCにおけるRLSの有病率を調べる上でもUCの疾患活動性を考慮する必要がありますが,これまでに粘膜治癒とRLSの関連についての報告はありませんでした.

そこで2015年から2019年の間に愛媛大学および愛媛県内の関連病院を受診したUC患者(N=387)を対象に粘膜治癒とRLSの関連について解析を行いました.

RLSの有病率は国際RLS研究グループの質問票を用いて評価し,UC患者におけるRLSの有病率は4.7%でした.UC患者の臨床的寛解は58.4%でした.Mayo endoscopic subscore (0,1,2,3) はそれぞれ25.9%,37.2%,29.6%,7.3%であり,患者の63.1%が粘膜治癒の状態でした.調整前のオッズでは臨床的寛解のみRLSの有病率と有意に関連していましたが,交絡因子を調整したところ,臨床的寛解 (adjusted OR 0.23、95%CI 0.05-0.93) および粘膜治癒 (adjusted OR 0.23、95%CI 0.05-0.90) はRLSの有病率との間に負の関連性がありました.潰瘍性大腸炎患者の疾患活動性がRLSの有病率は負の関連性があったことから,潰瘍大腸炎への治療がRLSへ予防的に働く可能性を明らかにした初めての研究となりました.

本研究はIBD診療に携わる愛媛大学および県内関連病院の先生方や愛媛大学総合健康センタースタッフのご協力によって行うことができました.深い感謝を申し上げます.

愛媛県立中央病院の平岡淳先生が日本肝臓学会英文誌”Hepatology Research” 2022年度High Citation awardを受賞されました。

以下、平岡先生がコメントを送ってくれました。

日本肝臓学会英文誌”Hepatology Research” 2022年度High Citation awardを受賞して

愛媛県立中央病院 消化器内科 主任部長 平岡淳

このたび栄誉ある”Hepatology Research” 2022年度High Citation awardを受賞しました。

”Hepatology Research”は日本肝臓学会の英文誌で論文採択難度の高いジャーナル(Impact factor 4.2)の1つです。

“Therapeutic potential of lenvatinib for unresectable hepatocellular carcinoma in clinical practice: Multicenter analysis.
Hiraoka A, Kumada T, Kariyama K, Takaguchi K, Itobayashi E, Shimada N, Tajiri K, Tsuji K, Ishikawa T, Ochi H, Hirooka M, Tsutsui A, Shibata H, Tada T, Toyoda H, Nouso K, Joko K, Hiasa Y, Michitaka K; Real-life Practice Experts for HCC (RELPEC) Study Group and the HCC 48 Group (hepatocellular carcinoma experts from 48 clinics in Japan). Hepatol Res. 2019;49(1):111-117. “
上記の受賞論文は愛媛県立中央病院だけではなく、愛媛大学をはじめとする全国の多施設共同研究複合組織のRELPEC/HCC48を母体として集積したデータを解析して論文化したものの1つです。
切除不能肝癌に対する一次治療薬として分子標的治療薬レンバチニブが保険収載されたわずか半年後に執筆投稿publishとなった肝癌に対するレンバチニブ初の実臨床論文です。肝予備能が良好な症例に対して実臨床においても臨床試験(治験)結果と同様に良好な治療効果が得られること、一次治療としてだけではなく二次治療以降の治療として使用しても同様な治療効果得られることが示されました。

今回頂いた賞を励みにこれからも臨床の現場に還元できる研究を診療とともに続けて行きたいと思います。
多施設共同研究複合組織に参加されている皆様にこの場をお借りして厚く御礼申し上げます、本当にありがとうございました。

山本安則先生と総合健康センターの古川慎哉先生がまとめた「笑い」と機能性ディスペプシア との関連性について研究結果がInternational Journal of Environmental Research and Public Health (IF 3.390)にアクセプトされました。

以下古川先生からのコメントです。

「笑い」は様々な病気の予防に役立つとされており、NK細胞などの免疫能の改善や食後高血糖の予防に加えて、動脈硬化疾患も予防的に働くことが報告されています。笑いと消化器疾患との関連については、過去2法報告があり、過敏性腸症候群では笑いヨガでは症状が緩和することや機能性胃腸障害に効果があったことが報告されていましたが、機能性ディスペプシアにおいてはエビデンスがありませんでした。また、「笑い」の場面ごとの健康へ与える効果は過去の先行研究でも解析されていませんでした。

愛媛大学の学生検診データを活用して、自己申告の「笑い」、「笑う場面」と機能性ディスペプシアとの関連性について解析を行いました。

自己申告の全体「笑い」の頻度とFDとの関連性はありませんでした。一方で、笑いの種類と機能性ディスペプシアとの関連性については興味深い解析結果が明らかになりました。

「ほぼ毎日友人や家族など他人と一緒に笑う」では有意に機能性ディスペプシアの有病率が低く、その頻度と負の関連性がありました(調整後オッズ比0.47 [95% 信頼区間: 0.28–0.81], p for trend = 0.003)。

一方で、「テレビやビデオを見ながら笑う」や「漫画などで笑う」ではむしろ機能性ディスペプシアが有意に多い結果でした(テレビやビデオでの笑い(週に1から5回)調整後オッズ比1.74 [95% 信頼区間: 1.16–2.60]、漫画での笑い(週に1から5回)調整後オッズ比1.78[95% 信頼区間: 1.08–2.81])

なぜ「ほぼ毎日友人や家族など他人と一緒に笑う」と機能性ディスペプシアが少ないかについてはいくつかの機序が考えられます。

1)一般的に鬱症状は機能性ディスペプシアとのリスクとされており、笑いが鬱症状の緩和を介して機能性ディスペプシアを予防した可能性

2)他人との一緒に笑うことでオピオイド類が分泌され、痛みの閾値が変化した可能性

3)笑うことは健康的な証である可能性

4)とくに他人と一緒に笑えることは社会的な絆が強いことを意味しており、社会的絆が強いと、コルチゾールをさげ、オキシトシンの濃度を高めまった可能性(ヒトの先行研究)

5)その結果としてコルチゾールは内臓過剰反応を抑制し、オキシトシンは胃の排出能を高めた可能性

一方で、話のオチを聞くと、交感神経を亢進させることが先行研究で示されており、テレビや漫画などでの笑いは機能性ディスペプシアのリスクを高めた可能性が考えられます。(実は、我々のことを考えて?、三宅映己先生がオチない話もされているかもしれません。)

本研究では「家族や友人と一緒に笑うこと」が機能性ディスペプシアに予防的に働く可能性、「笑い」には種類があり、健康へ与える効果が異なる可能性が示唆されました。今後、笑いの介入研究等で因果関係を解明する必要があるかもしれません。

非アルコール性脂肪肝炎(NASH)は、適切な治療が行われなかった場合、肝硬変や肝不全に進行したり、肝臓癌を合併するだけでなく、心血管疾患発症の危険因子となり、進行したNASHは予後不良の疾患です。一方で糖尿病は、神経障害、網膜症、腎症の三大合併症や心血管疾患の危険因子となるだけでなく、NASHを進展させる最も重要な因子の一つと考えられています。そのため、進行する危険性の高いNASHが多く存在する糖尿病外来での適切なNASHの診断と治療介入が重要です。しかしながら、NASHの標準的治療法として確立されたものはありません。
本研究は、未だ確立されていない2型糖尿病合併NASHに対する有効な治療法の選択肢の一つになるうる可能性があるGLP-1受容体作動薬、SGLT2阻害薬の併用療法の有効性を検証し新たなエビデンスを確立するための探索的非盲検無作為化並行群間比較試験です。

「2型糖尿病合併NASH患者を対象としたセマグルチド注へのルセオグリフロジン上乗せNASH改善効果に関する探索的研究(非盲検無作為化並行群間比較試験)」

本研究に参加して頂ける患者様を募集しております。
是非、ご協力頂ければ幸いです。何卒宜しくお願い致します。

プロトコル論文です。お時間のある時にご覧ください。
Additional Effect of Luseogliflozin on Semaglutide in Nonalcoholic Steatohepatitis Complicated by Type 2 Diabetes Mellitus: An Open-Label, Randomized, Parallel-Group Study」Diabetes Ther. 2022 Mar 21. doi: 10.1007/s13300-022-01239-7.

三宅先生の論文「Combined evaluation of Fibrosis-4 index and fatty liver for stratifying the risk for diabetes mellitus」がJournal of Diabetes Investigationにアクセプトされました。

以下三宅先生からのコメントです。

市立宇和島病院の藤堂先生との共同研究をご紹介いたします。
脂肪性肝疾患は糖尿病発症の危険因子と考えられていますが、対象者が多く全ての患者様を囲い込むことは困難です。本研究では、FIB-4 index(cut-off値 1.3)をもちいることにより、脂肪肝の中から糖尿病発症 High risk 群を囲い込むことが可能であることを報告いたしました。FIB-4 indexは、年齢、血小板、AST、ALTから求めることができるため、外来でも用いやすい指標と思います。是非、参考にしてみて下さい。

愛媛大学医学部附属病院 光学医療診療部の山本安則先生が、世界で初めてgel immersion endoscopyによる内視鏡的整復術が有用であった小児S状結腸捻転症例を報告し、Endoscopy E-videos(IF10.093)にアクセプトされました。

山本安則先生からのコメントです。

小児において、S状結腸捻転症は先天性疾患等に合併する稀な疾患ですが、緊急性の高い病態です。これまで成人腸捻転に対し、水浸法による内視鏡整復術の有効性などが報告されてきましたが、便や腸液による視野不良が問題でした。そこで今回、内視鏡用視野確保ゲル「ビスコクリアⓇ(大塚製薬工場)」を用いた内視鏡的捻転整復術を行いました。ビスコクリアⓇの使用により混濁した腸液が除去され視野が明瞭となり、捻転した腸管の確認と捻転部粘膜虚血の有無をより正確に評価することができました。それだけでなく、捻転解除の際、左側臥位への体位変換により、ゲル注入圧とその重みによって捻転部が開大し、内視鏡スコープの通過が容易となりました。本症例では、この手法により整復術は成功し、合併症なく緊急手術を回避することができました。

緊急内視鏡時には、池田宜央先生をはじめ多くの消化管グループの先生方や、小児科諸先生のご協力をいただくことで完遂することができました。この場を借りて感謝申し上げます。光学医療診療部では、難症例に対し引き続き新しい手技に挑戦していく所存です。

中村由子先生の論文が雑誌「肝臓」にアクセプトされました。
おめでとうございます。

以下は中村先生からのコメントです。

この度、「血栓性微小血管障害症を合併したアルコール性肝硬変の一例」と題した論文が肝臓にアクセプトされました。

本論文はアルコール性肝炎の経過中に血尿が持続し、腎生検にて血栓性微小血管障害症 (TMA) の診断を得た症例報告です。肝硬変の経過中に血尿が出現した際には、ADAMTS13活性の測定を行い、VWF/ADAMTS13活性のインバランスがある場合はTMAを疑い、FFPやrTMの投与を考慮する必要があることを報告しています。

多くの先生方には診断・治療に至る過程で多くのお力添えをいただきました。また論文作成にあたり全面的にサポートいただきました徳本先生、日浅教授、共著者の先生方に感謝申し上げます。今後も実臨床に活かして行きたいと思います。

古川慎哉先生が作成された「不健康な食習慣とルセフィによる血糖改善および体重減少との関連性についての論文(The luseogliflozin Ehime Diabetes Study: LED study)」がDiabetes Therapy (IF 2.945)にアクセプトされました。

以下、論文の内容と古川先生からのコメントです。

不健康な食習慣はさまざまな疾病リスクとなることがわかっています。
当教室では、糖尿病で不健康な食習慣(遅い夕食)があると、糖尿病では逆流性食道炎が多く、制酸剤による治療効果が減弱すること(Can J Diabetes 2018; 42: 312)、潰瘍性大腸炎ではお腹いっぱいまでたべる習慣があると粘膜治癒が有意に少なく(BMC Gastroenterology 2021; 21: 152)、欠食習慣があると機能性ディスペプシアが有意に多いなど (J Neurogastroenterol Motility In Press)など食習慣に着目した研究を進めてきました。

満腹まで食べる習慣は肥満に、朝ご飯欠食も肥満、脂質異常症、糖尿病の発症に、早食いは肥満、高血圧、食後高血糖、インスリン抵抗性との関連性が示されています。
以上のことから、不健康な食習慣が、糖尿病薬物治療効果を減弱させる可能性がありますが、不健康な食習慣を含めた種々の不健康な行動が、DPP4阻害薬の無効例、SGLT2阻害薬における体重減少が弱まることがそれぞれ1報のみで食習慣と糖尿病治療効果に関するエビデンスは十分ではなく、とくに不健康な食習慣それぞれとSGLT2阻害薬の治療効果への影響は不明でした。

2型糖尿病29例を対象としてルセフィ投与前に、早食い、遅い夕食、夕食後の間食、お腹いっぱいまでたべる、朝欠食を自己記入式質問調査票で調査を実施しました。不健康な食習慣が多い集団(不健康な食習慣が2つ以上)ではHbA1cおよび体重改善効果が減弱していました。不健康な食習慣が少ない集団(不健康の食習慣が1以下)ではHbA1cと体重減少との間に相関がありましたが、 不健康な食習慣が多い集団 ではHbA1cと体重減少との相関は見られませんでした。 また、個別の食習慣では早食い以外の食習慣はHbA1c改善効果が減弱していましたが、早食い習慣がある方がHbA1cがより改善していました。一般的な不健康な食習慣は SGLT2阻害薬の治療効果を減弱させるが、早食い習慣はSGLT2阻害薬の治療効果が維持されていました。早食いは食後高血糖が高く、ルセフィによるGLP-1分泌増強や食後高血糖改善効果から上記のような違いが見られたのかもしれません。本研究は少数での探索的な研究であり、食習慣と薬物の効果についてはさらなる研究が必要と思われます。

済生会松山病院の八木先生と総合健康センターの古川先生がまとめていました潰瘍性大腸炎におけるAGR(アルブミングロブリン比)と粘膜治癒との関連性に関する論文が韓国大腸肛門学会雑誌 Annals of coloproctology(IF 1.13)にアクセプトされました。

AGRは慢性炎症のマーカーとして、がん、サルコイドーシスなどの自己免疫性疾患、心不全、脳卒中の予後との関連が報告されています。しかし、炎症性腸疾患である潰瘍性大腸炎における意義は不明でした。

そこで、愛媛潰瘍性大腸炎研究のベースラインデータを用いて、潰瘍性大腸炎患者におけるAGRと臨床アウトカムとの関連性を横断的に解析しました。CRPは代表的な炎症マーカーですが、内視鏡所見や粘膜治癒と一致しないことが指摘されています。そこで加えて、CRPを層別化してAGRと臨床アウトカムとの関連性を解析しました。

AGRは臨床的寛解、粘膜治癒(MES0)との間に正の関連性があり交絡因子で補正後でも有意でした。とくにCRPが低い0.1mg/dl以下での症例群ではAGRは臨床的寛解とは関連性は消失しましたが粘膜治癒との正の関連性がありました。一方でCRPが高い症例群ではいずれのアウトカムとも関連性はありませんでした。

アルブミン、グロブリンともに簡便でかつ迅速測定が可能であり、その測定コストや利便性から日常臨床においても活用可能です。AGRは潰瘍性大腸炎において、臨床的寛解や粘膜治癒と正の関連性があり、CRPが低い症例群では粘膜治癒の補助的血清マーカーとなりえる可能性が示唆されました。

12月3日から4日にかけて、名古屋国際会議場で第41回日本肝臓学会西部会が開催されました。

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教室からも多数の先生が参加しました。

今回、ポスターセッションで研修医の渡部先生と鶴居先生が発表されました。

 

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オーベンの山本安則先生と渡部浩史先生

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発表本番前、入念な準備中です。

 

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鶴居亮輔先生とオーベンの小泉洋平先生

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しっかりとしたプレゼンは、他病院の先生からも評判でした。

 

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夜は、済生会今治病院の恩地先生と、研修医の赤瀬先生も合流して、会食。

名古屋を満喫できたようです。

渡部先生、鶴居先生、お疲れ様でした。

 

 
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愛媛大学大学院
消化器・内分泌・代謝内科学
(第三内科)
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