› 
論文・学会・研究会の報告
 

論文・学会・研究会の報告

渡辺崇夫先生がまとめた、EKEN studyグループの臨床研究がJournal of Gastroenterologyにアクセプトされました。

以下、渡辺先生からのコメントです。

論文名:Clinical factors to predict changes of esophagogastric varices after sustained viral response with direct-acting antiviral therapy
著者名:Takao Watanabe, Yoshio Tokumoto, Hironori Ochi, Toshie Mashiba, Fujimasa Tada, Atsushi Hiraoka, Yoshiyasu Kisaka, Yoshinori Tanaka, Sen Yagi, Seiji Nakanishi, Kotaro Sunago, Kazuhiko Yamauchi, Makoto Higashino, Kana Hirooka, Masaaki Tange, Atsushi Yukimoto, Makoto Morita, Yuki Okazaki, Masashi Hirooka, Masanori Abe, Yoichi Hiasa

本論文は、愛媛県内で組織するEKEN study Groupの先生方にご協力いただき、C型肝硬変症例のDAA治療後によるSVR達成後の食道胃静脈瘤の変化、また静脈瘤増悪・改善に寄与する因子を明らかし、それらを利用した予測のためのスコアリングを提案したものです。
ご指導いただいた徳本先生、また何より、大変お忙しい中ご協力いただいたEKEN study Groupの先生方に深く感謝申し上げます。EKENの研究として初めて、JGにアクセプトという高評価を受け、本当にうれしいです。今後ともご協力のほど、なにとぞよろしくお願いいたします。

奥嶋優介先生の学位論文がScientific Reportsにアクセプトされました。

以下指導医の渡辺先生からのコメントです。

論文名:PKR associates with 4.1R to promote anchorage-independent growth of hepatocellular carcinoma and lead to poor prognosis

本論文は奥嶋先生の学位論文です。
内容としては、渡辺が継続している肝細胞癌におけるPKRの役割に関するものです。これまでにPKRが肝細胞癌の増殖に寄与することを示してきましたが、詳しい機序としてPKRの直接の下流分子は明らかでありませんでした。今回の論文ではIP-MSを利用してPKRの結合蛋白質として4.1Rを同定し、肝癌進展におけるPKR-4.1R axisの作用機序を明らかにしたものです。
本研究は、分子病態医学の今村健志教授の御指導のもと、准教授の川上良介先生、また今村教授を通して、東京大学医科学研究所の村上善則教授 (現、日本医科大学 先端医学研究所 分子生物学部門)、伊東剛先生、笠井優先生、名古屋市立大学薬学研究科の井上靖道教授にも共同研究としてご協力をいただきました。
上記の先生方、第3内科の技官の皆様、分子病態医学の皆様に深く感謝申し上げます。

内分泌グループの松浦文三先生が、UEG Week 2024に参加し、肥満減量手術がMASLDに与える影響について報告されました。
以下松浦先生よりコメントです。

UEG Week 2024に参加して
松浦文三

2024年10月12-15日に,オーストリアのウィーンで開催されたUEG Week 2024に参加してきました。ウィーンでのUEG Weekは2016年に次いで2回目です。今回の国際学会は12年ぶりに若い先生(沼田先生)と一緒に参加しました。前回若い先生(上田先生)と一緒に参加したのは2012年のSan DiegoでのDDWでした。
これまで代謝改善/減量手術のデータを国内外の学会で発表してきましたが,今回は「Usefulness of laparoscopic sleeve gastrectomy for NAFLD (MASLD)」と題して発表しました。手術前および手術1年後のfibroscanのデータから,CAP(dB/m)値は348から279に改善し,肝硬度(kPa)は12.1から7.6に改善した,という内容です。
ウィーンは日本より気温が5-10℃程度低く寒かったですが,学会の合間にはSchoenbrunn宮殿や市内の音楽家の銅像を見学してきました。
次回は2025年10月4-7日にドイツのベルリンで開催予定です。

肝臓グループ 島本豊伎先生が、日本超音波医学会 四国地方会のBest imaging award部門にて優秀賞を受賞されました。

以下島本先生よりコメントです。

「Micro B-flow imagingにより骨腫瘤性病変内に腫瘍血流を描写し得た肝細胞癌の一例」という演題で発表いたしました。
本症例は肝細胞癌の肋骨転移巣をMicro B-flow imagingを用いて観察し、腫瘍内の微細な血管構造を評価したものです。
肝細胞癌の骨転移は溶骨性であることが多く、エコーによる内部性状の評価が可能である場合があります。
Micro B-flow imagingは特殊な画像処理を行うことで通常のB modeでは検知できない血流由来の信号を増幅して描出する技術で、本症例のような骨病変であっても微細な腫瘍血管を観察することができました。

発表に際しましてご指導を賜りました日浅教授、廣岡先生をはじめ、ご協力いただいた肝癌チームの先生方にこの場を借りて御礼申し上げます。
今回の発表で学んだことを今後の診療にも活かしていきたいと思います。

愛媛県立中央病院の多田藤政先生が第31回日本門脈圧亢進症学会総会において、日本門脈圧亢進症学会田尻賞(和文原著部門)を受賞されました。

以下、多田藤政先生より、受賞にあたってのコメントです。

この度は日本門脈圧亢進症学会田尻賞(和文原著部門)を受賞し、この名誉に謙虚に感謝申し上げます。
令和6年9月26日に高知市で開催された第31回日本門脈圧亢進症学会総会において、本論文が厚い評価を受け、表彰されました。この場を借りて、ご指導いただきました平岡先生、日浅教授、そしてたくさんの症例をご提供いただきました同門の先生方に深く感謝申し上げます。

内容ですが【背景/目的】門脈圧亢進症合併症例の予後改善やサルコペニア進展阻止のため栄養介入をすべき症例の臨床像は未だ明らかではない.そこで,栄養介入を開始すべき臨床像を明らかとすることを目的に検討を行いました.【対象/方法】2021年12月までに当院で診断した初発肝癌患者408例.肝予備能評価にはmALBIを用い, 門脈圧亢進症 (PHT)は食道胃静脈瘤 F2以上/治療歴ありと定義しました. BTR 4.4以下をアミノ酸インバランス(AAI)と定義して後方視的に生命予後を解析しました.【結果】多変量解析で75歳以上, mALBI 2b以下, 筋肉量低下(MVL), PHTが予後因子でした. AAIを予測するALBIは-2.586 (AUC 0.789)でした【結語】PHTがあれば,Child-Pugh AでもmALBI gradeが1から2aに悪化する時期にAAIがすでに起こりはじめており, MVLへの進展を防ぐために栄養介入を積極的に行うべきである.

多くの先生方からの評価を受け、このような栄誉に輝くことは大変光栄であります。今後も、Clinical Questionに対する一助となるよう努めて参りますので、引き続きご指導を賜りますようお願い申し上げます。今後ともよろしくお願いいたします。

第24回日本内分泌学会四国支部学術集会において、総合健康センター 古川慎哉教授が会長を務められ、盛会に終了いたしました。以下、古川先生よりいただきましたコメントです。

第24回日本内分泌学会 四国支部学術集会を終えて
愛媛大学 総合健康センター 教授
古川慎哉

2024年9月6日土曜日に愛媛大学医学部40周年記念講堂において,第24回日本内分泌学会四国支部学術集会の会長を務めさせていただきました。今回の学会では,例年にも増して26題の一般演題をご登録いただきました。特に教室員及び同門会員の先生方からは,多くの演題登録をいただき,ありがとうございました。特別講演では,公衆衛生学講座時代にご指導いただいた現順天堂大学公衆衛生学講座の谷川武先生に「睡眠時無呼吸症候群とスクリーニングの意義~安全と健康に資する睡眠面からの取り組み」をご講演いただきました。また,教育講演では東北支部長で東北大学の菅原明先生(写真1)に「災害時の内分泌・代謝疾患~東日本大震災時の東北大学の取組み」を,JES We Can企画の講演では2024年4月に関東支部から香川大学の教授に来られた岩部(岡田)美紀先生(写真2)に「多角的アプローチ・異分野融合方研究による内分泌代謝学の魅力」を,ランチョンセミナーでは北里大学の宮塚健先生に「糖尿病治療の変遷と展望-GIP/GLP1 dual agonistが拓く可能性」を,ご講演いただきました。
今年の学会賞(優秀演題賞)は,和田あゆみ先生(徳島赤十字病院 糖尿病・内分泌内科)が「診断・薬物(ジアゾキシド)治療・手術までの血糖変動をisCGMで確認しえたインスリノーマの1例」で,小林俊博先生(香川大学 内分泌代謝内科)が「高齢2型糖尿病患者における骨格筋量と身体動作に関する検討」で,受賞されました(写真3)。
学会運営には不慣れな面も多々ありましたが,無事終了して安堵しております。多くのご協力をいただきました先生方およびスタッフの皆さんに感謝申し上げます。

写真1

写真2

写真3

潰瘍性大腸炎の粘膜治癒と夜間頻尿の関連についての論文がNeurourology and Urodynamics(IF 1.8)にアクセプトされました!

以下,first author Sからのコメントです.

愛媛県立中央病院 消化器内科と愛媛大学総合健康センターの古川慎哉教授が共同で投稿しておりました,潰瘍性大腸炎の粘膜治癒と夜間頻尿の関連についての論文がNeurourology and Urodynamics (IF 1.8) にアクセプトされました.

以前からIBD診療をしている先生の間で潰瘍性大腸炎の患者は夜中にトイレ(排尿)に行くことが多い気がする…という都市伝説のようなものがありました.

夜間頻尿はQOLに影響を与えるため,患者にとって重要な症状となります.骨盤内臓器クロストークを介して,腸疾患と下部尿路症候群,子宮疾患には密接な関係があることが報告されていますが,潰瘍性大腸炎患者における夜間頻尿の検討はほとんどありません.今回,潰瘍性大腸炎患者における疾患活動性と夜間頻尿の関連を明らかにすることを目的としました.2015年から2019年の間に愛媛大学および愛媛県内の関連病院を受診したUC患者(N=287)を対象に夜間頻尿と粘膜治癒および臨床的寛解の有病率との関連について多変量ロジスティック回帰分析を用いて評価を行いました.結果として夜間頻尿2回以上は,粘膜治癒と独立して逆相関していました (調整オッズ比[OR]: 0.31,95%信頼区間[CI]: 0.13-0.73).非高齢者(70歳未満)および臨床的寛解の患者においても,夜間頻尿2回以上と粘膜治癒は逆相関していました (非高齢者: 調整オッズ比: 0.27,95%CI: 0.09-0.72、CRのみ: 調整オッズ比: 0.34,95%CI: 0.12-0.90).結論として日本人の潰瘍性大腸炎患者では,夜間頻尿は粘膜治癒と独立して逆相関していました.

本研究はIBD診療に携わる愛媛大学および県内関連病院の先生方や愛媛大学総合健康センタースタッフのご協力によって行うことができました.深い感謝を申し上げます.

Neurourol Urodyn. 2024 Aug 22. doi: 10.1002/nau.25570. Online ahead of print.

肝臓グループの島本豊伎先生が前任の松山赤十字病院で経験した症例報告2篇がこの度アクセプトされました。
以下島本先生よりコメントです。

前任地の松山赤十字病院在籍中から執筆していた症例報告2篇がこの度アクセプトされましたのでご報告させていただきます。

“腫瘍破裂を契機に診断され、術後腹膜播種再発した混合型肝癌の一例” 
混合型肝癌は単一腫瘍内に肝細胞癌と肝内胆管癌の両成分が混在している腫瘍です。肝細胞癌では腫瘍径の大きな病変や肝外に突出する形態の病変、増大速度が速い病変などで腫瘍破裂を起こすことがありますが、混合型肝癌の破裂例は非常に稀です。本症例は胆管癌成分主体の混合型肝癌で、乏血性腫瘍であるにも関わらず腫瘍破裂を起こした点でも非典型的な症例で、血管塞栓による止血後に外科的切除を行いました。術後12か月で肝内に再発が疑われ、単発病変であったため外科的切除を行うと肝内再発ではなく腹膜播種巣の肝癒着であることが判明しました。混合型肝癌においては治療方針について明確な指針が存在せず、症例毎に検討する必要があります。腫瘍破裂後の症例では腹膜播種の可能性も念頭に置いて画像評価や方針決定を行うことが重要と考えられました。

“GLUT-1-negative choroidal malignant melanoma with liver metastasis recurrence 12 years after surgery without FDG accumulation in the recurrent lesion on FDG-PET/CT: A case report”
眼原発悪性黒色腫は悪性黒色腫全体の約1%と非常に稀な疾患です。本症例は脈絡膜原発悪性黒色腫に対して眼球摘出術後の症例で、年1回腹部エコーで再発のスクリーニングを行っていましたが術後12年目に肝腫瘤を指摘されました。転移再発を疑い、FDG-PET/CTを撮影しましたが肝病変にFDG集積が見られませんでした。単発病変であったため診断的治療として肝切除を行い、悪性黒色腫肝転移と確定診断しました。FDG-PET/CTは腫瘍細胞内へFDG(Fluorodeoxyglucose)が取り込まれ、集積することを利用して画像評価を行っていますが、FDG取り込みに関与する膜蛋白がGLUT(glucose transporter)です。中でもGLUT-1が重要な役割を果たしており、GLUT-1発現の程度が予後にも関与することが先行研究で示されています。本症例で免疫染色を行うと原発巣、転移巣ともにGLUT-1陰性であり、FDG集積が見られなかった原因と考えられました。腫瘍増大やFDG集積とGLUT-1発現との関連性に着目して考察しています。

論文執筆にあたりご指導いただいた横田先生、越智先生をはじめ、ご協力いただいた松山赤十字病院の先生方にこの場を借りて御礼申し上げます。大学院での研究はまだまだこれからですが、臨床についても常にアンテナを張って学会発表や論文執筆につながるような診療をしていきたいと思います。

Accept後、まだPDF化されていない状況ではございますが、報告させていただきます。
島本先生、貴重な報告をありがとうございました。おめでとうございます。 HP担当

第90回愛媛大学ヘルスアカデミー/日本内分泌学会四国支部市民講座が,「肥満とやせと健康と」のテーマで,令和6年6月30日(日) 13時から,いよてつ高島屋9階ローズホールにおいて,愛媛大学 地域生活習慣病・内分泌学講座の松浦文三教授の世話人のもと,開催されました。
松浦先生より以下のコメントをいただきました。

70名以上の参加を得て,5題の講演とともに,多数のQ & Aで,盛会裏に終了しました。市民の皆様の「肥満とやせ」に対する関心の高さが感じられました。
第1部の講演の部では,まず愛媛大学内科の中口博允先生から,「肥満とやせの健康障害」について,肥満もやせも万病のもとであることを多くのデータをもとに講演いただいた。愛媛大学栄養部の竹島美香先生からは,「肥満とやせの食事療法」について,規則正しく適切な量をバランスよく食べることの重要性を講演いただいた。松山市民病院リハビリ科の中田亮輔先生からは,肥満もやせも筋量・筋力を維持することの重要性,日常生活の中で活動量,筋肉運動を増やすコツについて講演いただいた。松山市民病院内科の仙波英徳先生からは,最近使用可能となったウゴービとアライを中心に,保険診療として処方される薬と薬局で自費購入の薬,糖尿病のある患者のみで使用できる薬と糖尿病のない患者でも使用できる薬,作用機序や効果の強さの違い,注意すべき副作用,などについて講演いただいた。愛媛大学外科の吉田素平先生からは,肥満の外科治療の適応となる患者,手術術式,術後の合併症,などについて講演いただいた。
第2部のQ & Aコーナーでは,会場からの多くの質問をいただいた。「個人にとっての適正体重とは」「二次性肥満ややせについて」「食事摂取量が少ない場合の工夫点」「栄養補助食品の使い方」「〇〇ダイエットの落とし穴」「運動は持久運動が良いのか筋トレが良いのか」「事務仕事中でもできる運動」「ウゴービが使用できる条件」「減量/代謝改善手術が可能な施設」「術後のリバウンド」などについて,講演いただいた先生方に答えていただいた。
今後も機会を作って,市民講座を企画したいと思います。

内分泌グループの三宅映己先生が愛媛大学大学院医学系研究科長優秀論文賞を受賞されました。
以下、受賞に際して三宅先生よりコメントです。

この度、愛媛大学大学院医学系研究科長優秀論文賞を受賞させて頂きました。
論文名は「Glycemic Control Is Associated with Histological Findings of Nonalcoholic Fatty Liver Disease」です。血糖値とNAFLD(現在はMASLDです)の組織学的な関係を解析し、血糖コントロール状況はNAFLDの増悪と関連しており、血糖コントロールの軽度の悪化(6.5%~7.4%)であってもNAFLDの進行に寄与するすることを報告しました。同門会を中心とした多くの先生方からご紹介頂きました一つ一つの貴重な症例の積み重ねが、今回の受賞につながったと思います。ありがとうございました。引き続き、糖尿病とNAFLDの興味深い関係に注目し研究を進めたいと思います。

(Diabetes Metab J. 2024;48:440-448.)

 
  • 研修会・講演会
  • 臨床研究
  • 外来のご案内
  • 黄蘭会
愛媛大学大学院
消化器・内分泌・代謝内科学
(第三内科)
Department of Gastroenterology and Metabology, Ehime University Graduate School of Medicine
〒791-0295 愛媛県東温市志津川454
愛媛大学医学部本館8F
TEL 089-960-5308
FAX 089-960-5310
mail : 3naika@m.ehime-u.ac.jp