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論文・学会・研究会の報告
 

論文・学会・研究会の報告

愛媛県立中央病院 消化管グループの論文が JGH open (IF:1.8) にアクセプトされました.
以下,first author Sからのコメントです.

愛媛県立中央病院 消化器グループが投稿しておりました,潰瘍性大腸炎の5-ASA服薬アドヒアランスについての論文” History of Previous Medication Self-Discontinuation Predicts the Current Adherence to 5-Aminosalicylates in Patients With Ulcerative Colitis”が JGH open (IF:1.8) にアクセプトされました.

潰瘍性大腸炎患者の基本治療薬である5-ASA治療において,服薬アドヒアランスは重要です.しかし服薬アドヒランスの評価は実臨床において非常に煩雑です.そこで簡便に服薬アドヒアランスを評価する方法がないかと考えました.我々は”過去に服薬自己中断歴がある患者は不適切な疾患認識があるためその後の服薬アドヒアランスも低いままである”と仮定し,潰瘍性大腸炎患者における過去の服薬自己中断歴と5-ASA治療における現在の服薬アドヒアランスとの関連を評価しました.

本研究は2021年〜2024年の間に愛媛県立中央病院で5-ASA治療をしている潰瘍性大腸炎患者228名を対象に自記式質問票を用いて過去の服薬自己中断歴と現在の服薬アドヒランスが評価されました.結果として, 5-ASAの現在の服薬遵守率は92.9%(212/228)であり,過去に服薬自己中断歴がある患者は7.8%(18/228)でした.本検討において,過去の服薬自己中断歴(p<0.001),若年(p<0.001),1日1回の5-ASAレジメン(p<0.001)は現在の服薬アドヒアランスと逆相関していました. 本研究の結果により,過去の服薬自己中断歴を確認することが,煩雑になりがちな5-ASA治療の現在の服薬アドヒランスを評価する上で有用なツールとなる可能性が示唆されました.Sのような患者に対しては積極的な服薬指導,アドヒアランス向上が望めるような(アドヒアランスが影響しないような)薬剤選択をする必要があるかもしれません. 本研究は愛媛県立中央病院の消化器内科診療に携わる先生方や医療スタッフのご協力によって行うことができました.深い感謝を申し上げます.

消化管グループ 山本安則先生が、先進消化器内視鏡開発学講座 森宏仁先生の指導の下でまとめられた、胃ESD(内視鏡的粘膜下層剥離術)後の人工潰瘍に対する新しい縫合閉鎖法に関する論文が、Endoscopy E-Videosにアクセプトされました。

論文名: Novel combination closure of an artificial ulcer after gastric endoscopic submucosal dissection using double-arm-bar suturing system and anchor prong clip 

以下、山本安則先生からのコメントです。

本論文では、早期胃癌などに対する内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)の後に生じる粘膜欠損(人工潰瘍)を閉鎖するための、新しい縫縮法について報告いたしました。
ESDは低侵襲な治療法ですが、術後の出血、特に抗血栓療法を行っている患者さんにおける遅発性出血が課題の一つです。術後の潰瘍を縫合閉鎖することで出血リスクの低減が期待できますが、胃壁は厚いため、内視鏡を用いた縫合は容易ではありませんでした。
そこで私たちは、既存の縫合デバイスである「ダブルアームバー縫合システム(Zeosuture M, Zeon Medical Co., Tokyo, Japan)」と、強力な把持力を持つ新しいクリップである「アンカープロングクリップ(MANTIS Clip; Boston Scientific, Marlborough, Massachusetts, USA)」を組み合わせる方法を考案しました。この併用により、精密な縫合と粘膜下の死腔を最小限に抑えた縫合閉鎖ができるのではないかと考え、その有効性を報告しました。

実際に、抗血小板薬を2剤服用中の患者さんにご協力いただき本手技を行った結果、良好な潰瘍閉鎖が得られ、術後の出血といった合併症も認められませんでした。この結果から、本併用閉鎖法は、胃ESD後の偶発症を予防し、特に高リスク患者さんの入院期間の短縮や後出血の抑制に有用である可能性が示唆されました。

現在、本手技の有効性と安全性をさらに検証するため、多施設共同での臨床試験(RCT)も開始しており症例を集積中です。より多くのデータに基づき、本法の確立を目指して参ります。

本研究の遂行にあたり、愛媛労災病院勤務中にご尽力いただきました岡田正也先生、神田 正敏先生、ご指導を賜りました森宏仁先生、日浅陽一教授に心より深謝申し上げます。また、日頃よりサポートいただいている消化管グループの先生方に厚く御礼申し上げます。
今後ともご指導のほど何卒よろしくお願い申し上げます。

愛媛大学大学院先進消化器内視鏡開発学講座 森 宏仁先生の論文がEndoscopy E-Videos誌にアクセプトされました!

Title: Endoscopic suturing ligation and fundoplication for proton pump inhibitor-resistant severe reflux esophagitis.
Endoscopy. 2025 Dec;57(S 01):E308-E309.

以下、森先生よりいただいたコメントです。

本内視鏡手技は、難治性逆流性食道炎に対するARMS(anti reflux mucosectomy)の発展型であるAPM-P(anri reflux muco plasty)の1亜型であり、内視鏡縫合器で粘膜欠損を縫合し難治性逆流性食道炎を根治せしめる内視鏡技術である。ARM-Pの世界的権威である昭和大学江東豊洲病院の井上晴洋教授にELFをARM-PZと命名いただき、現在10例のパイロットスタディーを行っており、術時間の短縮と正確な縫合により良好な成績を得ている。今後、先進医療から多施設臨床試験を予定している。

当科内分泌グループの先生方が多く携わった日本内分泌学会四国支部 市民公開講座が開催され、盛会となりました!

日本内分泌学会四国支部 市民公開講座は、「ホルモンを知って,みんなで健康!」のテーマで、令和7年2月16日(日) 10時から、愛媛大学 城北キャンパス 南加記念ホールで、愛媛大学 総合健康センターの古川慎哉教授の世話人のもとで開催されました。
まず、日本内分泌学会四国支部長/愛媛大学 内科の松浦文三先生から、「ホルモンとは」の概説の後、松山赤十字病院 内科の山本晋先生から、「甲状腺ホルモンが過剰な場合と不足している場合の症状や甲状腺の腫れ」について、愛媛大学 内科の三宅映己先生から、「肥満の合併症と治療法,やせの注意点」について、そして愛媛大学 総合健康センターの古川先生から、「夜間頻尿の原因,合併症とその治療」についてわかりやすく講演をいただきました。各講演の後には、多くの質問をいただき、各先生に丁寧に答えていただきました。
30名以上の参加を得て,盛会裏に終了しました。今後も機会を作って、「内分泌」の市民講座を開催したいと存じます。

愛媛県立中央病院 消化管グループの論文が JGH open (IF:1.7) にアクセプトされました.
以下,first author Sからのコメントです.

愛媛県立中央病院 消化器グループが投稿しておりました,悪性腫瘍による成人腸重積の臨床的特徴についての論文”Characteristics of adult intussusception due to malignancy in Japanese patients”が JGH open (IF:1.7) にアクセプトされました.

成人腸重積症は小児の成人腸重積と異なり,器質性疾患が原因となることが多いとされています.しかし稀な疾患のため,まとまった解析がこれまでされておらず,悪性腫瘍による成人腸重積の臨床的特徴は明らかにされていませんでした.そこで今回,悪性腫瘍による成人腸重積とその他の原因による成人腸重積の臨床的特徴を比較検討しました.2013年から2021年までに愛媛県立中央病院で成人腸重積(20歳以上)と診断された54名を対象として,2つのグループ(悪性腫瘍群n=26、その他の疾患群n=28)に分けて臨床的特徴について多変量ロジスティック回帰分析を用いて評価しました.多変量解析の結果より,64歳以上・慢性症状・結腸型が悪性腫瘍による成人腸重積と独立して関連していました(adjusted odds ratio [OR] 16.00, 95%CI 1.23–208.00; adjusted OR 32.70, 95% CI 1.50–712.00; adjusted OR 31.20, 95%CI 2.68–363.00, respectively).結論として,高齢者(64歳以上)・慢性症状・結腸型の成人腸重積は悪性腫瘍によるAIの特徴であることがわかりました.そのため上記特徴を持つ成人腸重積では保存的に腸重積が改善しても悪性疾患の存在を疑って原因精査が必要であることが示唆されました.

本研究は消化器内科診療に携わる先生方や医療スタッフのご協力によって行うことができました.深い感謝を申し上げます.

松山赤十字病院の今井祐輔先生の論文がJournal of Gastroenterology誌にアクセプトされました。
以下今井先生よりいただいたコメントです。

この度、Journal of Gastroenterology誌に総説がアクセプトされましたのでご報告いたします。
タイトル” Standard technique in Japan for measuring hepatic venous pressure gradient ”(J Gastroenterol. doi: 10.1007/s00535-024-02182-z. 2024. Online ahead of print.)

門脈圧亢進症の診療においては、門脈圧の測定が病態の把握・診療方針の決定に重要です。本論文は、門脈圧測定のゴールデンスタンダードであるHVPG測定についての総説です。HVPG測定手技の本邦における標準的な方法と、そのHVPG測定に代わりうる可能性のある非侵襲的な門脈圧の測定方法について紹介しております。
論文の執筆にあたっては、前 高知赤十字病院外科部長 近森文夫先生をはじめ、小泉洋平先生、日浅先生、他教室の先生方に多大なご指導を賜りました。御礼申し上げます。

済生会今治病院の八木専先生の論文がDEN openにてpublishされました。
以下八木先生よりコメントです。

今回DEN openにて論文がpublishされましたのでご報告申し上げます(DEN Open. 2024 Dec 2;5(1):e70036. doi: 10.1002/deo2.70036.)。ハイドロゲルスペーサー留置術により直腸潰瘍を来した症例のCase reportになります。
前立腺癌に対する治療方法の一つに放射線治療RTがありますが、そのRTによる放射線性直腸炎・膀胱炎を予防するためにここ最近では前立腺と直腸の隙間にハイドロゲルスペーサーを留置する方針がとられています。そのため最近あまり内視鏡医として放射線性直腸炎の症例が少なくなったと実感しています。しかし、その留置により直腸潰瘍を来した稀な1例を経験したため報告しました。これまで報告は少ないですが、今後前立腺癌の増加しているように今後、このような疾患が増える可能性があり周知する必要があると考え報告させていただきました。また、これまでの報告を考えると憩室症がリスクになる可能性があるため注視する必要があると考えます。

第122回日本消化器病学会四国支部例会(第133回日本消化器内視鏡学会四国支部例会と合同開催:県立中央病院 宮田英樹会長)において、当科の阿部雅則先生が会長を務められ、盛会に終了いたしました。
以下、阿部先生よりいただきましたコメントです。

2024年11月30日(土)、12月1日(日)に松山市総合コミュニティーセンターにおいて開催しました第122回日本消化器病学会四国支部例会(第133回日本消化器内視鏡学会四国支部例会と合同開催)では、多大なるご支援を賜りまして誠にありがとうございました。
両日とも天候に恵まれ、お陰様を持ちまして無事に本会を終えることが出来ました。
運営に当たりましては、何かと不行き届きな点があったものと存じますが、無事学会を終了することができましたのは皆様方のご協力ご理解のおかげと心より感謝申し上げます。とくに、ご指導ご協力いただいた第133回消化器内視鏡学会四国支部例会の宮田英樹会長、日本消化器病学会四国支部第27回専門医セミナーの田中良憲会長、事務を担当頂いた薬師寺是行様、運営を支えて頂いたイブニング・グロー社の皆様には深謝いたします。

愛媛県立中央病院 消化器内科IBDセンターの臨床研究 ”潰瘍性大腸炎患者の治療薬選択におけるSDMにBio/JAK使用歴が与える影響” が,日本炎症性腸疾患学会(JSIBD)2024で「優秀賞」を受賞しました.

以下、県立中央病院の先生方からのコメントです.

近年,診療において患者さんの価値観を共有して一緒に治療方針を決定していくShared decision making (SDM)が重要視されています.それは潰瘍性大腸炎のBio/JAK選択においても同様です.今回,Bio/JAK naïve症例とBio/JAK exposure症例では薬剤選択に寄与する情報量の差(これまでに投与したBio/JAKの治療反応など)があるため、Bio/JAK選択におけるSDMに影響を与えるのではないかと仮定しました.
本研究で得られた結果は下記のとおりです.
①Naïve症例では患者主体による薬剤選択が53%(20/38)であるのに対して,Exposure症例は患者主体による薬剤選択が17%(7/41)で有意に少なかった(p=0.001).
②Naïve症例では患者の薬剤選択理由は多岐にわたっていたのに対して,Exposure症例における患者の薬剤選択理由は全て投与経路であった.
この結果により,薬剤選択に寄与する情報の多いExposure症例においても,投与経路は患者にとって重要な因子でありSDMを実践する上で考慮する必要があることがわかりました.
今後も新しい試みに挑戦していきたいと思います。

胆膵グループの石川将先生がEndoscopy E-videoに投稿した症例報告がアクセプトされました。
以下石川先生よりいただきましたコメントです。

今回Endoscopy E-videoに投稿していた症例報告がアクセプトされましたので御報告させて頂きます。
タイトルは「Retrieval technique for a sheared guidewire remnant in the gallbladder duct using a novel basket catheter」です。
本論文は胆嚢管内で破損したガイドワイヤーを新型バスケットカテーテルで回収するテクニックに関して報告したものです。本症例は稀な事象ではありますが、時折経験する他の異物除去等においても応用出来る手技ではないかと考えています。
継続して報告していけるよう、今後とも精進していきますのでご指導ご鞭撻のほどよろしくお願い致します。

https://eref.thieme.de/ejournals/1438-8812_2024_S01?fromSearch=true&context=search#/10.1055-a-2432-3302

 
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愛媛大学大学院
消化器・内分泌・代謝内科学
(第三内科)
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