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抄読会要約まとめのご報告(第9回目)
 

お知らせ

第三内科で行われた抄読会の内容要約を週1回、同門メールにて現在までお知らせしてまいりました。第三内科ホームページ上でも抄読会内容を確認したいという希望がありましたので、定期的に今後更新してまいります。

第9回目報告をさせていただきます。

[過去抄読会要約のURLリンク]

平成23年 5月

6月

7月

8月

9月

10月

12月

平成24年4月

抄読者 畔元信明
論文名 A randomized trial of rectal indomethacin to prevent post-ERCP pancreatitis
著者
Elmunzer BJ, Scheiman JM, Lehman GA, et al.
reference N Engl J Med. 2012 Apr 12;366(15):1414-22.
サマリー
【背景】Preliminaryな研究において、NSAIDsの投与はERCP後膵炎の発症を低下させると報告されている。【方法】この研究はmulticenterrandomizedplacebo-controlleddouble-blind clinical trialである。筆者らはERCP後膵炎の危険因子を有する患者へindomethacinの直腸内投与もしくはplacebo投与を行った。Primary outcomeERCP後膵炎の発症とした。【結果】602例を対象とし、295例をindomethacin群、307例をplacebo群に割り付けた。Indomethacin群では27(9.2%)ERCP後膵炎がみられ、一方placebo群においては52(16.9%)にみられた(p=0.005)。【結論】ERCP後膵炎の危険因子を有する患者において、indomethacinの直腸内投与はERCP後膵炎の発症を抑制する
抄読者 森健一郎
論文名

Can rebamipide and proton pump inhibitor combination therapy promote the healing of endoscopic submucosal dissection-induced ulcers? A randomized,prospective,multicenter study

著者 Shin WG, Kim SJ, Choi MH, et al.
reference Gastrointest Endosc. 2012 Apr;75(4):739-47. Epub 2012 Jan 26.
サマリー

【背景】ESDは胃腺腫や早期胃癌に対する低侵襲な治療として1990年代から広く普及しているが従来のEMRと比較し大きく深い潰瘍を形成する。ESD後の潰瘍に対する薬剤のレジメや治療期間についてコンセンサスは得られておらず大規模な研究も行われていなかった。レバミピド(ムコスタ)は通常の潰瘍において潰瘍治癒を促進し再発率を下げることが言われている。そこでPPIとレバミピド併用群とPPI単剤投与群に分け、治療効果について多施設前向きランダム化比較試験にて検討している。【対象】20088月から201012月に胃腺腫及び早期胃癌に対してESDが施行された成人290例、計309病変を対象としている。すべての患者はESD2pantoprazole(Protonix)40mgを静注し、3日目からランダムに2群に分け、4週後の潰瘍治癒率(潰瘍の面積の減少率)、潰瘍治癒の質(flat or nodular)について検討している。【結果】4週後の潰瘍治癒率は併用群で94.9%、PPI単独群で89.9%と有意差を持って併用群で高値であった。多変量解析の結果、レバミピドの併用とESDにかかった時間(35分以内)は高い潰瘍治癒率の独立した予測因子であった。また潰瘍治癒の質についても併用群で単独群と比較しオッズ比1.9倍と高いという結果であった。レバミピドはプロスタグランジンや上皮成長因子、一酸化窒素を増加させ、活性酸素を低下させることにより潰瘍辺縁における胃粘膜血流を増加させ効果を発揮すると考えられている。

抄読者 山本晋
論文名 Antenatal Thyroid Screening and Childhood Cognitive Function
著者 John H. Lazarus, M.D., Jonathan P. et al.
reference N Engl J Med 2012; 366:493-501February 9, 2012
サマリー

【背景】 甲状腺機能低下症の妊婦から生まれた子供たちでは、低い認知機能の報告がある。甲状腺スクリーニング検査と小児期の認知機能の関連について無作為化比較試験で調査した。【対象と方法】イギリスの10のセンター、イタリアの1つのセンターを受診した妊婦、21846人にをスクリーニング群とコントロール群に分けた。スクリーニング群が10924名、コントロール群が10922名(それぞれ約妊娠12週)スクリーニング群で陽性ではLT4150mcg/日で開始し投薬開始後6週後と妊娠30週時に検査した。TSH0.11.0を目標とした。最初の認知評価は3歳時のIQ、行動様式テストでおこなった。【結果】コントロール群とスクリーニング群において3歳時のIQ検査、行動様式検査に有意な差はなかった。LT4の治療を受けた妊婦でも、IQが低くなる有意な危険性はなかった。補充LT4の平均の量は147mcg85%で当初の開始量を継続できた。LT4補充を開始した中で、高TSH値のみ、低FT4のみ、その両方、いずれにおいて児のIQテストの結果に有意な差はなかった。また14週前より補充開始、それ以降で開始した群、6週間後で目標値になった群と妊娠30週で目標値になった群でも有意な差はなかった。【結論】妊娠12週時のスクリーニング群、妊娠20週前(平均13週と3日)の甲状腺機能低下に対する治療群と比較して、コントロール群として無作為に選ばれた甲状腺機能低下群での児のIQスコアに有意な差はなかった。

過去の報告と反対の結果が出た理由として、スクリーニングによるLT4の開始は、脳の発達においては遅すぎる可能性がある。女性の甲状腺機能低下症と児のIQの低さの関連性を示したHaddowらのstudyでは、心理テストは7歳時に行われている。LT4補充の効果があるかどうかの評価のために、より早期の出産前の検査とより遅い子供期の知的評価の追加が必要である。最近のガイドラインでは妊娠における甲状腺機能低下症の出産前のルーチンのスクリーニング検査は推奨していない。

抄読者 黒田太良
論文名

Frequent Detection of Pancreatic Lesions in Asymptomatic High Risk Individuals: Screening for Early Pancreatic Neoplasm (CAPS 3 Study)

著者 Canto MI, Hruban RH, Fishman EK, et al.
reference Gastroenterology 2012. (Accepted Date: 5 January 2012)
サマリー
【背景】膵癌の診断には様々な画像検査が用いられるが,どの画像検査がスクリーニングに適しているかについてはいまだ知られていない.そこで著者らは,無症状膵癌ハイリスク患者の膵スクリーニングにおいて,どの画像検査が最も適しているかについて,多施設共同後ろ向きコホート研究を行った.【対象】対象は三次救急病院5施設(Johns Hopkins Hospital (Baltimore, Maryland), Mayo Clinic (Rochester, Minnesota), University of California (Los Angeles, California), Dana Farber Cancer Institute (Boston, Massachusetts), M.D. Anderson Cancer Center (Houston, Texas))を訪れた外来患者のうち,dynamic CT,造影MRIMRCP),EUSを施行した40-80歳の膵癌ハイリスク患者216人で,その画像を解析し検討した.【方法】膵癌ハイリスク患者はPeutz-Jeghers syndrome患者,1-2親等以内に膵管癌の家族歴をもつfamilial breast-ovarian cancer (FBOC) 患者,一親等以内にfamilial pancreatic cancer(FPC)の家族歴をもつ親族と定義した.Karnofsky performance status <60の患者,膵疾患の疑いがある患者,膵手術既往のある患者,重篤な疾患をもつ患者,出血傾向があるもしくは血小板減少患者,腎不全患者,造影剤アレルギーのある患者,病的肥満患者,高度の閉所恐怖症がある患者,上部消化管に閉塞病変がある患者は除外した.全対象患者のCTMRIEUSの検査はそれぞれ独立して行われ,画像の読影は,研究のプロトコールについて話し合いを行った経験豊かな放射線科医もしくは内視鏡医が行った.読影者は他の画像検査結果を見ない状態で評価した.フォローアップ期間は1-3年で,最終診断はそれぞれの施設における研究責任者が,臨床診断,繰り返す画像検査,病理組織もしくは手術病理に基づいて行った.【結果】216人中92人(42%)の患者に膵腫瘍(嚢胞性病変 84人,充実性病変 3人)もしくは主膵管の拡張(5人)がみられた.嚢胞性病変を有した84人中51人(60.7%)に典型的な(小さく(平均0.55cm2-39mm)多部位にわたる)多発性病変がみられた.膵異常を指摘された患者のうち,腫瘍を疑われた,もしくは腫瘍と証明された患者は85人(IPMN 82人,膵内分泌腫瘍 3人)であった.膵病変は50歳未満で14%50-59歳で34%60以上で53%と高齢になるにつれ多くみられた(P<0.0001).CTMRIEUSでの病変検出率はそれざれ11.0%33.3%42.6%であった.膵切除をうけた5人中3人は3cm以内高度異形成のIPMNであった.【結論】無症状の膵癌ハイリスク患者のスクリーニングを行うことで,治療可能な,非浸潤性の膵嚢胞性病変が指摘された.著者らは膵病変の描出においてEUSMRICTよりも有用であると結論している
抄読者 黒田太良
論文名 Chemoembolization of Intrahepatic Cholangiocarcinoma With Cisplatinum, Dokorubicin, Mitomycin C, Ethiodol, and Polyvinyl Alcohol.
著者

Kiefer MV, Albert M, McNally M, et al.

reference Cancer 2011; 117: 1498-1505.
サマリー
【背景と目的】胆管癌の5年生存率は切除症例も含めて5%以下,中央生存値は無治療で5-8ヵ月と極めて不良である.治療として全身化学療法や放射線化学療法が試みられているが,その効果は限定的である.そこで著者らは,肝内胆管癌もしくは原発不明の肝内胆管癌(腺癌)に対する肝動脈化学塞栓療法の効果を明らかにする目的でこの研究を行った.【対象】ペンシルベニア大学およびウィスコンシン大学の2施設で肝内胆管癌(N=37)または原発不明に肝内胆管癌(腺癌,N=25)と診断された62症例.そのうち7例(11%)は部分肝切除術,18例(29%)は全身化学療法,2例(3%)は放射線療法をうけていた.【方法】血管造影を行いCeliacおよびSMAからの血管造影で血流と腫瘍の位置を確認し,左または右肝動脈を選択.Mitomycin-C 10mg + Doxorubicin 50mg + cisplatinum 100mgethiodolのエマルジョン,polyvinyl alcoholを用いて肝動脈化学塞栓療法を行った.肝内の腫瘍がすべて消失する前まで1ヵ月毎に繰り返しこれを1サイクルとした.治療終了後1ヵ月,3ヵ月の時点でdynamic CT(もしくは造影MRI),CBC,肝機能検査,凝固機能検査,Cr,腫瘍マーカーを確認し,腫瘍の進行や再発がみられたら前記の治療を追加で繰り返し行った.【結果】62症例中,脱落2例,画像フォローができなかった症例15例を除く45例で検討を行ったところ,肝動脈化学塞栓療法による病勢コントロールはregression 5(11%)stabilization 29(64%)progression 11(24%)であった.また,62例全体の解析において,全体の生存中央期間は20ヵ月であり,肝動脈化学塞栓療法に全身化学療法を組み合わせた群(N=18)は肝動脈化学療法単独群(N=44)と比較して生存中央期間が有意に長かった(28ヵ月vs. 16ヵ月,[HR] 1.94; 95%CI 1.13-3.33).筆者らは肝内胆管癌における肝動脈化学塞栓療法が,局所の病勢コントロールを可能とし,さらに肝動脈化学塞栓療法に全身化学療法を組み合わせることで,生存期間を改善することができると結論している
抄読者 渡辺崇夫
論文名 Carotid Atherosclerosis and Chronic Hepatitis C: A Prospective Study of Risk Associations
著者 Salavatore Petta, Daniele Torres, Giovanni Fazio, et al.
reference Hepatology 2012; 55: 1317-1323
サマリー

【背景】HCVは直接、肝脂肪化・インスリン抵抗性に影響を及ぼすことが報告されている。しかし心血管イベントとHCV感染との関係の報告は少数あるものの一定の見解はない。またそれらの報告に組織学的な肝炎の活動性・線維化まで評価対象とした報告はない。【目的・対象】頸動脈のplaqueの存在に対して統計学的に有意な因子を単変量、多変量解析にて同定することを目的とし、対象は筆者の施設を受診した174名のHCV Genotype1陽性患者、controlは同施設の循環器科を受診した年齢、性BMIをマッチさせた174名。【結果】内膜中膜複合体厚(IMT)、頸動脈のplaqueを有する割合はcontrol群に比べHCV陽性者群で有意に多かった。HCV陽性者においてBMI2DMの有り無し・HOMA-IRLDLTGなどの代謝に関わる因子を含めた、頸動脈plaqueを有する割合に対する多変量解析で、年齢と肝組織の高度の線維化(F3-4)のみが抽出された。【結論】HCV genotype1感染者において、高度の肝線維化は頸動脈の粥状硬化症の危険因子となる。

抄読者 小泉洋平
論文名 The Increasing Burden of Mortality From Viral Hepatitis in the United States Between 1999 and 2007.
著者 Kathleen N, Jian Xing, R. monina Klevens, et al.
reference Ann Intern Med. 2012;156:271-278
サマリー

【背景】USAにおいてHCV感染が原因の死亡率が近年増加傾向であるが、USAにおけるHBVHCVによる死亡率がどう変化してきているかをまとめた報告は少ない。【目的】HBVHCVによる死亡率を明らかにし、HIVによる死亡率と比較する。【方法】National Center for Health Statisticsに記録されている1999年~2007年のデータを解析。約2200万の死亡例を対象とし、年齢調整死亡率で比較した。【結果】HIVの死亡率は減少傾向なのに対し、HCVによる死亡率は増加傾向であった。HCV感染に伴う死亡率増加の要因としては、HBV+HCV感染、アルコール、HCV+HIV感染等であった。しかし本研究のlimitationとして特に貧困層において、HBVおよびHCV感染の有無の評価がされていないケースが多い事が挙げられる。【まとめ】HCV感染者の死亡率は増加してきている。HIV感染者の死亡率は低下してきており、同様の取り組みをUSAにおいて肝炎患者に対して行っていくべきである

抄読者 壷内栄治
論文名

Efficacy of 5-Day Levofloxacin-Based Concomitant Therapy in Eradication of Helicobacter pylori Infection.

著者 Alessandro Federico, Gerardo Nardone, Antonietta G. Gravina, et al.
reference Gastroenterology. 2012 Apr 3.
サマリー
【背景】○ヘリコバクターピロリ(HP)は薬剤耐性ができやすい。○抗生剤に耐性を持つHPにより除菌率が低下している事。○クラリスロマイシン(CLA)は除菌で最も多く使われ、アメリカや欧州で第一選択とされているが、除菌率は75-80%にとどまる事。○CLA抵抗性のHPの比率が高い地域においては4剤併用療法(PPI、ビスマス製剤、テトラサイクリン、メトロニダゾール)が第一選択となっていること。○最近ではレボフロキサシンを含む10日間連続投与のレジメ(後述)が、効果的で安全で、低コストの治療である事が報告されている事。【目的】○無治療のHP感染患者対して、レボフロキサシンを含む4剤を5日間投与するレジメを行い、10日間連続投与のレジメ(後述)との無作為非劣性試験を行い。安全性と効果を比較する。【方法】上腹部症状を主訴に受診した468名(HP治療歴のない初診患者)が対象。HP陽性の198名のうち、非同意15名、胃癌2名、MALTリンパ腫1名を除いた180名を90名ずつランダムに次の2群にわけて検討≪5日間4剤併用療法群(5d-QCT group)≫①Esomeprazole(40mg)12回②Amoxicillin(1g) 12 回③Levofloxacin(500 mg) 12 Tinidazole(500mg) 1 2 回≪10日間連続療法群(10d-ST group)≫最初の5日間①Esomeprazole(40mg) 1 2 回②Amoxicillin(1g) 12 回。次の5日間①Esomeprazole(40mg) 1 2 回③Levofloxacin(500 mg) 12回④Tinidazole(500mg) 1 2 回【結果】○除菌率はITT解析では5d-QCT group 92.2%、10d-ST group 93.3%。PP解析では 5d-QCT group 96.5%、10d-ST group 95.5%で差はなかった。○有害事象の発生率は同等であった。○症例中の薬剤耐性株の割合や耐性株に対する治療効果も同等であった。○併用療法のコストは連続療法より 9安価であった。【結論】薬剤耐性HPの比率の高い地域では、レボフロキサシンを含む4剤を5日間投与するレジメは効果的で、安全で低コストの治療であり、第一選択となりうる。
抄読者 山西浩文
論文名

Endoscopic Transgastric vs Surgical Necrosectomy for Infected Necrotizing Pancreatitis A Randomized Trial

著者 Bakker OJ, van Santvoort HC, van Brunschot S, et al.
reference JAMA. 2012 Mar 14;307(10):1053-61.
サマリー

【背景】 感染性膵壊死は多くの場合ネクロセクトミーが必要となる。外科的ネクロセクトミーは侵襲が強いため、炎症反応を伴い合併症発生率が高くなることが知られている。内視鏡下経胃的ネクロセクトミー( natural orifice transluminal endoscopic surgery NOTES)は低侵襲であり炎症反応を抑えることで合併症発生率が低下する可能性がある。【目的】 外科的ネクロセクトミーと内視鏡下経胃的ネクロセクトミーの炎症反応、臨床転帰について比較検討する。【方法 】無作為化盲検臨床試験

治療方法

内視鏡的ネクロセクトミー 10例:経胃的穿刺→バルーン拡張→後腹膜腔ドレナージ、ネクロセクトミー

外科的ネクロセクトミー 10例:内視鏡補助下または腹腔鏡下ネクロセクトミー

評価項目

炎症反応:血清中IL-6濃度

臨床転帰:新規に発症した合併症:多臓器不全、腹腔内出血、腸管皮膚瘻、膵液瘻、死亡

【結果】処置後の血清中IL-6濃度は外科的ネクロセクトミー群と比較して内視鏡的ネクロセクトミー群で有意に低値であった。主要な合併症は内視鏡的ネクロセクトミー群で少なかった。新規発症の多臓器不全は内視鏡的ネクロセクトミー群ではみられなかった。膵液瘻は内視鏡的ネクロセクトミー群で少なかった。退院6か月後の蛋白分解酵素の使用量は内視鏡的ネクロセクトミー群で少なかった。【結論】内視鏡的ネクロセクトミーは外科的ネクロセクトミーと比較して炎症反応を抑制し、合併症を減少させる。

抄読者 小泉光仁
論文名

Cancer cell-selective in vivo near infrared photoimmunotherapy targeting specific membrane molecules

著者 Makoto Mitsunaga, Mikako Ogawa, Nobuyuki Kosaka, et al.
reference Nature Medicine. 2011 Nov 6;17(12):1685-91.
サマリー

【背景・目的】近年分子標的治療薬が開発されているが、効果は十分ではない。今回、彼らは新しい型の分子標的がん療法である光免疫療法(photoimmunotherapy)を開発した。【方法】近赤外光吸収性フタロシアニン色素を用いた光感作物質 IR700EGFRを標的とするモノクローナル抗体 mAbに結合させたmAb-IR700を実験に用いた。経静脈的に投与されたmAb-IR700EGFRを発現する腫瘍に結合し、700nmの近赤外光で感作され癌細胞の細胞膜を破壊する。【結果】In vitromAB-IR700wが結合した標的細胞に近赤外光を照射すると細胞死が引き起こされた。In vivo(マウス)EGFRを発現する標的細胞に近赤外光を照射すると腫瘍の縮小が観察された。【結論】彼らは標的選択能のある光免疫療法を開発した。今後細胞膜に結合するmAbを用いたがん治療が可能になるだろう。

抄読者 八木専
論文名

Aspirin, nonsteroidal anti-inflammatory drug use, and risk for Crohn disease and ulcerative colitis: a cohort study.

著者 Ananthakrishnan AN, Higuchi LM, Huang ES, et al.
reference Ann Intern Med. 2012 Mar 6;156(5):350-9.
サマリー

【背景】アスピリンと非ステロイド性 抗炎症薬(NSAIDs は抗炎症作用があるが,いくつかの研究によるとクローン 病(CD)と潰瘍性大腸炎(UC)の発症に関連があると言われている。【目的】アスピリンとNSAIDsの使用とCDUCの発症の関連性を評価する。 【対象】1990年と2008年の間に1990年以降IBDを発症した1809人のアメリカ人女性(看護師)。【結果】1295317人年のフォローアップし18年間で 123例のCD,117例のUCが発生した。頻繁にNSAIDsの使用していない人は明らかにCDまたはUCに関連がなかった.また、アスピリンと病気の関連が明らかでなかった。非使用者と比較して、月15日間以上NSAIDsを使用した女性の両疾患のリスクは以下の通りであった。CDの場合、年齢調整罹患率の絶対差、100,000人年あたり6例、[95CI0から13]、ハザード比、1.59 [95CI 0.99から2.56])。UCの場合、年齢調整罹患率の絶対差、100,000人年あたり7[95CI1から12]、ハザード比、1.87 [95CI 1.16から2.99] 。【結論】アスピリンではなく頻繁なNSAIDsの使用が CDUCの絶対的に発生率を増加させる。またNSAIDsの使用が週に5日以上または使用期間が長ければ長いほど発症率が増加すると結論している。

抄読者 竹治智
論文名

Tumor strengths and frailties: Aspiring to prevent colon cancer

著者 Patrick H Maxwell.
reference

Nature Medicine 2012: 18; 3233

サマリー

【背景】①米国における2011年の大腸癌発症数は14,210名,死亡数は50,000名であり,発症予防が重要,②前癌ポリープや早期大腸癌のスクリーニング(内視鏡検査)は高価,③この20年来,NSAIDに大腸癌の発症予防効果のエビデンスが蓄積されてきた.特に,以下の2つの研究が,毎日のアスピリン内服が大腸癌の発症リスクと死亡率を抑制できることを示した.1) Rothwell PM, Fowkes FG, Belch JF, Ogawa H, Warlow CP, Meade TW. Effect of daily aspirin on long-term risk of death due to cancer: analysis of individual patient data from randomised trials. Lancet. 2011; 377(9759):31-41. 2) Burn J, Bishop DT, Mecklin JP, et al. Effect of aspirin or resistant starch on colorectal neoplasia in the Lynch syndrome. N Engl J Med. 2008;359(24):2567-78. 【結果】・30mg/日~1200mg/日の投与量に対する試験において,75/日はそれ以上の大量投与と同等の効果(20年間で30%の抑制)がある.一方,30mg/日では効果は不十分.・大腸癌の抑制効果は内服の約7年後に現れる(潜時が存在する).実際,2年間のみ内服し,その後内服を中止しても効果が証明された.・Lynch症候群(遺伝性非ポリポーシス大腸癌)において,2年間の600mg/日の内服により,5年後の大腸癌リスクを5060%減少させた.【考察】アスピリンの大腸癌発症リスク抑制に対する考え得るメカニズムは明らかにされていない.現在考えられるメカニズムとして,① アスピリンは大腸粘膜の幹細胞数を減らす(遺伝子に損傷を受けた幹細胞を細胞死あるいは分化に誘導).② COX2が大腸ポリープ形成にかかわり(PGE2が腫瘍を増殖させる役割),アスピリンによるCOX2阻害によりポリープ形成を抑制する.③アスピリンは,大腸内の微生物(線維芽細胞,免疫細胞等)に影響を及ぼす等が考えられている.

抄読者 Shiyi Chen
論文名 Hepatitis B virus X protein stabilizes AIB1 protein and cooperates with it to promote human hepatocellular carcinoma cell invasiveness.
著者 Liu Y, Tong Z, Li T, Chen Q, Zhuo L, Li W, Wu RC, Yu C.
reference Hepatology, 2012, April
サマリー

Background: HBV X protein (HBx) plays a key role in the progression of chronic hepatitis B associated HCC. Amplified in breast cancer 1 (AIB1) protein is also recently found to be over-expressed in 68% human HCC specimens and promotes HCC progression by enhancing cell proliferation and invasiveness. Due to that both HBx and AIB1 play important oncogenic roles in HCC development; this study`s aim is to determine whether they can cooperatively promote human HCC development. Objects and Results: Liver specimens from HCC patients and human cell lines were used in this study. They showed that HBx-positive HCC tissues had higher level of AIB1 protein compared to HBx-negative HCC tissues. A positive correlation between HBx protein level and AIB1 protein level was established in HCC specimens. Without affecting its mRNA level, HBx induced a significant increase of the protein level of AIB1 extending its half-life. Mechanistically, HBx could interact with AIB1 to prevent the interaction between E3ubiquitin ligase Fbw7α and AIB1, and then inhibited Fbw7α-mediated ubiquitination and degradation of AIB1. Additionally, HBx and AIB1 cooperatively enhanced MMP-9 expression in HepG2 cells, which in turn increased cell invasive ability. Conclusion: This study demonstrates that HBx can stabilize AIB1 protein and cooperate with it to promote human HCC cell invasiveness, highlighting the essential role of the crosstalk between HBx and AIB1 in HBV-related HCC progression.

抄読者 川﨑敬太郎
論文名 Bariatric Surgery versus Intensive Medical Therapy in Obese Patients with Diabetes
著者 Schauer PR, Kashyap SR, Wolski K, et al.
reference The NEW ENGLAND JOURNAL of MEDICINEPublished 26 April 2012
サマリー
肥満のある2型糖尿病の治療として肥満手術の有効性はこれまで知られている。従来からある方法として、腹腔鏡下ルーワイバイパス術とラップバンド法があるが、今回比較的新しい手術法として腹腔鏡下袖(そで)状胃切除術と腹腔鏡下十二指腸転換を伴う胆膵バイパス術(十二指腸スイッチ手術)の効果についての評価を行った。【方法・結果】腹腔鏡下袖状胃切除術とは胃を細く切って食べ物が入るのを抑える方法である。従来のラップバンドと、バイパス術の中間にあたる方法で、メリットとしては、バイパス術に比べ生理的であることと胃カメラができることが挙げられるが、縮めた胃がまた大きくなってしまうといるデメリットがある。対象は肥満を伴うコントロール不良の2型糖尿病患者150例で、年齢の平均は50歳、体重は104kg, BMI36で、HbA1c9.2%であった。内科治療単独、内科治療とバイパス術、内科治療と袖状胃切除術の3群で比較を行った。1年後にHbA1c 6.0%を達成できたのは、内科治療群が12%, 内科治療とバイパスで42%, 内科治療とそで状胃切除術群で37%でした。どちらの外科手術も内科治療単独にくらべ有用性が見られたが、バイパス術と袖状胃切除群で体重やHbA1cに差はみられなかった。
抄読者 川﨑敬太郎
論文名 Bariatric Surgery versus Conventional Medical Therapy for Type 2 Diabetes
著者 Mingrone G, Panunzi S, De Gaetano A, et al.
reference The NEW ENGLAND JOURNAL of MEDICINEPublished 26 April 2012
サマリー
腹腔鏡下十二指腸転換を伴う胆膵バイパス術(十二指腸スイッチ手術)とは胃を細くすることに加えて、胃を肛門側の回腸に繋ぎ、さらに膵液や胆汁が回腸末端に流れ込むように繋ぎかえる方法である。前述の手術が摂取を減らす方法であれば、これは吸収を減らす術式である。対象は肥満を伴うコントロール不良の2型糖尿病患者60例で、年齢の平均は43歳、体重は136kg, BMI45.1で、HbA1c8.5%であった。内科治療単独群、バイパス群、この術式の320例ずつ、24ヶ月間で評価を行った。内科治療群に比べ手術群では改善がみられ、十二指腸スイッチ手術でよりHbA1c、血糖、脂質の低下がみられた。合併症において、十二指腸スイッチ手術群で19例中低アルブミン血症が2人、骨減少症1人、骨粗鬆症が1人みられた。
抄読者 森健一郎
論文名

Adalimumab Induces and Maintains Clinical Remission in Patients With Moderate-to-Severe Ulcerative Colitis

著者 Warner B, Harris AW.
reference Gastroenterology. 2012 May 24.
サマリー

【背景】アダリムマブ(ヒュミラ)は完全ヒト型抗TNF-αモノクローナル抗体である。ヒュミラは日本、アメリカ、ヨーロッパなどで使用されており、慢性関節リウマチやクローン病に対する寛解導入、維持療法などに適応はあるが潰瘍性大腸炎(UC)に対する適応は現在のところない。潰瘍性大腸炎患者に対するヒュミラの寛解導入効果は第2相試験で証明されているが、長期間の寛解維持効果は不明であり、今回第3相試験として多施設ランダム化二重盲検比較試験を行っている。【対象及び方法】ステロイド、免疫抑制剤を現在または過去に投与し無効であった中等症から重症の外来通院中のUC患者494人を対象としランダムにプラセボ群とヒュミラ投与群に分けている。ヒュミラの投与量は第2相試験の結果から0週目160mg2週目80mg、その後隔週毎に40mgを皮下投与している。エンドポイントは投与開始8週目と52週目とし寛解導入、維持率、ステロイド離脱率などについて検討している。【結果及びまとめ】トータルの寛解導入率はヒュミラ投与群で16.5%(8週)、17.3%(52週)、プラセボ群で9.3%(8週)、8.5%(52週)でありいずれにおいても有意差を持ってヒュミラ投与群で高値であった。以前に他の抗TNFα抗体の投与歴のある患者では、8週ではプラセボ群と比較し有意差はなかったが、52週ではヒュミラ投与群で有意差をもって寛解導入率が高かった(10.2vs3%)。また、抗体の出現率は2.9%、そのすべてがヒュミラ単剤投与例であり、免疫抑制剤との併用例では抗体の出現はみられなかった。また寛解導入できた例ではヒュミラの血中トラフ値が高い傾向にあった。ステロイドや免疫抑制剤で効果が不十分な中等症から重症のUC患者の寛解導入、維持においてヒュミラは安全性も高く効果的であった。またレミケードなど他の抗TNF-α抗体無効例にも有効である可能性が示唆された。


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愛媛大学大学院
消化器・内分泌・代謝内科学
(第三内科)
Department of Gastroenterology and Metabology, Ehime University Graduate School of Medicine
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