渡辺先生が冠アワードを受賞されました
2014年10月29日 8:05 PM
以下、渡辺先生からのコメントです
今回、日本肝臓学会の冠アワードである「第13回MSD Award」優秀賞を受賞しました。受賞論文は「Protein kinase R modulates c-Fos and c-Jun signaling to promote proliferation of hepatocellular carcinoma with hepatitis C virus infection. (PLoS One 8(7):e67750, 2013)」です。
Protein kinase RNA-dependent (PKR)はHCV複製によって増加し、HCV増殖を阻害する細胞内蛋白です。我々はこれまでにPKRがC型肝炎患者の肝細胞癌組織において非癌部組織に比べて高発現していることを同定しました。そこでHCV関連肝細胞癌におけるPKRの役割を明らかにすることを研究の目的としました。HCV関連肝細胞癌株としてHuh7.5.1を用いてHCV複製可能なJFH1, H77sを作成し、同細胞株においてPKR siRNA、および発現プラスミドを用い、PKRの発現を増減させることで変化する遺伝子をPCRアレイ、リアルタイムRT-PCR、ウエスタンブロット法で確認しました。細胞増殖の変化についてMTSアッセイを行い、さらにヒト肝細胞癌組織34例を用いて、同定した分子についてRT-PCR、ウエスタンブロット法にてPKR発現変化との関連について検討しました。PKRの発現の増減によりc-Fos, c-Junの発現が増減し、さらにPKRはそれぞれの上流にあり、MAP kinase関連遺伝子であるErk1/2およびJNKのリン酸化を誘導することが分かりました。またPKR発現に伴う細胞増殖の亢進がみられ、その亢進はErk1/2→c-Fos, JNK→c-Junの両経路に依存していました。ヒト肝細胞癌組織においてもPKRはリン酸化c-Fos,リン酸化c-Junの発現を増加させており、PKRはHCV関連肝細胞癌においてc-Fos, c-Junの活性化を介して細胞増殖能を亢進させ、癌の進展に寄与している可能性があります。
日浅陽一教授を始め多くの先生方に御指導を頂き、研究成果を発表することができました。先生方にこの場を借りて感謝を申し上げます。基礎研究、臨床研究ともに今後も頑張っていきます。今後とも御指導のほどよろしくお願いいたします。